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魔物と魔女編
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結論から言うと毛むくじゃらの人が、この領内のギルドマスターらしい。浄化薬が足りないから急ぎで作れないか直接交渉の為に、周囲が止めるのも聞かずに医務室に突撃してきたみたい。理由は分かったけど……その姿とパワーは何?ミューは驚いてフードの中に隠れちゃったわ。
「ルナ嬢、彼はこの国では珍しい獣人なんだ」
「獣人?……初めて会いました」
「そうか!まぁ、怪しい者じゃないから安心してくれ」
声が大きい事と体毛が濃い以外は普通の人で、人間との違いがよく分からない。それに薬を作るにしても材料が手元にないし……
「薬を作るにしても材料が今はないですし、師匠の許可を得てからでないと勝手に引き受ける訳にはいかないです」
「師匠の許可なら俺が取って来る!そいつは何処だ」
「ここだよ。五月蝿いよワグナー」
「あ?……ババァ!?何でここにいる!」
医務室のドアから顔を出したソフィア様は、顔をしかめて片手で耳を塞ぐ仕草をしていた。ギルドマスターを追い払う様に手を振ると私の隣に移動して肩に手を回した。
「私がこの子の師匠だよ。戻りが遅いのと変な騎士が来たから様子を見に来たんだ」
「はぁ……ババァが弟子を取るなんて何年振りだよ」
「そんな事より浄化薬を追加で作るなら材料はそっちで準備しな」
「それだけで良いのか?」
「あぁ、材料が準備出来次第ルナが作る」
えー、また痛い思いしないといけないんですか?そう心で思いながら二人の会話を聞いていたら、ギルドマスターはニターと悪どい笑みを浮かべた。
「今からでも問題ないか?」
「そりゃ問題ないさ。でも乙女の涙はどうすんだい?」
「そっちは当てがあるから安心してくれ」
材料と提供をあっさり了承したギルドマスターは、服の中から小さな通信機を出すと目の前で連絡し始めた。
「おう!俺だ。薬の目処がたったぞ。出来るだけ多くの材料を準備してくれ。それとナナも連れて来てくれ……準備が終わったら連絡頼む」
言いたい事だけ言ったギルドマスターは、通信機を切ると今度は私に向かって手を出した。
「俺はワグナー宜しく!」
「は、はい!ルナです。宜しくお願いします」
差し出された手を握って挨拶すると、少し目を見開いた後、ニカッと白い歯を見せて笑った。なんか一々、動きが大きいというか……オーバーリアクション?
「リュカ、さっき変な騎士がノリスの所に来たけど何があった」
「あぁ、ノリス支部長の指示で食事を持って来たとか言ってたが、甲冑を着込んだ姿で帯刀までしておかしかったな」
「彼は誰か指示で食事を持って来たって言ったのかい?」
私がギルドマスターの迫力に圧されている間に、後ろでは先程の騎士様の話に変わっていた。騎士様はノリス支部長の指示って言ったけど、本人は知らなくて部屋まで報告に来た騎士様と話が噛み合わなかったらしい。勿論、そんな指示は出していないから誰から聞いたか確認しようとすると……
『……あ……え……わ……分かりません。確かに誰かに言われたはずなんですが……顔も声も思い出せません』
そう言って騎士様自身が狼狽えてしまったらしい。其は龍人の噂を聞いた人達と同じ状態だったから、魔法を使って真偽も確かめる事に決まって例の騎士様は窓のない鍵の掛かる部屋に入っているようだ。
「全く次から次かに厄介ったらありゃしないね」
ソフィア様も想定外なのか頭を描いて大きなため息を吐き出していた時、ギルドマスターの通信機に薬の材料が全て揃った連絡が入った。
「ババァ、今からギルドまで来てくれ」
「そんなに急ぐのかい?」
今からと聞いて驚いた私達だったけど、ギルドマスターは真剣そのもの。怖いくらい鋭い視線は恐怖と緊張感を漂わせた。
「ギルドの在庫も明日で尽きちまう。異常事態だ」
「仕方ないね。え~とハヤトだったかノリスに連絡しといておくれ」
「はい」
ハヤト室長の返事を聞くと、ここに着いて二時間もしないうちに移動になった。ギルドはここから近くて徒歩でも行けるらしい。四人で歩いて行く事で話が纏まると、ギルドマスターに引き摺られていた騎士様が安堵の表情を浮かべていた。
「もう、マスター!私達まで巻き込まないでよ!」
ララさんが引き摺られた事に対して、腰に手をあて頬を膨らませながらかなり怒っている。薬の製作者が部外者だからと姉弟と騎士様で止めようもしていたとか。結局、獣人のパワーに負けて引き摺られてしまったけどね。
「悪りぃ悪りぃ。緊急だったんでツイな。今度、差し入れ持ってくるから勘弁してくれ」
「やった!私、ルールのケーキが良いわ」
「姉さん、駄目ですよ。それ朝から並ばないと買えないヤツでしょう」
ラークさんが呆れた顔でララさんを諌めると、ハヤト室長とマスターに在庫の少ない薬草を納入する話を纏めている。そんな姉弟のやり取りを見ていると、急に兄に会いたくなった。お兄様元気かしら……卒業後に一緒に食事しただけだから、ゆっくり話していないわね。
「ルナ嬢、大丈夫か?ボンヤリしているぞ」
「あ、はい……ちょっと考え事をしていました」
「そうか」
リュカ様はそれ以上、深く尋ねる事はなく、ギルドマスター達の話が終わると四人でギルドで薬を作る為に移動した。
「ルナ嬢、彼はこの国では珍しい獣人なんだ」
「獣人?……初めて会いました」
「そうか!まぁ、怪しい者じゃないから安心してくれ」
声が大きい事と体毛が濃い以外は普通の人で、人間との違いがよく分からない。それに薬を作るにしても材料が手元にないし……
「薬を作るにしても材料が今はないですし、師匠の許可を得てからでないと勝手に引き受ける訳にはいかないです」
「師匠の許可なら俺が取って来る!そいつは何処だ」
「ここだよ。五月蝿いよワグナー」
「あ?……ババァ!?何でここにいる!」
医務室のドアから顔を出したソフィア様は、顔をしかめて片手で耳を塞ぐ仕草をしていた。ギルドマスターを追い払う様に手を振ると私の隣に移動して肩に手を回した。
「私がこの子の師匠だよ。戻りが遅いのと変な騎士が来たから様子を見に来たんだ」
「はぁ……ババァが弟子を取るなんて何年振りだよ」
「そんな事より浄化薬を追加で作るなら材料はそっちで準備しな」
「それだけで良いのか?」
「あぁ、材料が準備出来次第ルナが作る」
えー、また痛い思いしないといけないんですか?そう心で思いながら二人の会話を聞いていたら、ギルドマスターはニターと悪どい笑みを浮かべた。
「今からでも問題ないか?」
「そりゃ問題ないさ。でも乙女の涙はどうすんだい?」
「そっちは当てがあるから安心してくれ」
材料と提供をあっさり了承したギルドマスターは、服の中から小さな通信機を出すと目の前で連絡し始めた。
「おう!俺だ。薬の目処がたったぞ。出来るだけ多くの材料を準備してくれ。それとナナも連れて来てくれ……準備が終わったら連絡頼む」
言いたい事だけ言ったギルドマスターは、通信機を切ると今度は私に向かって手を出した。
「俺はワグナー宜しく!」
「は、はい!ルナです。宜しくお願いします」
差し出された手を握って挨拶すると、少し目を見開いた後、ニカッと白い歯を見せて笑った。なんか一々、動きが大きいというか……オーバーリアクション?
「リュカ、さっき変な騎士がノリスの所に来たけど何があった」
「あぁ、ノリス支部長の指示で食事を持って来たとか言ってたが、甲冑を着込んだ姿で帯刀までしておかしかったな」
「彼は誰か指示で食事を持って来たって言ったのかい?」
私がギルドマスターの迫力に圧されている間に、後ろでは先程の騎士様の話に変わっていた。騎士様はノリス支部長の指示って言ったけど、本人は知らなくて部屋まで報告に来た騎士様と話が噛み合わなかったらしい。勿論、そんな指示は出していないから誰から聞いたか確認しようとすると……
『……あ……え……わ……分かりません。確かに誰かに言われたはずなんですが……顔も声も思い出せません』
そう言って騎士様自身が狼狽えてしまったらしい。其は龍人の噂を聞いた人達と同じ状態だったから、魔法を使って真偽も確かめる事に決まって例の騎士様は窓のない鍵の掛かる部屋に入っているようだ。
「全く次から次かに厄介ったらありゃしないね」
ソフィア様も想定外なのか頭を描いて大きなため息を吐き出していた時、ギルドマスターの通信機に薬の材料が全て揃った連絡が入った。
「ババァ、今からギルドまで来てくれ」
「そんなに急ぐのかい?」
今からと聞いて驚いた私達だったけど、ギルドマスターは真剣そのもの。怖いくらい鋭い視線は恐怖と緊張感を漂わせた。
「ギルドの在庫も明日で尽きちまう。異常事態だ」
「仕方ないね。え~とハヤトだったかノリスに連絡しといておくれ」
「はい」
ハヤト室長の返事を聞くと、ここに着いて二時間もしないうちに移動になった。ギルドはここから近くて徒歩でも行けるらしい。四人で歩いて行く事で話が纏まると、ギルドマスターに引き摺られていた騎士様が安堵の表情を浮かべていた。
「もう、マスター!私達まで巻き込まないでよ!」
ララさんが引き摺られた事に対して、腰に手をあて頬を膨らませながらかなり怒っている。薬の製作者が部外者だからと姉弟と騎士様で止めようもしていたとか。結局、獣人のパワーに負けて引き摺られてしまったけどね。
「悪りぃ悪りぃ。緊急だったんでツイな。今度、差し入れ持ってくるから勘弁してくれ」
「やった!私、ルールのケーキが良いわ」
「姉さん、駄目ですよ。それ朝から並ばないと買えないヤツでしょう」
ラークさんが呆れた顔でララさんを諌めると、ハヤト室長とマスターに在庫の少ない薬草を納入する話を纏めている。そんな姉弟のやり取りを見ていると、急に兄に会いたくなった。お兄様元気かしら……卒業後に一緒に食事しただけだから、ゆっくり話していないわね。
「ルナ嬢、大丈夫か?ボンヤリしているぞ」
「あ、はい……ちょっと考え事をしていました」
「そうか」
リュカ様はそれ以上、深く尋ねる事はなく、ギルドマスター達の話が終わると四人でギルドで薬を作る為に移動した。
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