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魔物と魔女編
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「二人の事は後で注意するとして子供の方だが、怯えていて話が出来る状態じゃないんだ」
頭を掻きながら深いため息を吐いたノリス支部長は、三人が新しい部屋で休む子供に会いに行くとベッドの上で震えていたらしい。何とか名前は聞けたけど、大人が怖いのか誰も近づけずハヤト室長も途方にくれていたとか。女性なら大丈夫かと考えたけど、どうやら体格の良い大人は男女関係ない様子だったらしい。
「来て早々に申し訳ないが、弟子殿が子供から話を聞いて貰えないだろうか?」
「私ですか?素人ですが大丈夫ですか?」
「いや、逆に素人の方が警戒しないだろう。歳も近いし頼む」
そこまで言われると断る事も出来ず、子供の所に向かう事にしたけど、一緒に向かっているリュカ様は真後ろに貼り付く様についてきた。子供が居る病室の前に着いても離れようとしない彼に戸惑ってしまう。もう少し離れて欲しいのに、どうしようかしら。
「子供が怯えるから部屋の外に居て下さいね」
「……善処する」
いや、そこは"はい"でしょう!もう、さっきから態度が変だしなんだろう?
少し考えたけど、思い当たる物はなくて素直に聞く事にした。
「何か気になる事でもあったのですか?」
「ハヤト室長が影響されていたのに、あの姉弟も影響されていないとは不自然だと思って」
「あ……あれ?確かに変ですね」
リュカ様に言われるまで気づかなかった私は驚いて次の言葉が出ず彼の顔を黙って見詰めていた。
「すれ違っただけだが護符を持っているようにも耐性があるようにも見えなかった。俺の心配し過ぎと言われるかもしれないが……」
困ったように眉を下げるリュカ様を、ミューが尻尾で叩きながら"私もいるのに"と文句を言っている。それでも過保護なリュカ様の態度に自然と笑みが浮かんだ。
「フフ、ありがとうございます。私は鈍いのでし過ぎ位が丁度良いのかもしれませんね」
「すまない。鬱陶しい時はハッキリ言ってくれて構わないから」
「はい、そうします」
私が了承するとリュカ様はホッとした表情を見せた。彼との話しも済んで改めて病室のドアに視線を向けるとノックしてから静かに開けた。
「こんにちは」
「……」
挨拶する私に視線を向けたけど、後ろにいるリュカ様が気になるのか視線は彼に釘付けになる。返事はなかったけど起きているから部屋に入ると、少年は大きな目を更に大きくしている。どうしたんだろう?部屋に入るだけでも怖いのかしら。
「はじめまして。私はルナ、この子は相棒のミューよ」
「こんにちは~」
私の肩から降りて少年降りてベッドに乗ったミューは、甘える様に彼の体に頭を擦り付けた。
「ごめんね、うちの子甘えん坊なの。嫌じゃなかったら背中撫でてくれる?」
「……」
やっぱり返事はないけど震える手でミューの背中をゆっくりと撫でていた。
「怪我してるから少しずつ治していきたいのだけど触ってもいいかな?」
触ると聞いて体を大きく揺らした子供だったけど、暫く沈黙した後で小さく頷いた。
「一番、痛い処はどこ?」
「せ、せなか」
初めて聞いた声は酷く掠れていて、子供らしい声とは言えない。もしかして、喉も痛めているから話しづらいから質問にも答えなかったのかも。ミューも気になったのか子供の喉を舌で舐めたので擽ったそうに身動ぎしている。
「少しだけ背中に触るね」
一言、声を掛けてから背中に手を回すと、子供は大きく体を揺らした。怖いよね。背中にある傷は……鞭で打たれたのね。
「回復」
先ずは治っていない表面の傷を治す事に集中する。きっと全回復したら傷跡も消えるけど、子供のボロボロの身体は魔法の強制的な回復に耐えられない。少しでも早く痛みなく回復するようにと願いを込めて背中に魔法を掛けてからそっと離れて直ぐには手の届かない距離に移動した。
「はい、今日の治療はお仕舞い。明日は喉も治すから、しっかりご飯食べて寝てね」
やはり話すのは辛いのか黙って頷いた子供に笑顔で私も頷いた時、リュカ様が外に向けて何か話している声が聞こえて視線を向けると騎士様が来ていた。
「いや、渡すのは彼女に任せて戻ってくれないか。ノリス支部長には私から伝えるから問題ない」
騎士様と会話するリュカ様は、普段の優しく響く声からは想像出来ない程、平坦で冷たい印象の声で別人の様に見えた。どうしたんだろう。揉めてるのかしら?
「しかし、私は仕事で」
「ノリス支部長から話を聞いていないか?この少年は体格の大きな大人に怯える。貴殿の様に装備まで着けた騎士が入ればパニックになるぞ」
「だからと言って暴れる可能性があるにも関わらず防御の為の鎧もなく行けというのか!」
「何か問題でもあるか?私は剣のみだ。相手は幼い子供で保護対象者だぞ」
リュカ様の正論な言葉に口をパクパクとしていた騎士様が口を閉じ彼を憎しみを込めて睨む。
「この化け物が」
「そりゃ、どうも」
リュカ様にそんな視線や暴言も気にした様子はなく一言で終わらせて嫌な空気になった。
リュカ様って……何時もはこんな感じなの?
頭を掻きながら深いため息を吐いたノリス支部長は、三人が新しい部屋で休む子供に会いに行くとベッドの上で震えていたらしい。何とか名前は聞けたけど、大人が怖いのか誰も近づけずハヤト室長も途方にくれていたとか。女性なら大丈夫かと考えたけど、どうやら体格の良い大人は男女関係ない様子だったらしい。
「来て早々に申し訳ないが、弟子殿が子供から話を聞いて貰えないだろうか?」
「私ですか?素人ですが大丈夫ですか?」
「いや、逆に素人の方が警戒しないだろう。歳も近いし頼む」
そこまで言われると断る事も出来ず、子供の所に向かう事にしたけど、一緒に向かっているリュカ様は真後ろに貼り付く様についてきた。子供が居る病室の前に着いても離れようとしない彼に戸惑ってしまう。もう少し離れて欲しいのに、どうしようかしら。
「子供が怯えるから部屋の外に居て下さいね」
「……善処する」
いや、そこは"はい"でしょう!もう、さっきから態度が変だしなんだろう?
少し考えたけど、思い当たる物はなくて素直に聞く事にした。
「何か気になる事でもあったのですか?」
「ハヤト室長が影響されていたのに、あの姉弟も影響されていないとは不自然だと思って」
「あ……あれ?確かに変ですね」
リュカ様に言われるまで気づかなかった私は驚いて次の言葉が出ず彼の顔を黙って見詰めていた。
「すれ違っただけだが護符を持っているようにも耐性があるようにも見えなかった。俺の心配し過ぎと言われるかもしれないが……」
困ったように眉を下げるリュカ様を、ミューが尻尾で叩きながら"私もいるのに"と文句を言っている。それでも過保護なリュカ様の態度に自然と笑みが浮かんだ。
「フフ、ありがとうございます。私は鈍いのでし過ぎ位が丁度良いのかもしれませんね」
「すまない。鬱陶しい時はハッキリ言ってくれて構わないから」
「はい、そうします」
私が了承するとリュカ様はホッとした表情を見せた。彼との話しも済んで改めて病室のドアに視線を向けるとノックしてから静かに開けた。
「こんにちは」
「……」
挨拶する私に視線を向けたけど、後ろにいるリュカ様が気になるのか視線は彼に釘付けになる。返事はなかったけど起きているから部屋に入ると、少年は大きな目を更に大きくしている。どうしたんだろう?部屋に入るだけでも怖いのかしら。
「はじめまして。私はルナ、この子は相棒のミューよ」
「こんにちは~」
私の肩から降りて少年降りてベッドに乗ったミューは、甘える様に彼の体に頭を擦り付けた。
「ごめんね、うちの子甘えん坊なの。嫌じゃなかったら背中撫でてくれる?」
「……」
やっぱり返事はないけど震える手でミューの背中をゆっくりと撫でていた。
「怪我してるから少しずつ治していきたいのだけど触ってもいいかな?」
触ると聞いて体を大きく揺らした子供だったけど、暫く沈黙した後で小さく頷いた。
「一番、痛い処はどこ?」
「せ、せなか」
初めて聞いた声は酷く掠れていて、子供らしい声とは言えない。もしかして、喉も痛めているから話しづらいから質問にも答えなかったのかも。ミューも気になったのか子供の喉を舌で舐めたので擽ったそうに身動ぎしている。
「少しだけ背中に触るね」
一言、声を掛けてから背中に手を回すと、子供は大きく体を揺らした。怖いよね。背中にある傷は……鞭で打たれたのね。
「回復」
先ずは治っていない表面の傷を治す事に集中する。きっと全回復したら傷跡も消えるけど、子供のボロボロの身体は魔法の強制的な回復に耐えられない。少しでも早く痛みなく回復するようにと願いを込めて背中に魔法を掛けてからそっと離れて直ぐには手の届かない距離に移動した。
「はい、今日の治療はお仕舞い。明日は喉も治すから、しっかりご飯食べて寝てね」
やはり話すのは辛いのか黙って頷いた子供に笑顔で私も頷いた時、リュカ様が外に向けて何か話している声が聞こえて視線を向けると騎士様が来ていた。
「いや、渡すのは彼女に任せて戻ってくれないか。ノリス支部長には私から伝えるから問題ない」
騎士様と会話するリュカ様は、普段の優しく響く声からは想像出来ない程、平坦で冷たい印象の声で別人の様に見えた。どうしたんだろう。揉めてるのかしら?
「しかし、私は仕事で」
「ノリス支部長から話を聞いていないか?この少年は体格の大きな大人に怯える。貴殿の様に装備まで着けた騎士が入ればパニックになるぞ」
「だからと言って暴れる可能性があるにも関わらず防御の為の鎧もなく行けというのか!」
「何か問題でもあるか?私は剣のみだ。相手は幼い子供で保護対象者だぞ」
リュカ様の正論な言葉に口をパクパクとしていた騎士様が口を閉じ彼を憎しみを込めて睨む。
「この化け物が」
「そりゃ、どうも」
リュカ様にそんな視線や暴言も気にした様子はなく一言で終わらせて嫌な空気になった。
リュカ様って……何時もはこんな感じなの?
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