婚約破棄されたポンコツ魔法使い令嬢は今日も元気です！

シマ

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学園復帰編

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　訓練場に入ると騎士様だけでなく魔法師団のローブを纏った魔法使い様も集まっていて、彼らの視線が一斉に集まり思わず身動ぎするとその視線を遮る様にリュカ様とアラン先生が立った。

「ルナ嬢、大丈夫か？」

「ニールセンさん、不躾な馬鹿は視界にいれなくて結構ですよ」

　アラン先生が黒い笑顔で周囲を牽制している中、ソフィア様が集合場所の目の前に立った。何も言わなくても全員の視線がソフィア様に集中する。全員の視線が自分に向いた事を確認したソフィア様は一つ頷き一歩前に出た。

「名乗らなくとも私が誰か分かるだろう。団長達が事前に説明した通り今回の訓練は手加減無しだ。回復魔法の使い手も待機している。全力で来るが良い」

「「「はい！」」」

　気合いの入った返事を聞いて、また頷いたソフィア様が私に向かって手招きする。訓練する事以外、何も聞かされていない私は素直にソフィア様の横に並んだ。

「今回の訓練で合格した者は護衛として私と一緒に就いて貰う。この子が護衛対象の新しい弟子のルナと契約者のミューだ」

へ？私も護衛対象に含まれてませんか？ミューの護衛するって言ってましたよね!?どういう事ですかソフィア様!!
　驚いてソフィア様に視線を向けると口角を上げて肩を叩いただけだった。

「ルナ、結界を貼って建物を強化しておくれ」

「はい」

　何食わぬ顔で結界を頼むソフィア様は、何故か楽しそうに笑っている。学園の校舎一つ入りそうな大きな訓練場の中に結界を貼ると、ざわめきが広がった。うーん、強度に問題なさそう？ソフィア様が何処までやるのかなぁ。

「ゲイリー・カーペンター、ハンス・ヤーマン、ダーシー・コーエン、マーク・ディール前へ」

「「「は、はい」」」

　結界の確認をしていた私の耳に届いたのはカイト団長の声。カイト団長に視線を向けると名前を呼ばれた四人が青ざめた表情で前に出て来た。

「フリューゲル、彼らは剣無しのお前なら勝てる自信があるようだ」

「はぁ」

　状況の分からないリュカ様が気の抜けた返事をする中、カイト団長から剣無しだから手加減無しで相手をするようにと言われて戸惑っていた。

「いや、団長それでは彼らが怪我を」

「怪我ならルナ嬢が治療するから問題ない」

　手加減無しでする事を躊躇う様子のリュカ様の姿を見て、カイト団長が耳元で何か話した。その後、リュカ様の表情から戸惑いが消えて真剣な眼差しになりしっかりと頷き了承した。

「分かりました。相手は剣を使用して構いません。合図をお願い致します」

　リュカ様が剣の使用を認めた瞬間、四人はムッとした表情を隠しもしなかった。その姿をソフィア様とケビン団長が見て小さく首を横に振る。おそらく冷静さに欠ける彼らは護衛に向かないと判断したのかもしれない。
　カイト団長が四人以外は端で待機の指示を出してから、その場を離れると訓練場の中央にはリュカ様を含めた五人だけになり訓練場が静けさに包まれた。

「始め！」

　カイト団長の声が響いた瞬間、最初に動いたのは楽勝だと豪語していたカーペンターさん。一気に駆け抜けリュカ様の横に回ると、手に持っていた剣を横に振った様に見えたけど気がついたら彼は地面にうつ伏せに倒れていた。は？何が起きたの？

「う……」

　呻き声に気付いた誰かが二人でカーペンターさんをリュカ様の側から離すと、ソフィア様から彼の回復を頼まれた。

「回復魔法の練習に丁度良いだろう？ルナの訓練は回数をこなしてスピードを上げる事」

「はい」

　ミューと一緒に怪我人の治療をしていると、私の後ろでドサッと重たい者が落ちる音がして振り返るとコーエンさんが倒れていた。え？いや、本当に何をしているの？私にはサッパリ分からないわ。

「手が止まっとる！負傷者の回復は遅れたら命とりだよ！」

「はい！」

　ソフィア様から注意されて視線を怪我人に戻すと、怪我の程度を確認して回復魔法を使う。軽度の打撲と骨折を治すと目を覚ましたのか瞼が動いた。この人は大丈夫そうだと判断して次の人の治療に移ろうと振り向くと、二人が気絶して並んでいた。えぇ!!さっきは一人だったよね……リュカ様が手加減しないと回りが持たないのね。

「さて、魔法師団はアラン頼んだよ」

「はぁ……面倒なので纏めて来て貰えますか？」

　頭を掻きながらため息を吐き出すアラン先生は、団員に視線を向けると顔を横に振り肩を竦めてみせた。

「久しぶりだろうに良いのかい？」

「自惚れた小者との対戦なんて、さっさと終わらせましょう」

　ソフィア様が笑顔でアラン先生に再確認すると、改めて団員に視線を向けた後で鼻で笑っていた。

あ、アラン先生？自惚れた小者って城付きの魔法師団の団員ですよ。実力者しか入団出来ないはずで……

　学園では穏やかで面倒見の良い印象の強いアラン先生だったけど、本性は毒舌で若干、腹黒だったらしい。口を開けて驚く私を気にも止めず、笑顔のままで複数の団員を地面から伸びた蔦で拘束した。

「ルナ！また、手が止まっとる」

「ご、ごめんなさい！」

「まぁ、アランのアレは驚くだろうがねぇ」

　そう言ってアラン先生に視線を向けたソフィア様は、苦笑いしながらも止める気はないみたい。アラン先生に拘束された団員の一人が蔦を炎で焼こうとしたけど、腕ごと蔦の葉に包まれてジューとをたてながら炎はあっさり消されてしまった。

「馬鹿ですか？弱点への対策だってしていると分かりませんかね」

アラン先生……怖い

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