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学園復帰編
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リュカ様は寝たり目を覚ましたりを繰り返しているけど、魔女と遭遇した二日後から学園は再開され私も卒業の為の試験を受けていた。
リュカ様が心配で試験の再開を躊躇っていた私に、ソフィア様は試験を受けないと彼が気にするから試験に集中しなさいと言い、付き添いはソフィア様とケビン団長が交代ですることになった。今日はソフィア様が家に残っていて、今朝も起きている時間が増えているから心配ないと笑顔で私を送り出してくれた。
そして、今日は最終日。
上級魔法の実技試験の内容はシンプルに攻撃・防御・回復の上級魔法の中から一つを成功させる事。
「アラン先生……何ですかこの人達」
緊張しながら学園の実技棟に行くと、一番大きな実技室に通された。各実技室には"見て学ぶ"為の見学席が設置してあって、この部屋の三十ほどの見学席は満席になっていた。
「今、ニールセンさんは時の人だからね」
困った様な顔でそう言っているけど、アラン先生は楽しそう。ミューは人の多さに驚いているのか、キョロキョロと顔を左右に振って見回している。
「ルナ、この人たち、すわってなにしてるの?」
「えっと……見学っていって見てお勉強する人だと思う」
人が椅子に座っているだけの状態が不思議らしいミューの質問に苦笑いで答えながら、改めて見学席に視線を向けると魔法師団のローブを着たラルク副団長やマーフィー補佐官の姿が見え、先日にソフィア様から言われた言葉の意味を再確認した。こんなに大勢の前で愛称で呼べば、何を言われていたか分からないわね。
『お前達、何時までも子供気分で呼ぶのはお止め』
『ソフィア様?』
ソフィア様の言いたい事が分からず首を傾げた私と違って、三人は顔を見合せ納得したように頷きあっていた。えーと、理解出来てないの私だけ?
『人前で愛称で呼べば要らん誤解を招くって事だよ』
ソフィア様に言われるまで無意識に昔の呼び方をしていたけど、三人は役職を持つ大人で私もあと半年で成人する。家族や婚約者でもない私が彼らを愛称で呼べば、誤解……恋人と誤解されるのはまだしも、三人と付き合ってる淫らな関係なんて言う人も少なからずいるだろう。
『こういう誤解で一番、傷つくのは女性であるルナだ』
指摘されて直ぐに謝る彼らに私は首を横に振った。私もソフィア様に言われるまで気付かなかったもの。
「ニールセンさん、準備は良いですか?」
「はい!」
「何をやりますか?」
アラン先生に問われて少し考える。結界は出来るから防御は問題なし。回復もリュカ様で何度もやったから一番、心配な攻撃かな?
「攻撃でお願いします」
私が宣言すると室内に的が置かれ見学席の前には立ち合いの講師が貼った防御壁。準備が整った合図を受けて私は一歩前に出た。
「ミュー、火が出るから私の肩から降りないでね」
「はーい」
ミューが肩に座りなおした事を確認すると、一度、目を閉じて深呼吸する。
私は、大丈夫。
心の中で呟くと、目を開けて的に視線を合わせた。攻撃魔法をする時、的はランダムに動き一塊になることは少ない。私は魔法陣を作りながら的の動きを見て一塊にあるタイミングを待って魔法の発動した。
「火炎竜」
前回、成功した時は森の中だったからコントロールに気を使ったけど、今回は障害がない分楽だった。的に向かって真っ直ぐに飛ぶ炎の竜が十個全ての的を囲い込んで燃やしつくしてゆっくり消えた。
「ルナ、カッコいい~」
「ありがとう」
ミューの可愛い一言に癒されていると、アラン先生を含む講師三人が集まり話し合いが始まった。合否判定の話し合いのはずだけど、直ぐに終わってアラン先生だけが私の方へ歩いて来る。他の講師は軽く会釈した後、見学席の防御壁を解除したり見学者の誘導を始めた。あれ?講師全員から講評を聞くはずだけど……なんで?
「ニールセンさん、お疲れ様でした。講評は全員一致で文句無しです」
「へ?」
「威力、コントロール、そして、魔力の量。全てにおいて素晴らしいの一言です。頑張りましたね」
「あ……ありがとうございます」
アラン先生や他の講師に認められた。やっとここまできた。そんな気持ちが浮かんできたけど物足りない。どうして足りないなんて感じるのか分からず内心、首を傾げながらこの後の予定を確認していた。
「最後の卒業試験ですが、昼食と休憩を挟んで午後から。内容は魔力Aランクなので、攻撃、防御、回復の中級以上を各三つ以上成功させる事です」
私が頷いた事を確認したアラン先生は、眉を下げて困った様な表情になった。うん?今の会話に問題はないような……
「リュカ、寝てなくて良いのですか?」
「婆さんの薬湯を飲んだから問題ない」
私の後ろから聞こえた声に肩が揺れる。肩に乗っていたミューはバランスを取る為に羽を広げて飛んだ。今の声は……
「リュカ~。元気になった?」
「あぁ、薬も飲んだから大丈夫だ。ルナ嬢、試験はどうだった?」
振り返ると白いシャツと黒のトラウザー姿のリュカ様が一人で立っている。ちゃんと目が合う。会話が出来る。ただ、それだけなのに、嬉しくてポロリと涙が溢れて床に落ちた。
リュカ様が心配で試験の再開を躊躇っていた私に、ソフィア様は試験を受けないと彼が気にするから試験に集中しなさいと言い、付き添いはソフィア様とケビン団長が交代ですることになった。今日はソフィア様が家に残っていて、今朝も起きている時間が増えているから心配ないと笑顔で私を送り出してくれた。
そして、今日は最終日。
上級魔法の実技試験の内容はシンプルに攻撃・防御・回復の上級魔法の中から一つを成功させる事。
「アラン先生……何ですかこの人達」
緊張しながら学園の実技棟に行くと、一番大きな実技室に通された。各実技室には"見て学ぶ"為の見学席が設置してあって、この部屋の三十ほどの見学席は満席になっていた。
「今、ニールセンさんは時の人だからね」
困った様な顔でそう言っているけど、アラン先生は楽しそう。ミューは人の多さに驚いているのか、キョロキョロと顔を左右に振って見回している。
「ルナ、この人たち、すわってなにしてるの?」
「えっと……見学っていって見てお勉強する人だと思う」
人が椅子に座っているだけの状態が不思議らしいミューの質問に苦笑いで答えながら、改めて見学席に視線を向けると魔法師団のローブを着たラルク副団長やマーフィー補佐官の姿が見え、先日にソフィア様から言われた言葉の意味を再確認した。こんなに大勢の前で愛称で呼べば、何を言われていたか分からないわね。
『お前達、何時までも子供気分で呼ぶのはお止め』
『ソフィア様?』
ソフィア様の言いたい事が分からず首を傾げた私と違って、三人は顔を見合せ納得したように頷きあっていた。えーと、理解出来てないの私だけ?
『人前で愛称で呼べば要らん誤解を招くって事だよ』
ソフィア様に言われるまで無意識に昔の呼び方をしていたけど、三人は役職を持つ大人で私もあと半年で成人する。家族や婚約者でもない私が彼らを愛称で呼べば、誤解……恋人と誤解されるのはまだしも、三人と付き合ってる淫らな関係なんて言う人も少なからずいるだろう。
『こういう誤解で一番、傷つくのは女性であるルナだ』
指摘されて直ぐに謝る彼らに私は首を横に振った。私もソフィア様に言われるまで気付かなかったもの。
「ニールセンさん、準備は良いですか?」
「はい!」
「何をやりますか?」
アラン先生に問われて少し考える。結界は出来るから防御は問題なし。回復もリュカ様で何度もやったから一番、心配な攻撃かな?
「攻撃でお願いします」
私が宣言すると室内に的が置かれ見学席の前には立ち合いの講師が貼った防御壁。準備が整った合図を受けて私は一歩前に出た。
「ミュー、火が出るから私の肩から降りないでね」
「はーい」
ミューが肩に座りなおした事を確認すると、一度、目を閉じて深呼吸する。
私は、大丈夫。
心の中で呟くと、目を開けて的に視線を合わせた。攻撃魔法をする時、的はランダムに動き一塊になることは少ない。私は魔法陣を作りながら的の動きを見て一塊にあるタイミングを待って魔法の発動した。
「火炎竜」
前回、成功した時は森の中だったからコントロールに気を使ったけど、今回は障害がない分楽だった。的に向かって真っ直ぐに飛ぶ炎の竜が十個全ての的を囲い込んで燃やしつくしてゆっくり消えた。
「ルナ、カッコいい~」
「ありがとう」
ミューの可愛い一言に癒されていると、アラン先生を含む講師三人が集まり話し合いが始まった。合否判定の話し合いのはずだけど、直ぐに終わってアラン先生だけが私の方へ歩いて来る。他の講師は軽く会釈した後、見学席の防御壁を解除したり見学者の誘導を始めた。あれ?講師全員から講評を聞くはずだけど……なんで?
「ニールセンさん、お疲れ様でした。講評は全員一致で文句無しです」
「へ?」
「威力、コントロール、そして、魔力の量。全てにおいて素晴らしいの一言です。頑張りましたね」
「あ……ありがとうございます」
アラン先生や他の講師に認められた。やっとここまできた。そんな気持ちが浮かんできたけど物足りない。どうして足りないなんて感じるのか分からず内心、首を傾げながらこの後の予定を確認していた。
「最後の卒業試験ですが、昼食と休憩を挟んで午後から。内容は魔力Aランクなので、攻撃、防御、回復の中級以上を各三つ以上成功させる事です」
私が頷いた事を確認したアラン先生は、眉を下げて困った様な表情になった。うん?今の会話に問題はないような……
「リュカ、寝てなくて良いのですか?」
「婆さんの薬湯を飲んだから問題ない」
私の後ろから聞こえた声に肩が揺れる。肩に乗っていたミューはバランスを取る為に羽を広げて飛んだ。今の声は……
「リュカ~。元気になった?」
「あぁ、薬も飲んだから大丈夫だ。ルナ嬢、試験はどうだった?」
振り返ると白いシャツと黒のトラウザー姿のリュカ様が一人で立っている。ちゃんと目が合う。会話が出来る。ただ、それだけなのに、嬉しくてポロリと涙が溢れて床に落ちた。
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