67 / 91
学園復帰編
18
しおりを挟む
完成した魔石を持ってソフィア様と一緒にリュカ様の部屋に行くと、カイトお兄ちゃんやマーフィー君も来ていた。
「やぁ、ルー。久しぶりだな」
「マーフィー君も元気そうだね」
「その魔石……ラクルが?」
マーフィー君の問い掛けに黙って頷くと、苦笑いしながら革袋を差し出した。
「必要かもと思ったが要らなかったな」
袋の中を覗くと色とりどりの魔石が詰まっていて驚いて顔を上げると、笑いながら受け取って欲しいと言われて困惑した。
「どうせ私が持っていても宝の持ち腐れだからルーが使って。さぁ、彼を助けるんだろう?」
マーフィー君に促されリュカ様の側に行くと、彼の手を取り魔石を握らせ自分の両手で包む。どうか上手くいきますように……
「発動」
私の言葉に反応して魔石がゆっくりと光だす。指の隙間から漏れる光りがユラユラと揺らめきながらリュカ様の身体を包むと、静かに消えていった。光が消えると苦し気な表情が消えて呼吸も落ちつき始めた。
「成功したようだね」
ソフィア様のその一言で肩に入っていた力が抜けた時、開いた手の中で魔石がボロボロと崩れだした。
「魔力を使いきったみたいです」
サリーナ先生と作った魔石も幾つかは、目の前ですぐに崩れて消えた事を伝えるとソフィア様は黙って頷く。魔石の話をしながらリュカ様の様子を伺っていると、ゆっくり目を開けた彼は、意識がハッキリしていないのかわボンヤリと視線を彷徨わせている。まだ魔力が残っているのかしら?
「リュカ様、大丈夫ですか?聞こえますか?」
少し心配になって声を掛けると、ゆっくりと顔を動かし視線を向けた彼は嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「ルナ嬢」
「は、はい……良かった」
名前を呼ばれて涙が滲むのを瞬きで誤魔化していると、私の後ろから様子を見ていたソフィア様から声を掛けている。
「まったく人騒がせな孫だね。ルナに感謝しな」
「……婆さんか……他に誰がいるんだ?」
「今から説明するから待ちな」
少し驚いた様子のリュカ様が身体を起こそうとしてケビン団長に止められている。その横でソフィア様は眉間にシワを寄せて、少し考え事をしている様に見えた。渋々ベッドに戻ったリュカ様だったけど、ソフィア様が説明している間に再び寝てしまっていた。
「リュカ様?」
「寝たのかい」
声を掛けてもピクリとも動かないリュカ様に、ソフィア様が無言で側に移動すると彼の体調を調べたあと深いため息を吐き出した。
「魔力の使いすぎだね……回復するまで目は見えないよ」
「大魔法使い殿、それは何故ですか?」
カイトお兄ちゃんがソフィア様に理由を尋ねると、壁に掛けてあったリュカ様の上着のポケットから眼鏡を取り出した。
「リュカが魔法使いになれなかった原因さ。目に魔力が集中しているんだ」
ソフィア様の話はケビン団長以外、知らなかったらしい。皆が驚いた表情になる中、ソフィア様は淡々と話を続けた。
「リュカは元々、解析の魔力に特化していてねぇ。目で見た物全てを無意識に解析してしまうんだよ」
その言葉を聞いて学園に来た時、掛けていた眼鏡を外した事を思い出した。あれは魔力でエリザベスの居場所を確認する為に?
「魔力が無ければ解析出来ない。解析が出来なければ見ることが出来ない。だから普段はドラゴンの鱗で魔力を抑えているんなだよ」
リュカ様のメガネは翁さんの鱗で作った特別製で、魔力の量を調整して解析力だけを抑えてくれるらしい。魔力がないと見ることが出来ないなんて……そんな事があるの?
「魔力と視力が直結しているというのですか」
カイトお兄ちゃんの呟きの様な質問に、ソフィア様は大きく頷いた。驚いたのは私だけじゃなかったみたい。部屋から全ての音が消えてしまった様な錯覚すら感じた。
「そうさ。魔力が半分ほど回復するまで見えないね」
ハッキリと断言するソフィア様の話し方はまるで以前にも同じ様な事があった様に聞こえる。そう思ったのは私だけじゃなくて、ラクちゃんが手を挙げてから質問していた。
「そこまで断言出来るということは、以前にも同じ様な事があっての事と認識で宜しいですか?」
「あぁ、幼い頃に何度か魔力の使いすぎで見えなくなったよ。一晩で済む事もあれば一週間程、時間が掛かった事もある」
重苦しい空気が部屋に広がる中、取り敢えず一晩様子を見る事になり一階の応接室に移動した。
「やぁ、ルー。久しぶりだな」
「マーフィー君も元気そうだね」
「その魔石……ラクルが?」
マーフィー君の問い掛けに黙って頷くと、苦笑いしながら革袋を差し出した。
「必要かもと思ったが要らなかったな」
袋の中を覗くと色とりどりの魔石が詰まっていて驚いて顔を上げると、笑いながら受け取って欲しいと言われて困惑した。
「どうせ私が持っていても宝の持ち腐れだからルーが使って。さぁ、彼を助けるんだろう?」
マーフィー君に促されリュカ様の側に行くと、彼の手を取り魔石を握らせ自分の両手で包む。どうか上手くいきますように……
「発動」
私の言葉に反応して魔石がゆっくりと光だす。指の隙間から漏れる光りがユラユラと揺らめきながらリュカ様の身体を包むと、静かに消えていった。光が消えると苦し気な表情が消えて呼吸も落ちつき始めた。
「成功したようだね」
ソフィア様のその一言で肩に入っていた力が抜けた時、開いた手の中で魔石がボロボロと崩れだした。
「魔力を使いきったみたいです」
サリーナ先生と作った魔石も幾つかは、目の前ですぐに崩れて消えた事を伝えるとソフィア様は黙って頷く。魔石の話をしながらリュカ様の様子を伺っていると、ゆっくり目を開けた彼は、意識がハッキリしていないのかわボンヤリと視線を彷徨わせている。まだ魔力が残っているのかしら?
「リュカ様、大丈夫ですか?聞こえますか?」
少し心配になって声を掛けると、ゆっくりと顔を動かし視線を向けた彼は嬉しそうに微笑みを浮かべた。
「ルナ嬢」
「は、はい……良かった」
名前を呼ばれて涙が滲むのを瞬きで誤魔化していると、私の後ろから様子を見ていたソフィア様から声を掛けている。
「まったく人騒がせな孫だね。ルナに感謝しな」
「……婆さんか……他に誰がいるんだ?」
「今から説明するから待ちな」
少し驚いた様子のリュカ様が身体を起こそうとしてケビン団長に止められている。その横でソフィア様は眉間にシワを寄せて、少し考え事をしている様に見えた。渋々ベッドに戻ったリュカ様だったけど、ソフィア様が説明している間に再び寝てしまっていた。
「リュカ様?」
「寝たのかい」
声を掛けてもピクリとも動かないリュカ様に、ソフィア様が無言で側に移動すると彼の体調を調べたあと深いため息を吐き出した。
「魔力の使いすぎだね……回復するまで目は見えないよ」
「大魔法使い殿、それは何故ですか?」
カイトお兄ちゃんがソフィア様に理由を尋ねると、壁に掛けてあったリュカ様の上着のポケットから眼鏡を取り出した。
「リュカが魔法使いになれなかった原因さ。目に魔力が集中しているんだ」
ソフィア様の話はケビン団長以外、知らなかったらしい。皆が驚いた表情になる中、ソフィア様は淡々と話を続けた。
「リュカは元々、解析の魔力に特化していてねぇ。目で見た物全てを無意識に解析してしまうんだよ」
その言葉を聞いて学園に来た時、掛けていた眼鏡を外した事を思い出した。あれは魔力でエリザベスの居場所を確認する為に?
「魔力が無ければ解析出来ない。解析が出来なければ見ることが出来ない。だから普段はドラゴンの鱗で魔力を抑えているんなだよ」
リュカ様のメガネは翁さんの鱗で作った特別製で、魔力の量を調整して解析力だけを抑えてくれるらしい。魔力がないと見ることが出来ないなんて……そんな事があるの?
「魔力と視力が直結しているというのですか」
カイトお兄ちゃんの呟きの様な質問に、ソフィア様は大きく頷いた。驚いたのは私だけじゃなかったみたい。部屋から全ての音が消えてしまった様な錯覚すら感じた。
「そうさ。魔力が半分ほど回復するまで見えないね」
ハッキリと断言するソフィア様の話し方はまるで以前にも同じ様な事があった様に聞こえる。そう思ったのは私だけじゃなくて、ラクちゃんが手を挙げてから質問していた。
「そこまで断言出来るということは、以前にも同じ様な事があっての事と認識で宜しいですか?」
「あぁ、幼い頃に何度か魔力の使いすぎで見えなくなったよ。一晩で済む事もあれば一週間程、時間が掛かった事もある」
重苦しい空気が部屋に広がる中、取り敢えず一晩様子を見る事になり一階の応接室に移動した。
10
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?
gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。
みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。
黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。
十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。
家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。
奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。
公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜
星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」
「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」
公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。
* エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました
砂礫レキ
恋愛
公爵令嬢エミア・シュタイトは婚約者である第二王子アリオス・ルーンファクトを心から愛していた。
けれど幼い頃からの恋心をアリオスは手酷く否定し続ける。その度にエミアの心は傷つき自己嫌悪が深くなっていった。
そして婚約から十年経った時「お前は俺の子を産むだけの存在にしか過ぎない」とアリオスに言われエミアの自尊心は限界を迎える。
消えてしまいたいと強く願った彼女は己の人格と引き換えに前世の記憶を取り戻した。
救国の聖女「エミヤ」の記憶を。
表紙は三日月アルペジオ様からお借りしています。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる