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学園復帰編
13 side 騎士団団長 カイト
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仕事の目処が立ち後を夜勤の部下に頼むと、すぐさま大魔法使い殿の家へと向かった。家に着き大魔法使い殿に彼女の容態を尋ねれば、体に問題はなくあとは目を覚ますのを待つだけだという。一安心しながら大魔法使い殿と一緒に向かった部屋には、部下とケビン団長が待ち構えていた。
「何を隠していか話して貰おうじゃないか」
ソファーに座った途端、話を進めようとする大魔法使い殿の顔には焦りがあるように見て取れる。その様子から彼女が寝ているだけではないのだと察せられた。
「今から話す事は他言無用でお願い致します。サリーナ先生との約束でもありますゆえ」
全員が頷き了承した事を確認すると、今まで隠していた全てを話す事にした。
「サリーナ先生が考案・製作したとされている魔石に魔法陣を埋め込み利用する方法は、本当は僅か五つの彼女が作り出した物です」
「そうかい。サリーナではない事は分かっていたよ。あの子では足りないからね」
「えぇ、サリーナ先生では魔力が足りませんので。あれは十年前でした」
成人してから突然、覚醒した私は魔力が制御出来ずに、周囲や自分自身の体を破壊していた頃の事。サリーナ先生に連れられて向かった先で出会ったのが彼女ーールナ・ニールセンーーだった。魔力が強い事から両親、特に父親の期待は大きく、まだ幼い子供なのに大人が学ぶ内容を勉強させられていた。
『ルナさん、今日から暫くの間、このお兄ちゃんも一緒にお勉強する事になったの』
『お兄ちゃん?』
『カイトだ』
今まで魔力がなく無知な私より学問に明るく、私の悩みを知った彼女が考えたのが例の魔石。魔法陣が完成出来ずとも魔石の中に予め入れ自由に出し入れ出来れば、私の魔力の封印と解放が自由に出来るはずだと言い出し、そして、本当に魔石を完成させた。
『これでカイトお兄ちゃんも元気になれるよ』
彼女はただ、私の体調を心配しているだけだ。しかし、その為に完成させた魔石はこれからの騎士のあり方を魔力の使い方を大きく変える物だ。彼女の両親、特に父親の態度を見て、サリーナ先生は私達と話をして思い付いた事にして彼女の存在を隠す事にした。
「彼女の力と知識を悪用させぬ様に、サリーナ先生は、自身が表に立って彼女を隠す事に徹底しました。そして、私達に彼女を守り助ける様に言ったのです」
「私達ってカイトの他に誰かいるのかい?」
「宰相補佐のマーフィー・カービングと魔法師団副団長のラルク・ハーゲンです」
「こりゃまた、大物を揃えたねぇ」
「まだ若い私達に、将来的には自分の変わりに彼女を守る為に力をつけろと言われましたので」
サリーナ先生を介した私達と彼女の交流は、侯爵が無理矢理婚約し止めるまでの僅か一年間にも満たなかった。そのたった数ヶ月が私達の人生の大きく変えたのだ。
「他の二人もルナが装具を作ったのかい?」
「えぇ、彼らも彼女の作った魔石を利用した装具で助けられました。マーフィーは眼鏡に、ラルクは杖に仕込んでいます」
「さっきから一つ気になるね。何故、ルナは何も覚えていないんだい?」
「それもサリーナ先生が掛けた暗示のせいです。必要になれば思い出す様にしたとだけ聞きました」
納得出来ないのか小さな唸り声を上げる大魔法使い殿の横で、部下は拳を握り締め微かに震えていた。彼女が心配なのだろうか。
「ルナが目を覚まさないのは、暗示が解け始めたからだろうね」
「誰か来て!ルナの様子がおかしいの!」
彼女の契約者が慌てた様子で部屋に駆け込んで来たので全員で彼女の部屋に向かうと、ベッドの中で血の気のない白い顔で酷く魘されいた。彼女の部屋に一歩踏み入れると、瘴気の様な重い空気を肌で感じた。
「魔女の仕業かい。防ぎ切れなかった様だね」
「大魔法使い殿、何が」
「恐らく幻惑を掛けた時に何かしたんだろうよ。精神に何かが干渉している様だが……私には何も出来ない」
詳しい説明を聞けば精神干渉の魔法は使う側にも影響を与える。魔女の魔法が強すぎて大魔法使い殿ですら何も出来ないと言う。氷の魔女の力はそれほど強いのか?これではサリーナ先生が危惧していた事が現実になるのだろうか。
「サリーナ先生が一番、危惧していたのは、彼女が氷の魔女に取り込まれる事」
「カイト団長、何を言い出すのだ」
怪訝な表情を向けるケビン団長と、何かに気付いた様にハッと顔を上げた大魔法使い殿。何も言わぬ部下は気掛かりだが、彼女のこれからに重要な問題を告げた。
「彼女の魔石はーー呪具ーーにもなるものだ」
「何を隠していか話して貰おうじゃないか」
ソファーに座った途端、話を進めようとする大魔法使い殿の顔には焦りがあるように見て取れる。その様子から彼女が寝ているだけではないのだと察せられた。
「今から話す事は他言無用でお願い致します。サリーナ先生との約束でもありますゆえ」
全員が頷き了承した事を確認すると、今まで隠していた全てを話す事にした。
「サリーナ先生が考案・製作したとされている魔石に魔法陣を埋め込み利用する方法は、本当は僅か五つの彼女が作り出した物です」
「そうかい。サリーナではない事は分かっていたよ。あの子では足りないからね」
「えぇ、サリーナ先生では魔力が足りませんので。あれは十年前でした」
成人してから突然、覚醒した私は魔力が制御出来ずに、周囲や自分自身の体を破壊していた頃の事。サリーナ先生に連れられて向かった先で出会ったのが彼女ーールナ・ニールセンーーだった。魔力が強い事から両親、特に父親の期待は大きく、まだ幼い子供なのに大人が学ぶ内容を勉強させられていた。
『ルナさん、今日から暫くの間、このお兄ちゃんも一緒にお勉強する事になったの』
『お兄ちゃん?』
『カイトだ』
今まで魔力がなく無知な私より学問に明るく、私の悩みを知った彼女が考えたのが例の魔石。魔法陣が完成出来ずとも魔石の中に予め入れ自由に出し入れ出来れば、私の魔力の封印と解放が自由に出来るはずだと言い出し、そして、本当に魔石を完成させた。
『これでカイトお兄ちゃんも元気になれるよ』
彼女はただ、私の体調を心配しているだけだ。しかし、その為に完成させた魔石はこれからの騎士のあり方を魔力の使い方を大きく変える物だ。彼女の両親、特に父親の態度を見て、サリーナ先生は私達と話をして思い付いた事にして彼女の存在を隠す事にした。
「彼女の力と知識を悪用させぬ様に、サリーナ先生は、自身が表に立って彼女を隠す事に徹底しました。そして、私達に彼女を守り助ける様に言ったのです」
「私達ってカイトの他に誰かいるのかい?」
「宰相補佐のマーフィー・カービングと魔法師団副団長のラルク・ハーゲンです」
「こりゃまた、大物を揃えたねぇ」
「まだ若い私達に、将来的には自分の変わりに彼女を守る為に力をつけろと言われましたので」
サリーナ先生を介した私達と彼女の交流は、侯爵が無理矢理婚約し止めるまでの僅か一年間にも満たなかった。そのたった数ヶ月が私達の人生の大きく変えたのだ。
「他の二人もルナが装具を作ったのかい?」
「えぇ、彼らも彼女の作った魔石を利用した装具で助けられました。マーフィーは眼鏡に、ラルクは杖に仕込んでいます」
「さっきから一つ気になるね。何故、ルナは何も覚えていないんだい?」
「それもサリーナ先生が掛けた暗示のせいです。必要になれば思い出す様にしたとだけ聞きました」
納得出来ないのか小さな唸り声を上げる大魔法使い殿の横で、部下は拳を握り締め微かに震えていた。彼女が心配なのだろうか。
「ルナが目を覚まさないのは、暗示が解け始めたからだろうね」
「誰か来て!ルナの様子がおかしいの!」
彼女の契約者が慌てた様子で部屋に駆け込んで来たので全員で彼女の部屋に向かうと、ベッドの中で血の気のない白い顔で酷く魘されいた。彼女の部屋に一歩踏み入れると、瘴気の様な重い空気を肌で感じた。
「魔女の仕業かい。防ぎ切れなかった様だね」
「大魔法使い殿、何が」
「恐らく幻惑を掛けた時に何かしたんだろうよ。精神に何かが干渉している様だが……私には何も出来ない」
詳しい説明を聞けば精神干渉の魔法は使う側にも影響を与える。魔女の魔法が強すぎて大魔法使い殿ですら何も出来ないと言う。氷の魔女の力はそれほど強いのか?これではサリーナ先生が危惧していた事が現実になるのだろうか。
「サリーナ先生が一番、危惧していたのは、彼女が氷の魔女に取り込まれる事」
「カイト団長、何を言い出すのだ」
怪訝な表情を向けるケビン団長と、何かに気付いた様にハッと顔を上げた大魔法使い殿。何も言わぬ部下は気掛かりだが、彼女のこれからに重要な問題を告げた。
「彼女の魔石はーー呪具ーーにもなるものだ」
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