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学園復帰編
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私がソフィア様とリュカ様の言い争いに困っていると、騎士団団長様が大きな体を屈めて顔を覗き込んできた。
「先程、大きな結界を施行していたが体調は大丈夫だろうか?」
「は、はい、問題ありません」
「良かった。ご協力感謝する。大魔法使い殿、彼女からも話を聞きたいのだが宜しいか?」
「あ?」
言い争いしていたソフィア様だったけど、団長様の言葉に苛立つ表情のまま視線を向けた後、何か考える様に首を傾げた。
「さっき名前を呼んでいたが、この大男はルナの知り合いかい?」
ソフィア様の質問に首を傾げる。ソフィア様も言っていたけど、こんなに大きな男性知り合いにいないと思うけど、見たことがあるような気もする。
「うーん?」
「サリーナ先生の授業を一緒に受けた」
「サリーナ先生……十年前?」
思い出せずに唸っていた時、団長様から出てきた"サリーナ先生"は父が連れてきた家庭教師で、五歳の頃から数年間、主に魔法の座学を受けた。魔法理論や魔法史といったわりと眠くなる内容を幼い私に合わせて絵本を取り入れて分かりやすく教えてくれた。確かに授業受けたけど……あ!先生が知り合いの息子さん達を連れてきた事があったわ。その中の誰かよね?随分、昔だからハッキリしないけど、背が高くて深い緑の切れ長な瞳は確か……
「カイトお兄ちゃん?」
「正解。覚えていてくれて嬉しいよ」
いや、ソフィア様に言われるまで気付きませんでしたよ。だって、記憶の中のカイトお兄ちゃんは背は高かったけど細身で、こんなに筋肉隆々のゴリラではなかったわ。
「いや~、あの先生にお前は馬鹿だからこの子と一緒に授業を受けろと言われた時には驚いたが、ルナちゃんは昔から賢くて物覚えも私より早かったな」
「だろうね脳筋」
「大魔法使い殿、私は、そこまで酷くないでしょう。ねぇ?ルナちゃん」
「あ、ははは」
ソフィア様の言葉を否定出来ない私は、笑って誤魔化した。えーと、絵本を交えた子供向けの授業を十年前ーーつまり、良い歳の大人が幼児の私と一緒に受けたのだから普通じゃないですよ。
「で?ルナに何が聞きたい」
「今回の対象者の変化を」
簡単な事情聴取のようで何時から変化に気づいたのかとか、休学する前の彼女との関係等、当たり障りのない内容で質問はすぐに終った。団長様との話が終わる頃には校舎の復旧も終わり、あとは帰るだけでだった。はー、プロの人達は仕事が速いわ。私ももっと訓練しなくちゃ。
「ルナちゃんは自宅に帰るのかい?送って行くよ」
頭を大きな手で撫でられたけど、小さく子供みたいな扱いに不快な気持ちになった。昔からの知り合いだから仕方ないけど、何だかモヤモヤしてしまう。
どうしてかしら……子供扱いが何か嫌だわ。今日の私は変ね。団長様の対応に不快感を感じるなんて……拗ねてる子供と一緒だわ。
そんな拗ねた自分の顔を見られたくなくて、俯いたままソフィア様と一緒に帰る事を告げた。
「大魔法使い殿と一緒に?あぁ、弟子入りしたのだったね。では、肩に乗るその子が例の契約者か」
大勢の人がいるせいか明言を避ける言い方に安堵しながら、私は顔を上げて黙って頷いた。ミューの安全を考えると、本当の姿を知る人は最小限が良いもの。
「成る程、これはフリューゲルの役得だ。不満も出るはずだ」
「不満?」
「この、馬鹿!」
"不満"と聞いて首を傾げる私の横から伸びてきたのはソフィア様の腕。何時もリュカ様にやるように団長様にも、ゴンと大きな音と共に拳骨を落とした。うわ、痛そう。
「まったく、一言余計なんだよ。だから訓練場を借りたんだ」
「成る程。で、何人と訓練する気でしょう?」
「あぁ、さてね。希望者全員とやるよ」
「全員となると回復薬は百程でしょうか」
「そんなもんは要らないよ。ルナが回復出来るから問題ない」
ソフィア様と団長様が訓練の話し合いを始めてしまい、また取り残されたような私は周囲からの視線に居心地が悪くなっていた。
さっきから回りの人達に見られているけど、私みたいな子供が弟子だって信じられないのかしら?それとも認められないって事かしら……
「ルナ嬢、本当に大丈夫か?顔色が悪くなっているぞ」
考え事をしていたせいか再び俯いていた私を、リュカ様がしゃがみ込んで下から顔を覗かせた。あまりにも近い所にある顔に驚いて固まって声も出ない。何も返事をしない事を不信に思ったのか、リュカ様の手が私の頬を挟み額と額を合わせた。軽く目を伏せた彼の長い睫毛が揺れ息が顔に掛かる程近い。ゆっくり目を開くと真っ黒い瞳が、真っ直ぐ私に向けられる。
「熱はなさそうだが……頭痛や吐き気はあるか?」
「な!?」
「顔が赤いぞ。やっぱり体調が……ッ!婆さん!!」
「顔が近いよ馬鹿が!」
近すぎた距離に私の心臓が煩いくらいに速くなる。体調を心配した為の事とは頭で理解しても、異性に免疫のない私には刺激が強すぎて眩暈がする。フワリと満開の花の様な甘い香りがしたかと思うと、私の意識はプツリと切れてしまった。
なんの香りだろう……とにかく甘い甘い花の香りで胸が苦しい……
「先程、大きな結界を施行していたが体調は大丈夫だろうか?」
「は、はい、問題ありません」
「良かった。ご協力感謝する。大魔法使い殿、彼女からも話を聞きたいのだが宜しいか?」
「あ?」
言い争いしていたソフィア様だったけど、団長様の言葉に苛立つ表情のまま視線を向けた後、何か考える様に首を傾げた。
「さっき名前を呼んでいたが、この大男はルナの知り合いかい?」
ソフィア様の質問に首を傾げる。ソフィア様も言っていたけど、こんなに大きな男性知り合いにいないと思うけど、見たことがあるような気もする。
「うーん?」
「サリーナ先生の授業を一緒に受けた」
「サリーナ先生……十年前?」
思い出せずに唸っていた時、団長様から出てきた"サリーナ先生"は父が連れてきた家庭教師で、五歳の頃から数年間、主に魔法の座学を受けた。魔法理論や魔法史といったわりと眠くなる内容を幼い私に合わせて絵本を取り入れて分かりやすく教えてくれた。確かに授業受けたけど……あ!先生が知り合いの息子さん達を連れてきた事があったわ。その中の誰かよね?随分、昔だからハッキリしないけど、背が高くて深い緑の切れ長な瞳は確か……
「カイトお兄ちゃん?」
「正解。覚えていてくれて嬉しいよ」
いや、ソフィア様に言われるまで気付きませんでしたよ。だって、記憶の中のカイトお兄ちゃんは背は高かったけど細身で、こんなに筋肉隆々のゴリラではなかったわ。
「いや~、あの先生にお前は馬鹿だからこの子と一緒に授業を受けろと言われた時には驚いたが、ルナちゃんは昔から賢くて物覚えも私より早かったな」
「だろうね脳筋」
「大魔法使い殿、私は、そこまで酷くないでしょう。ねぇ?ルナちゃん」
「あ、ははは」
ソフィア様の言葉を否定出来ない私は、笑って誤魔化した。えーと、絵本を交えた子供向けの授業を十年前ーーつまり、良い歳の大人が幼児の私と一緒に受けたのだから普通じゃないですよ。
「で?ルナに何が聞きたい」
「今回の対象者の変化を」
簡単な事情聴取のようで何時から変化に気づいたのかとか、休学する前の彼女との関係等、当たり障りのない内容で質問はすぐに終った。団長様との話が終わる頃には校舎の復旧も終わり、あとは帰るだけでだった。はー、プロの人達は仕事が速いわ。私ももっと訓練しなくちゃ。
「ルナちゃんは自宅に帰るのかい?送って行くよ」
頭を大きな手で撫でられたけど、小さく子供みたいな扱いに不快な気持ちになった。昔からの知り合いだから仕方ないけど、何だかモヤモヤしてしまう。
どうしてかしら……子供扱いが何か嫌だわ。今日の私は変ね。団長様の対応に不快感を感じるなんて……拗ねてる子供と一緒だわ。
そんな拗ねた自分の顔を見られたくなくて、俯いたままソフィア様と一緒に帰る事を告げた。
「大魔法使い殿と一緒に?あぁ、弟子入りしたのだったね。では、肩に乗るその子が例の契約者か」
大勢の人がいるせいか明言を避ける言い方に安堵しながら、私は顔を上げて黙って頷いた。ミューの安全を考えると、本当の姿を知る人は最小限が良いもの。
「成る程、これはフリューゲルの役得だ。不満も出るはずだ」
「不満?」
「この、馬鹿!」
"不満"と聞いて首を傾げる私の横から伸びてきたのはソフィア様の腕。何時もリュカ様にやるように団長様にも、ゴンと大きな音と共に拳骨を落とした。うわ、痛そう。
「まったく、一言余計なんだよ。だから訓練場を借りたんだ」
「成る程。で、何人と訓練する気でしょう?」
「あぁ、さてね。希望者全員とやるよ」
「全員となると回復薬は百程でしょうか」
「そんなもんは要らないよ。ルナが回復出来るから問題ない」
ソフィア様と団長様が訓練の話し合いを始めてしまい、また取り残されたような私は周囲からの視線に居心地が悪くなっていた。
さっきから回りの人達に見られているけど、私みたいな子供が弟子だって信じられないのかしら?それとも認められないって事かしら……
「ルナ嬢、本当に大丈夫か?顔色が悪くなっているぞ」
考え事をしていたせいか再び俯いていた私を、リュカ様がしゃがみ込んで下から顔を覗かせた。あまりにも近い所にある顔に驚いて固まって声も出ない。何も返事をしない事を不信に思ったのか、リュカ様の手が私の頬を挟み額と額を合わせた。軽く目を伏せた彼の長い睫毛が揺れ息が顔に掛かる程近い。ゆっくり目を開くと真っ黒い瞳が、真っ直ぐ私に向けられる。
「熱はなさそうだが……頭痛や吐き気はあるか?」
「な!?」
「顔が赤いぞ。やっぱり体調が……ッ!婆さん!!」
「顔が近いよ馬鹿が!」
近すぎた距離に私の心臓が煩いくらいに速くなる。体調を心配した為の事とは頭で理解しても、異性に免疫のない私には刺激が強すぎて眩暈がする。フワリと満開の花の様な甘い香りがしたかと思うと、私の意識はプツリと切れてしまった。
なんの香りだろう……とにかく甘い甘い花の香りで胸が苦しい……
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