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学園復帰編
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翌朝、昨日の夜に仕込んだ大量のスープはまた、全てリュカ様のお腹に消えてしまった。流石に二日続けての暴挙にソフィア様から拳骨を貰ったリュカ様が頭を押さえながら踞っていた。
「この脳筋は学習しないねぇ」
「申し訳ありません」
大きなため息を吐いたケビン団長に襟元を捕まれて、リュカ様は引きずられる様に出勤して行った。
「……ソフィア様、アレは大丈夫なのですか?」
「何時もの事さ。悪いね、今日は私が夕食を作るよ」
「それは気にしないで下さい。お料理は楽しいので。それにお弁当も渡しましたし今晩は大丈夫じゃないですか?」
「……どうかねぇ」
ソフィア様が呆れた顔でそんな事を言うから心配になってきたけど、私達も家を出る時間になって馬車に乗って学校へ向かった。私は実技試験の為だけに登校するので一般生徒より少し遅れての登校になっている。学校に到着して生徒のいない静かな校内を歩き試験の部屋に向かうと、既に三人の講師が待ち構えていて驚いた。え?講師が先に着てる。何で?今までは時間になっても来ないなんてよくあったのに、もしかしてこれが普通なのかしら?
「師匠、ニールセンさん、おはようございます」
「アラン、二週間後に訓練やるからルナと一緒に城に行くよ」
「「え?」」
ちょっと待って下さい。ソフィア様、お城に行くって何?しかも訓練って……昨日のリュカ様が言ってた許可ってコレ!?
「何ですか師匠。いきなり過ぎて話が分かりませんよ」
アラン先生がこめかみを押さえながらため息を吐くと、ソフィア様はフンと鼻をならして腕を組んで先生を睨みつけた。
「ミューの護衛希望者が殺到しいる。実力をみたいからお前も一緒に来るんだよ」
「そういう事ならお供します。でも、今は試験の説明をさせて頂きますよ」
ソフィア様が頷いた事を確認するとアラン先生が試験の説明を始めた。説明と言っても出される課題ーー魔法ーーの魔法陣を正確に作り発動出来るのか確認するだけ。今までは魔法陣までは出来ていたので、発動して効果が出せれば合格になるらしい。
「今の説明で質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です。試験を宜しくお願いします」
私が講師の方々に頭を下げると、ソフィア様は黙って会場の角に置かれた椅子に座った。ソフィア様は大魔法使いだけど、学園の講師ではないから見学に徹する事になっている。早速、出された課題は"明かり"。これはソフィア様の所で最初に練習した魔法だし難なく出来た。
「合格です。体調や魔力に問題はなさそうですね」
「はい、まだ余裕があります」
「では続けて試験を行います」
下位魔法の試験を続けてクリアしていると、一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。講師の出す課題が止まり三人が書類を見ながら話し合いをしているので、教室から出ずに話が纏まるまで待っていた。
「ルナ~ひま~」
「うーん、先生達の話が済んだらソフィア様と一緒に外に出て良いか聞いてみるね」
「わかった。まってる」
少し元気のないミューはソフィア様の膝の上に飛び乗ると、猫の様に丸くなって寝てしまった。うーん、明日からソフィア様と家で留守番した方が良いかしら?そんな事を考えていると講師の話が終わり、代表でアラン先生が私に説明をしてくれた。
「実は今の一時間で今日、準備していた初級の試験が終わってしまって、続きの試験をする事が出来ないのです」
「え!?そうなんですか?」
「えぇ、こちらの準備不足で申し訳ないですが、今日の試験は終了させて下さい。明日からはもっとスムーズに出来る様に準備しますね」
アラン先生が苦笑いしながらそう言うと、後ろにいた講師も申し訳なさそうに頭を下げていた。まぁ、ミューも暇をもて余していたし丁度良いかも。
「分かりました。今日はありがとうございました」
「はい、お疲れ様でした」
講師の方々にも挨拶をしてからソフィア様の元に行くと、ミューが起き上がり背伸びをした。
「おそとに行ってもへいき?」
「今日の試験は終わったから帰って良いって」
「どういう事だい?まだ、初級しかしていないじゃないか」
「試験の準備が出来ていないそうです。続きは明日になりました」
ソフィア様がため息を吐きながら席を立つと、講師の方々が慌ててやって来て謝罪していた。明日からは残りの初級と中級全ての試験を準備すると聞いて、納得したみたいで頷いていた。ミューを肩に乗せて馬車乗り場に向かう途中、すれ違う生徒達の中にエリザベスの姿があったけど、彼女の回りだけ黒く不気味な靄がかかって見えた。私が驚いているうちにエリザベスは他の生徒達と一緒に教室に入って行く。二時間目のチャイムが鳴ると教室内ドアが閉まり中の様子は分からなくなった。
「今の靄は何?」
ソフィア様もアラン先生も二週間後のお城で行う訓練の話をしながら先に進んでいて気づいた様子はない。私の見間違いかしら?
「ルナ、どうしたんだい?」
「あ!今、行きます」
一人立ち止まって考えていた私は慌ててソフィア様達を追い掛けたけど、さっき見えた靄が気になって仕方なかった。
嫌な感じがしたけど……気のせいかな?
「この脳筋は学習しないねぇ」
「申し訳ありません」
大きなため息を吐いたケビン団長に襟元を捕まれて、リュカ様は引きずられる様に出勤して行った。
「……ソフィア様、アレは大丈夫なのですか?」
「何時もの事さ。悪いね、今日は私が夕食を作るよ」
「それは気にしないで下さい。お料理は楽しいので。それにお弁当も渡しましたし今晩は大丈夫じゃないですか?」
「……どうかねぇ」
ソフィア様が呆れた顔でそんな事を言うから心配になってきたけど、私達も家を出る時間になって馬車に乗って学校へ向かった。私は実技試験の為だけに登校するので一般生徒より少し遅れての登校になっている。学校に到着して生徒のいない静かな校内を歩き試験の部屋に向かうと、既に三人の講師が待ち構えていて驚いた。え?講師が先に着てる。何で?今までは時間になっても来ないなんてよくあったのに、もしかしてこれが普通なのかしら?
「師匠、ニールセンさん、おはようございます」
「アラン、二週間後に訓練やるからルナと一緒に城に行くよ」
「「え?」」
ちょっと待って下さい。ソフィア様、お城に行くって何?しかも訓練って……昨日のリュカ様が言ってた許可ってコレ!?
「何ですか師匠。いきなり過ぎて話が分かりませんよ」
アラン先生がこめかみを押さえながらため息を吐くと、ソフィア様はフンと鼻をならして腕を組んで先生を睨みつけた。
「ミューの護衛希望者が殺到しいる。実力をみたいからお前も一緒に来るんだよ」
「そういう事ならお供します。でも、今は試験の説明をさせて頂きますよ」
ソフィア様が頷いた事を確認するとアラン先生が試験の説明を始めた。説明と言っても出される課題ーー魔法ーーの魔法陣を正確に作り発動出来るのか確認するだけ。今までは魔法陣までは出来ていたので、発動して効果が出せれば合格になるらしい。
「今の説明で質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です。試験を宜しくお願いします」
私が講師の方々に頭を下げると、ソフィア様は黙って会場の角に置かれた椅子に座った。ソフィア様は大魔法使いだけど、学園の講師ではないから見学に徹する事になっている。早速、出された課題は"明かり"。これはソフィア様の所で最初に練習した魔法だし難なく出来た。
「合格です。体調や魔力に問題はなさそうですね」
「はい、まだ余裕があります」
「では続けて試験を行います」
下位魔法の試験を続けてクリアしていると、一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。講師の出す課題が止まり三人が書類を見ながら話し合いをしているので、教室から出ずに話が纏まるまで待っていた。
「ルナ~ひま~」
「うーん、先生達の話が済んだらソフィア様と一緒に外に出て良いか聞いてみるね」
「わかった。まってる」
少し元気のないミューはソフィア様の膝の上に飛び乗ると、猫の様に丸くなって寝てしまった。うーん、明日からソフィア様と家で留守番した方が良いかしら?そんな事を考えていると講師の話が終わり、代表でアラン先生が私に説明をしてくれた。
「実は今の一時間で今日、準備していた初級の試験が終わってしまって、続きの試験をする事が出来ないのです」
「え!?そうなんですか?」
「えぇ、こちらの準備不足で申し訳ないですが、今日の試験は終了させて下さい。明日からはもっとスムーズに出来る様に準備しますね」
アラン先生が苦笑いしながらそう言うと、後ろにいた講師も申し訳なさそうに頭を下げていた。まぁ、ミューも暇をもて余していたし丁度良いかも。
「分かりました。今日はありがとうございました」
「はい、お疲れ様でした」
講師の方々にも挨拶をしてからソフィア様の元に行くと、ミューが起き上がり背伸びをした。
「おそとに行ってもへいき?」
「今日の試験は終わったから帰って良いって」
「どういう事だい?まだ、初級しかしていないじゃないか」
「試験の準備が出来ていないそうです。続きは明日になりました」
ソフィア様がため息を吐きながら席を立つと、講師の方々が慌ててやって来て謝罪していた。明日からは残りの初級と中級全ての試験を準備すると聞いて、納得したみたいで頷いていた。ミューを肩に乗せて馬車乗り場に向かう途中、すれ違う生徒達の中にエリザベスの姿があったけど、彼女の回りだけ黒く不気味な靄がかかって見えた。私が驚いているうちにエリザベスは他の生徒達と一緒に教室に入って行く。二時間目のチャイムが鳴ると教室内ドアが閉まり中の様子は分からなくなった。
「今の靄は何?」
ソフィア様もアラン先生も二週間後のお城で行う訓練の話をしながら先に進んでいて気づいた様子はない。私の見間違いかしら?
「ルナ、どうしたんだい?」
「あ!今、行きます」
一人立ち止まって考えていた私は慌ててソフィア様達を追い掛けたけど、さっき見えた靄が気になって仕方なかった。
嫌な感じがしたけど……気のせいかな?
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