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龍人の村編
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養子縁組も終わり家も決まった。後は、この子と契約するだけだけど………
「まだ体調が安定していないね」
大きな魔法を使った反動で自分の魔力に酔ってしまった私は現在、二日酔い状態。お酒を飲んだ事がないから分からないけど、眩暈と吐き気が続いていてソフィア様から許可が出ていない。
「魔力は回復しているから、明日には大丈夫だろう」
「はぁ……お酒を飲むとこんな感じになるなら飲みたくないですね」
思わず漏れた愚痴にリュカ様が目を丸くして私を見た。何ですか。私は未成年ですからお酒は飲みませんよ。
「今の言い方は飲んだ事が無いのか?」
「まだ未成年ですから。来年にならないと飲めません」
素直に答えれば何故かリュカ様が青ざめた表情になる。そんな姿を見てソフィア様は背中を丸めて笑っているし、リュカ様は話さないから私は何に驚いているのか理解出来ずに首を傾げた。
「あの何か問題でも?」
「未成年……学園への入学は十六、成人してからじゃないのか?」
「魔力が強いので十三で入学してます。実技試験に合格すれば卒業なんです」
「卒業って普通なら四・五年掛かるはず」
普通ならそうらしい。私は父が入学前から勉強漬けにしたのもあって座学は問題なかったけど、実技の方が全く出来なくて卒業出来ずにいるだけ。あら?アラン先生から何も聞いてなかったのかしら。
リュカ様の態度を見て首を傾げていると、ソフィア様は呆然としているリュカ様の肩をポンッと叩くと、押し退ける様に移動させて私の目の前に顔を出した。リュカ様は何に驚いているのかしら?それにソフィア様は一人、楽しそうなんだけど。
「サイオスの歳は?」
「二十三です」
「リュカより歳下なのに、うちの脳筋とは大違いだねぇ。ルナ、うちの馬鹿の事は気にしなくて良い。今日はこのまま休んで明日しよう」
ソフィア様の言葉を聞いて頷くと、私はドラゴンちゃんと一緒に部屋に戻った。あら?また脳筋って言ってたけど、あれってリュカ様の事だったのね。そんな事を考えながら階段を登っただけで私は息が切れた。部屋のベッドに腰掛けると、ゆっくりと息を吐き出し呼吸を整える。
はあ、ソフィア様を疑う訳じゃないけど、魔力酔い以外にも何かあるんじゃないかと心配になってきたわ。呪具が壊れてから自分の体調がおかしいわ。
「キュー」
「心配かけてごめんね。明日には元気になるからね」
「キュ‼」
私の言葉に元気よく返事をするドラゴンちゃんの頭を撫でると嬉しそうに目を細めた後、ネグルが谷から持って来てくれた魔結晶をボリボリと噛り飲み込んでいた。契約して私が魔力をあげれば魔結晶も少しですむし成長も進むと聞いたけど、こんなに不安定な魔力で大丈夫かしら……何だか心配になってきたわ。ソフィア様も翁さんも契約する事で逆に安定するって言うけど……
「そう言えば」
グルグルと考え込んでいたら翁さんに渡された逆鱗の事を思い出した。確か魔力のコントロールに役立つって言われたけどどうやって使うのか聞いていなかったわ。装飾品に嵌めるのかしら。それとも別の方法があるの?自分の手首に着けている腕輪を眺めながら、取り留めもなく考えていると腕輪の内側に小さいけど透明な石が嵌められていることに初めて気付いた。
何の石かな?初めて見るわ。小さいし透明過ぎて今まで気付かなかった。角度を変えると見えなくなる謎の石を暫く眺めていたけど、体が重くなってベッドに横になった。
横にはなったけど寝る気になれなくて、腕輪の石にもう一度視線を向けた。装具の勉強は少ししかしていないから分からないけど、雪が溶けるまで外で魔法の練習も出来ないし、先ずは教科書の復習から始めようかな。
ズキズキと痛み始めた頭に、ため息を吐くとドラゴンちゃんが心配しているのか顔を覗き込んでくる。
「大丈夫よ」
ドラゴンちゃんに安心して欲しくて、そう言って頭を撫でると私の額をペロッと一舐めする。冷たい感触の後、不思議と痛みが消えて急に眠気がやってきた。
眠気に逆らわず目を閉じて暫くすると、ベッドの端に誰かが座った振動を感じた。誰が来たのか確認したくても眠気に勝てず目が開かない。部屋に入ってきた人物は私の頭を撫でると静かに部屋を出て行った。
誰の手か分からなかったけど、その手の暖かさに安心した私はそのまま意識を手放した。
「まだ体調が安定していないね」
大きな魔法を使った反動で自分の魔力に酔ってしまった私は現在、二日酔い状態。お酒を飲んだ事がないから分からないけど、眩暈と吐き気が続いていてソフィア様から許可が出ていない。
「魔力は回復しているから、明日には大丈夫だろう」
「はぁ……お酒を飲むとこんな感じになるなら飲みたくないですね」
思わず漏れた愚痴にリュカ様が目を丸くして私を見た。何ですか。私は未成年ですからお酒は飲みませんよ。
「今の言い方は飲んだ事が無いのか?」
「まだ未成年ですから。来年にならないと飲めません」
素直に答えれば何故かリュカ様が青ざめた表情になる。そんな姿を見てソフィア様は背中を丸めて笑っているし、リュカ様は話さないから私は何に驚いているのか理解出来ずに首を傾げた。
「あの何か問題でも?」
「未成年……学園への入学は十六、成人してからじゃないのか?」
「魔力が強いので十三で入学してます。実技試験に合格すれば卒業なんです」
「卒業って普通なら四・五年掛かるはず」
普通ならそうらしい。私は父が入学前から勉強漬けにしたのもあって座学は問題なかったけど、実技の方が全く出来なくて卒業出来ずにいるだけ。あら?アラン先生から何も聞いてなかったのかしら。
リュカ様の態度を見て首を傾げていると、ソフィア様は呆然としているリュカ様の肩をポンッと叩くと、押し退ける様に移動させて私の目の前に顔を出した。リュカ様は何に驚いているのかしら?それにソフィア様は一人、楽しそうなんだけど。
「サイオスの歳は?」
「二十三です」
「リュカより歳下なのに、うちの脳筋とは大違いだねぇ。ルナ、うちの馬鹿の事は気にしなくて良い。今日はこのまま休んで明日しよう」
ソフィア様の言葉を聞いて頷くと、私はドラゴンちゃんと一緒に部屋に戻った。あら?また脳筋って言ってたけど、あれってリュカ様の事だったのね。そんな事を考えながら階段を登っただけで私は息が切れた。部屋のベッドに腰掛けると、ゆっくりと息を吐き出し呼吸を整える。
はあ、ソフィア様を疑う訳じゃないけど、魔力酔い以外にも何かあるんじゃないかと心配になってきたわ。呪具が壊れてから自分の体調がおかしいわ。
「キュー」
「心配かけてごめんね。明日には元気になるからね」
「キュ‼」
私の言葉に元気よく返事をするドラゴンちゃんの頭を撫でると嬉しそうに目を細めた後、ネグルが谷から持って来てくれた魔結晶をボリボリと噛り飲み込んでいた。契約して私が魔力をあげれば魔結晶も少しですむし成長も進むと聞いたけど、こんなに不安定な魔力で大丈夫かしら……何だか心配になってきたわ。ソフィア様も翁さんも契約する事で逆に安定するって言うけど……
「そう言えば」
グルグルと考え込んでいたら翁さんに渡された逆鱗の事を思い出した。確か魔力のコントロールに役立つって言われたけどどうやって使うのか聞いていなかったわ。装飾品に嵌めるのかしら。それとも別の方法があるの?自分の手首に着けている腕輪を眺めながら、取り留めもなく考えていると腕輪の内側に小さいけど透明な石が嵌められていることに初めて気付いた。
何の石かな?初めて見るわ。小さいし透明過ぎて今まで気付かなかった。角度を変えると見えなくなる謎の石を暫く眺めていたけど、体が重くなってベッドに横になった。
横にはなったけど寝る気になれなくて、腕輪の石にもう一度視線を向けた。装具の勉強は少ししかしていないから分からないけど、雪が溶けるまで外で魔法の練習も出来ないし、先ずは教科書の復習から始めようかな。
ズキズキと痛み始めた頭に、ため息を吐くとドラゴンちゃんが心配しているのか顔を覗き込んでくる。
「大丈夫よ」
ドラゴンちゃんに安心して欲しくて、そう言って頭を撫でると私の額をペロッと一舐めする。冷たい感触の後、不思議と痛みが消えて急に眠気がやってきた。
眠気に逆らわず目を閉じて暫くすると、ベッドの端に誰かが座った振動を感じた。誰が来たのか確認したくても眠気に勝てず目が開かない。部屋に入ってきた人物は私の頭を撫でると静かに部屋を出て行った。
誰の手か分からなかったけど、その手の暖かさに安心した私はそのまま意識を手放した。
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