婚約破棄されたポンコツ魔法使い令嬢は今日も元気です!

シマ

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龍人の村編

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「この子を育てると言われましたが、どうやって育てるのでしょうか?」

 逆鱗と龍玉何て貴重な物を渡してまで育てて欲しいかもしれないけど、私は人間の子育てすら知らないしどうするのよ。

『毎日、一緒におって魔力を注ぐだけじゃ。一定量の魔力を注ぎ続けるんじゃからコントロール訓練にもなるじゃろう』

「一定量って簡単に言われても」

 困惑しながらも卵と繋がった線に魔力を流してみると、スーと卵の中に入っていく。流し続けるていると時々、弱くなったり強くなったりする事があって、そうなると卵は嫌なのか左右に揺れ五分ほどすると満足したのか繋がっていた線が消えた。
 ただ魔力を流しただけなのに全身に疲労感を感じてその場に座り込んむ。はぁー、何だろうダルい。登山よりキツイ。

『上出来、上出来。四・五時間おきに魔力をやってくれ。それだけじゃ』

「ルナ嬢、断っても良いんだ。只でさえ慣れない魔法の練習をしているのに子育てまですれば体調を崩す可能性がある」

 しゃがんで私と視線を合わせたリュカ様が心配そうな顔をしている。確かに私が育てる必要はないけど、この子の存在を知ってしまった今、見捨てるとか断るという意見は無くなった。それにこの子、卵なのに意志があるし……

「大丈夫です。体は丈夫な方ですし、この子、多分、意地でも私に着いて来そうですし」

『……ありそうじゃな』

 翁さん、否定しないんですか。まぁ、私も否定しませんけどね。リュカ様は困った様に眉を下げたけど、私の決定にそれ以上何も言わなかった。

『龍玉に魔力を流せばワシと連絡が出来る。困り事や質問があれば訪ねるが良い』

「はい、ありがとうございます。あ、今のうちに聞いておきたい事があるのですが、お時間は良いですか?」

『時間は気にせんでも良い。何が知りたい』

 気にしなくて良いなら遠慮無く。子育て中のお風呂等の目を離す時にどうしたら良いのかと、卵のお世話の期間。目を離す時はリュカ様に頼めば良いってなんてあっさり言った翁さんだったけど、期間の話は返答に困っていた。

『産まれてから約一年で殻を割るんじゃ。殻の中で何処まで成長しとるかは流石に分からんのう。何せ魔力を拒否しとったからのう』

「あらら、まだまだ時間が掛かるって考えた方が良さそうですね」

『すまんのう』

 申し訳なさそうな声に笑顔で返すと、翁さんは何だかホッとしたようだった。まぁ、表情はあまり変わらないんだけどね。他にも気になった事を聞いた後、帰りはネグルに乗せて貰う事になった。

「よっこらしょ」

 思わず年寄りくさい掛け声が出たけど、それだけ卵が重い。リュカ様が持とうと手を伸ばしたけど、何故か左右に揺れて卵に触るのを拒否されたみたい。少し驚いた様子のリュカ様は不貞腐れた様な表情を見せた。

「そこまで避けなくても良いだろう」

「何ですかね。この子、卵なのに意志がハッキリしていると言うか我が強いと言うか」

「頑固なんだろうな」

 リュカ様の話ではドラゴンは基本的に好き嫌いがハッキリしていて、一度嫌だと思うも全く受け入れないらしい。逆に一度、好きになると、ずっと好きだからどんなに振りきってもついて来るらしい。ずっとって一生?……まさかね……

「この子、私が死ぬまでついて来たりしませんよね?」

『……分からんのう』

「翁さん否定して下さいよ!」

『こればかりは産まれてみんと分からんのじゃよ。契約してお嬢ちゃんについて行くかもしれんし、ここに帰ってくるかもしれん』

 ドラゴンは一度、こうすると決めた事は回りが説得しようが、魔法で命令しようが変えないらしい。それは最早、頑固じゃなくて執念とか妄執では?先の事はこの子が産まれてから考えよう。取り敢えず

「ソフィア様の家に帰りますか」

「そうだな。翁の用事も済んだしな。鞄は俺が持つからルナ嬢は卵に集中してくれ」

「助かります。翁さん、また、会いに来ます」

『あぁ、待っとるよ。次はネグルに乗って来れるはずじゃ』

 卵で両手が塞がっている私は軽く頭を下げ別れの挨拶をした。リュカ様は 手を上げて振ると、洞窟を先導するように先を歩いて行く。帰ると言ったのは自分なのに何故か私は翁さんがの事が気になって、何度も振り返りながら洞窟を出た。洞窟の外ではすでにネグルが待ち構えていて、リュカ様に頭を擦り寄せている。あとから出てきた私に気付いて小さく鳴いたネグルは、手の中の卵に気付いて動きを止めた。

「ネグル、どうしたの?卵と一緒は嫌だった?」

「ネグル?おい、ネグル!」

 私が理由を聞いてもリュカ様が足を叩いて声を掛けても暫く動かなかったネグルが漸く動きだしたかと思うと鼻先で卵に触れてまた止まった。

「ネグルは卵を見るのは初めてですか?」

「いや、コイツの親戚に年下がいるから初めてではないはずだが……ネグル、俺達を乗せてくれ」

 リュカ様の言葉に反応してグギギと変な音がしそうなほど、ぎこちない動きで体を低くしたネグルの背中に乗ろうとして両手が塞がっている事を思い出した。どうやって乗る?

「あー、不可抗力だ。我慢してくれ」

 卵を紐で縛ろうかと考えていた私の視界がグルンと回る。何が起きたか分からずに驚いている間に、卵と一緒に私を抱き上げたリュカ様はジャンプ一つでネグルの背中に飛び乗った。……は?助かったけど、ありがたいんだけど……


一言、説明してからやって下さい!


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