30 / 91
龍人の村編
16
しおりを挟む
「この子を育てると言われましたが、どうやって育てるのでしょうか?」
逆鱗と龍玉何て貴重な物を渡してまで育てて欲しいかもしれないけど、私は人間の子育てすら知らないしどうするのよ。
『毎日、一緒におって魔力を注ぐだけじゃ。一定量の魔力を注ぎ続けるんじゃからコントロール訓練にもなるじゃろう』
「一定量って簡単に言われても」
困惑しながらも卵と繋がった線に魔力を流してみると、スーと卵の中に入っていく。流し続けるていると時々、弱くなったり強くなったりする事があって、そうなると卵は嫌なのか左右に揺れ五分ほどすると満足したのか繋がっていた線が消えた。
ただ魔力を流しただけなのに全身に疲労感を感じてその場に座り込んむ。はぁー、何だろうダルい。登山よりキツイ。
『上出来、上出来。四・五時間おきに魔力をやってくれ。それだけじゃ』
「ルナ嬢、断っても良いんだ。只でさえ慣れない魔法の練習をしているのに子育てまですれば体調を崩す可能性がある」
しゃがんで私と視線を合わせたリュカ様が心配そうな顔をしている。確かに私が育てる必要はないけど、この子の存在を知ってしまった今、見捨てるとか断るという意見は無くなった。それにこの子、卵なのに意志があるし……
「大丈夫です。体は丈夫な方ですし、この子、多分、意地でも私に着いて来そうですし」
『……ありそうじゃな』
翁さん、否定しないんですか。まぁ、私も否定しませんけどね。リュカ様は困った様に眉を下げたけど、私の決定にそれ以上何も言わなかった。
『龍玉に魔力を流せばワシと連絡が出来る。困り事や質問があれば訪ねるが良い』
「はい、ありがとうございます。あ、今のうちに聞いておきたい事があるのですが、お時間は良いですか?」
『時間は気にせんでも良い。何が知りたい』
気にしなくて良いなら遠慮無く。子育て中のお風呂等の目を離す時にどうしたら良いのかと、卵のお世話の期間。目を離す時はリュカ様に頼めば良いってなんてあっさり言った翁さんだったけど、期間の話は返答に困っていた。
『産まれてから約一年で殻を割るんじゃ。殻の中で何処まで成長しとるかは流石に分からんのう。何せ魔力を拒否しとったからのう』
「あらら、まだまだ時間が掛かるって考えた方が良さそうですね」
『すまんのう』
申し訳なさそうな声に笑顔で返すと、翁さんは何だかホッとしたようだった。まぁ、表情はあまり変わらないんだけどね。他にも気になった事を聞いた後、帰りはネグルに乗せて貰う事になった。
「よっこらしょ」
思わず年寄りくさい掛け声が出たけど、それだけ卵が重い。リュカ様が持とうと手を伸ばしたけど、何故か左右に揺れて卵に触るのを拒否されたみたい。少し驚いた様子のリュカ様は不貞腐れた様な表情を見せた。
「そこまで避けなくても良いだろう」
「何ですかね。この子、卵なのに意志がハッキリしていると言うか我が強いと言うか」
「頑固なんだろうな」
リュカ様の話ではドラゴンは基本的に好き嫌いがハッキリしていて、一度嫌だと思うも全く受け入れないらしい。逆に一度、好きになると、ずっと好きだからどんなに振りきってもついて来るらしい。ずっとって一生?……まさかね……
「この子、私が死ぬまでついて来たりしませんよね?」
『……分からんのう』
「翁さん否定して下さいよ!」
『こればかりは産まれてみんと分からんのじゃよ。契約してお嬢ちゃんについて行くかもしれんし、ここに帰ってくるかもしれん』
ドラゴンは一度、こうすると決めた事は回りが説得しようが、魔法で命令しようが変えないらしい。それは最早、頑固じゃなくて執念とか妄執では?先の事はこの子が産まれてから考えよう。取り敢えず
「ソフィア様の家に帰りますか」
「そうだな。翁の用事も済んだしな。鞄は俺が持つからルナ嬢は卵に集中してくれ」
「助かります。翁さん、また、会いに来ます」
『あぁ、待っとるよ。次はネグルに乗って来れるはずじゃ』
卵で両手が塞がっている私は軽く頭を下げ別れの挨拶をした。リュカ様は 手を上げて振ると、洞窟を先導するように先を歩いて行く。帰ると言ったのは自分なのに何故か私は翁さんがの事が気になって、何度も振り返りながら洞窟を出た。洞窟の外ではすでにネグルが待ち構えていて、リュカ様に頭を擦り寄せている。あとから出てきた私に気付いて小さく鳴いたネグルは、手の中の卵に気付いて動きを止めた。
「ネグル、どうしたの?卵と一緒は嫌だった?」
「ネグル?おい、ネグル!」
私が理由を聞いてもリュカ様が足を叩いて声を掛けても暫く動かなかったネグルが漸く動きだしたかと思うと鼻先で卵に触れてまた止まった。
「ネグルは卵を見るのは初めてですか?」
「いや、コイツの親戚に年下がいるから初めてではないはずだが……ネグル、俺達を乗せてくれ」
リュカ様の言葉に反応してグギギと変な音がしそうなほど、ぎこちない動きで体を低くしたネグルの背中に乗ろうとして両手が塞がっている事を思い出した。どうやって乗る?
「あー、不可抗力だ。我慢してくれ」
卵を紐で縛ろうかと考えていた私の視界がグルンと回る。何が起きたか分からずに驚いている間に、卵と一緒に私を抱き上げたリュカ様はジャンプ一つでネグルの背中に飛び乗った。……は?助かったけど、ありがたいんだけど……
一言、説明してからやって下さい!
逆鱗と龍玉何て貴重な物を渡してまで育てて欲しいかもしれないけど、私は人間の子育てすら知らないしどうするのよ。
『毎日、一緒におって魔力を注ぐだけじゃ。一定量の魔力を注ぎ続けるんじゃからコントロール訓練にもなるじゃろう』
「一定量って簡単に言われても」
困惑しながらも卵と繋がった線に魔力を流してみると、スーと卵の中に入っていく。流し続けるていると時々、弱くなったり強くなったりする事があって、そうなると卵は嫌なのか左右に揺れ五分ほどすると満足したのか繋がっていた線が消えた。
ただ魔力を流しただけなのに全身に疲労感を感じてその場に座り込んむ。はぁー、何だろうダルい。登山よりキツイ。
『上出来、上出来。四・五時間おきに魔力をやってくれ。それだけじゃ』
「ルナ嬢、断っても良いんだ。只でさえ慣れない魔法の練習をしているのに子育てまですれば体調を崩す可能性がある」
しゃがんで私と視線を合わせたリュカ様が心配そうな顔をしている。確かに私が育てる必要はないけど、この子の存在を知ってしまった今、見捨てるとか断るという意見は無くなった。それにこの子、卵なのに意志があるし……
「大丈夫です。体は丈夫な方ですし、この子、多分、意地でも私に着いて来そうですし」
『……ありそうじゃな』
翁さん、否定しないんですか。まぁ、私も否定しませんけどね。リュカ様は困った様に眉を下げたけど、私の決定にそれ以上何も言わなかった。
『龍玉に魔力を流せばワシと連絡が出来る。困り事や質問があれば訪ねるが良い』
「はい、ありがとうございます。あ、今のうちに聞いておきたい事があるのですが、お時間は良いですか?」
『時間は気にせんでも良い。何が知りたい』
気にしなくて良いなら遠慮無く。子育て中のお風呂等の目を離す時にどうしたら良いのかと、卵のお世話の期間。目を離す時はリュカ様に頼めば良いってなんてあっさり言った翁さんだったけど、期間の話は返答に困っていた。
『産まれてから約一年で殻を割るんじゃ。殻の中で何処まで成長しとるかは流石に分からんのう。何せ魔力を拒否しとったからのう』
「あらら、まだまだ時間が掛かるって考えた方が良さそうですね」
『すまんのう』
申し訳なさそうな声に笑顔で返すと、翁さんは何だかホッとしたようだった。まぁ、表情はあまり変わらないんだけどね。他にも気になった事を聞いた後、帰りはネグルに乗せて貰う事になった。
「よっこらしょ」
思わず年寄りくさい掛け声が出たけど、それだけ卵が重い。リュカ様が持とうと手を伸ばしたけど、何故か左右に揺れて卵に触るのを拒否されたみたい。少し驚いた様子のリュカ様は不貞腐れた様な表情を見せた。
「そこまで避けなくても良いだろう」
「何ですかね。この子、卵なのに意志がハッキリしていると言うか我が強いと言うか」
「頑固なんだろうな」
リュカ様の話ではドラゴンは基本的に好き嫌いがハッキリしていて、一度嫌だと思うも全く受け入れないらしい。逆に一度、好きになると、ずっと好きだからどんなに振りきってもついて来るらしい。ずっとって一生?……まさかね……
「この子、私が死ぬまでついて来たりしませんよね?」
『……分からんのう』
「翁さん否定して下さいよ!」
『こればかりは産まれてみんと分からんのじゃよ。契約してお嬢ちゃんについて行くかもしれんし、ここに帰ってくるかもしれん』
ドラゴンは一度、こうすると決めた事は回りが説得しようが、魔法で命令しようが変えないらしい。それは最早、頑固じゃなくて執念とか妄執では?先の事はこの子が産まれてから考えよう。取り敢えず
「ソフィア様の家に帰りますか」
「そうだな。翁の用事も済んだしな。鞄は俺が持つからルナ嬢は卵に集中してくれ」
「助かります。翁さん、また、会いに来ます」
『あぁ、待っとるよ。次はネグルに乗って来れるはずじゃ』
卵で両手が塞がっている私は軽く頭を下げ別れの挨拶をした。リュカ様は 手を上げて振ると、洞窟を先導するように先を歩いて行く。帰ると言ったのは自分なのに何故か私は翁さんがの事が気になって、何度も振り返りながら洞窟を出た。洞窟の外ではすでにネグルが待ち構えていて、リュカ様に頭を擦り寄せている。あとから出てきた私に気付いて小さく鳴いたネグルは、手の中の卵に気付いて動きを止めた。
「ネグル、どうしたの?卵と一緒は嫌だった?」
「ネグル?おい、ネグル!」
私が理由を聞いてもリュカ様が足を叩いて声を掛けても暫く動かなかったネグルが漸く動きだしたかと思うと鼻先で卵に触れてまた止まった。
「ネグルは卵を見るのは初めてですか?」
「いや、コイツの親戚に年下がいるから初めてではないはずだが……ネグル、俺達を乗せてくれ」
リュカ様の言葉に反応してグギギと変な音がしそうなほど、ぎこちない動きで体を低くしたネグルの背中に乗ろうとして両手が塞がっている事を思い出した。どうやって乗る?
「あー、不可抗力だ。我慢してくれ」
卵を紐で縛ろうかと考えていた私の視界がグルンと回る。何が起きたか分からずに驚いている間に、卵と一緒に私を抱き上げたリュカ様はジャンプ一つでネグルの背中に飛び乗った。……は?助かったけど、ありがたいんだけど……
一言、説明してからやって下さい!
11
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?
gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。
みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。
黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。
十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。
家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。
奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。
公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜
星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」
「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」
公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。
* エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました
砂礫レキ
恋愛
公爵令嬢エミア・シュタイトは婚約者である第二王子アリオス・ルーンファクトを心から愛していた。
けれど幼い頃からの恋心をアリオスは手酷く否定し続ける。その度にエミアの心は傷つき自己嫌悪が深くなっていった。
そして婚約から十年経った時「お前は俺の子を産むだけの存在にしか過ぎない」とアリオスに言われエミアの自尊心は限界を迎える。
消えてしまいたいと強く願った彼女は己の人格と引き換えに前世の記憶を取り戻した。
救国の聖女「エミヤ」の記憶を。
表紙は三日月アルペジオ様からお借りしています。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる