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龍人の村編
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ゆっくり休んだ翌日の早朝。太陽が顔を出してまもなくリュカ様と共にドラゴン達が棲む谷に向かって歩き出した。谷に行くには徒歩か、契約しているドラゴンの背中に乗って一緒に行くの二つしかない。私は契約していないので前者の徒歩を選択する事になった。
「ルナ嬢がズボンを持ってて良かったよ」
「学園の訓練で一人登山とかあったので無意識に持ってきてました」
「一人登山?」
山に不馴れな私の為にゆっくりと山を登るリュカ様が、立ち止まり後ろにいる私に視線を向けた。その顔には驚きというよりあり得ないと書いてあった。あれ?騎士の学校にはないのかな。
「授業の中に体力作りも兼ねた登山があって、学園裏にあるテヤル山とか隣街のユキア山も登りました」
「いや、登山授業は知ってる。ただ、危険だから複数で行う決まりになっているはずだ」
「へ?」
リュカ様の言葉に驚き過ぎて変な声が出てしまった。複数で行う?え~もしかして、それも嫌がらせだったのかなぁ。まぁ、無事に帰れたし体力ついたから良いけど。
暢気にそんな事を考えていると、前を向き歩き出したリュカ様は昨日、私が気絶していた間にアラン先生から聞いた話を教えてくれた。
「ルナ嬢への嫌がらせというか差別は異常だし危険だ。授業連絡不備やテストの不正以外にも問題が出てきたから学問統括部長の王弟殿下に報告を上げてたと言っていた」
「そんなに危険だったんですか?」
「大まかにしか聞いていないが、おそらく一人での登山も嫌がらせの一つだろう。無事で良かった」
リュカ様の言葉を聞いて思い出したのは、頂上で講師と合流した時の彼らの表情。凄く複雑な表情をしていた彼らは、もしかしたら、無事に登山を終えた安堵と罪悪感が入り交じっていたのかもしれない。でも、複数で行う決まりなら、知らないで一人でした私はどうなるの?問題あり?
「決まりを破った私もお咎めがありますかね?」
「いや、騙されたルナ嬢にはないな。ただ、講師はよくて免職。最悪、懲戒解雇と投獄だな」
“騙された”その一言でも驚いたけど、思ったより大事になりそうな事を言われて引いた。講師でこれならエリザベスはどうなるかもなぁ。彼女、攻撃特化型だけど実力もあるし重い罰にならないで欲しいな。私が口を挟むと逆に彼女は怒りそうだけどね。
途中、休憩したりこの山にしか生えていない薬草を取ったりしながら登る事、約一時間。濃い霧に覆われた谷の上に到着した。事前に濃い霧は目眩ましの結界と聞いてはいたけど、一人で来たら足を踏み入れる事はないと思えるほど先が見えない。目印の木の側を通らないと谷の底にいるドラゴン達に会えない様になっているらしい。
「はぐれるといけないから」
そう言って差し出されたリュカ様の手に自分の手を乗せると一歩踏み出した。濃い霧はリュカ様の姿まで消してしまって手を離したら間違いなく迷子になる。長い様で短い霧を抜けると目の前には緑溢れる大きな谷が広がっている。かなり深いこの谷は昔、怪我をしたドラゴンが偶然見つけた場所らしい。リュカ様に手を引かれて岩肌を削って作られた階段を下りて行くと、時々、岩壁の穴からドラゴンが顔を出した。
「ドラゴンって色々な色をしているんですね」
「あぁ、魔力の属性によって変わるんだ。因みにネグルは闇だ」
一般的な五属性に合わせて火は赤。風は緑。土は茶。雷は黄。水は青。それとは別にネグルの様な黒い闇属性や金色の光属性が希にいるんだとか。金色……目が痛くなりそうな響きね。白じゃないんだ。学園の上空を緑色のドラゴンが通り過ぎた事があったけど、風属性だったのかも。
ドラゴンについて質問しているうちに最下層に到着したけど、上から見るより背の高い木々に視界を奪われ現在地が把握出来ない。リュカ様が谷底の森に足を踏み入れると、木々の枝が揺れ分かれ道が出来た。
「え?道なんて無かったのに」
「翁だよ。このまま進めば大丈夫」
何か確信があるのか大丈夫と断言したリュカ様の後ろに続いて私も森を歩き出す。サラサラと葉が揺れる道をかなり奥まで進んだところで、大きな洞窟の前に出た。
ソフィア様の家が五個は入りそう。ここが翁さんの家?
「ルナ嬢は、ドラゴンが怖くないのか?」
リュカ様の質問に少しだけ今更と思って笑えた。ここに来る途中に何体ものドラゴンに会ったのに、怖かったら……
「怖かったら今頃、泣き叫んでますよ」
思った事を素直に言葉にすると、リュカ様は困った様に眉を下げた。
「あ、まぁ、そうなんだが翁は体が大きいだけで心優しいドラゴンだ。逃げないで話を聞いて欲しい」
何それ、会った瞬間に驚いて逃げたくなるって事?いや、いや、いや、大袈裟…………ですよね?
「ルナ嬢がズボンを持ってて良かったよ」
「学園の訓練で一人登山とかあったので無意識に持ってきてました」
「一人登山?」
山に不馴れな私の為にゆっくりと山を登るリュカ様が、立ち止まり後ろにいる私に視線を向けた。その顔には驚きというよりあり得ないと書いてあった。あれ?騎士の学校にはないのかな。
「授業の中に体力作りも兼ねた登山があって、学園裏にあるテヤル山とか隣街のユキア山も登りました」
「いや、登山授業は知ってる。ただ、危険だから複数で行う決まりになっているはずだ」
「へ?」
リュカ様の言葉に驚き過ぎて変な声が出てしまった。複数で行う?え~もしかして、それも嫌がらせだったのかなぁ。まぁ、無事に帰れたし体力ついたから良いけど。
暢気にそんな事を考えていると、前を向き歩き出したリュカ様は昨日、私が気絶していた間にアラン先生から聞いた話を教えてくれた。
「ルナ嬢への嫌がらせというか差別は異常だし危険だ。授業連絡不備やテストの不正以外にも問題が出てきたから学問統括部長の王弟殿下に報告を上げてたと言っていた」
「そんなに危険だったんですか?」
「大まかにしか聞いていないが、おそらく一人での登山も嫌がらせの一つだろう。無事で良かった」
リュカ様の言葉を聞いて思い出したのは、頂上で講師と合流した時の彼らの表情。凄く複雑な表情をしていた彼らは、もしかしたら、無事に登山を終えた安堵と罪悪感が入り交じっていたのかもしれない。でも、複数で行う決まりなら、知らないで一人でした私はどうなるの?問題あり?
「決まりを破った私もお咎めがありますかね?」
「いや、騙されたルナ嬢にはないな。ただ、講師はよくて免職。最悪、懲戒解雇と投獄だな」
“騙された”その一言でも驚いたけど、思ったより大事になりそうな事を言われて引いた。講師でこれならエリザベスはどうなるかもなぁ。彼女、攻撃特化型だけど実力もあるし重い罰にならないで欲しいな。私が口を挟むと逆に彼女は怒りそうだけどね。
途中、休憩したりこの山にしか生えていない薬草を取ったりしながら登る事、約一時間。濃い霧に覆われた谷の上に到着した。事前に濃い霧は目眩ましの結界と聞いてはいたけど、一人で来たら足を踏み入れる事はないと思えるほど先が見えない。目印の木の側を通らないと谷の底にいるドラゴン達に会えない様になっているらしい。
「はぐれるといけないから」
そう言って差し出されたリュカ様の手に自分の手を乗せると一歩踏み出した。濃い霧はリュカ様の姿まで消してしまって手を離したら間違いなく迷子になる。長い様で短い霧を抜けると目の前には緑溢れる大きな谷が広がっている。かなり深いこの谷は昔、怪我をしたドラゴンが偶然見つけた場所らしい。リュカ様に手を引かれて岩肌を削って作られた階段を下りて行くと、時々、岩壁の穴からドラゴンが顔を出した。
「ドラゴンって色々な色をしているんですね」
「あぁ、魔力の属性によって変わるんだ。因みにネグルは闇だ」
一般的な五属性に合わせて火は赤。風は緑。土は茶。雷は黄。水は青。それとは別にネグルの様な黒い闇属性や金色の光属性が希にいるんだとか。金色……目が痛くなりそうな響きね。白じゃないんだ。学園の上空を緑色のドラゴンが通り過ぎた事があったけど、風属性だったのかも。
ドラゴンについて質問しているうちに最下層に到着したけど、上から見るより背の高い木々に視界を奪われ現在地が把握出来ない。リュカ様が谷底の森に足を踏み入れると、木々の枝が揺れ分かれ道が出来た。
「え?道なんて無かったのに」
「翁だよ。このまま進めば大丈夫」
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「怖かったら今頃、泣き叫んでますよ」
思った事を素直に言葉にすると、リュカ様は困った様に眉を下げた。
「あ、まぁ、そうなんだが翁は体が大きいだけで心優しいドラゴンだ。逃げないで話を聞いて欲しい」
何それ、会った瞬間に驚いて逃げたくなるって事?いや、いや、いや、大袈裟…………ですよね?
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