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龍人の村編
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目を覚ますとソファーに寝かされていた私の腕に新しい腕輪がつけられていた。あら、可愛い。私の好きな花だわ。
「気付いたかい」
ぼんやりと腕輪を見ていた私に先に声を掛けたのはソフィア様で、その後ろにはリュカ様もいる。この状態からすると私、また倒れたの?
「すみません。ご迷惑お掛けしました」
慌てて謝罪する私を手で制したソフィア様は静かに首を横に降った。
「気にしなくていい。それよりここに来る前に何があった?」
「何がって」
「学園で何か言われたり意地悪されたりしなかったかい?」
学園の事を聞かれて驚いたけど、隠しても仕方ないから“ポンコツ魔法使い”と呼ばれていた事やテストの回答が不正に消された事を話した。でも、急にどうして?
「ルナ、あんたはね自分の魔力で自分を傷つけているだよ」
ソフィア様が教えてくれたのは、魔力が強くなりすぎて身体の内側から壊そうとしている事。そして、それは私自身の心の問題でもある事だった。
「心の問題」
「そうさ、だからあんたは自分を卑下しちゃいけないよ。魔力が高いから魔法使いにならないといけない訳じゃないんだ」
「え、でも」
言いたい事がありすぎて言葉にならない。だって、だって……
お父様は私の魔力量が多いから
侯爵様は侯爵家にとって名誉な事だから
講師達は魔法陣までは成功しているから
『魔法使いになりなさい』
ずっと幼い頃から言われていたわ。周りの人も期待していたわ。でも、一度も魔法が発動しないから次第に私から離れて行ったわ。そう皆、最後には“ポンコツ魔法使い”は必要ないって……
「私は練習しても無駄だから魔法使いにならなくて良いって事ですか?」
グルグルと考えてポロリと溢れた言葉は、ここに来る前にお父様に言われてからずっと疑問だった。どうしてならなくていいの?ポンコツで魔法使いになれないから“ならなくていい”の?
「そりゃ違う」
「でも、私はポンコツだから魔法を発動出来ないですし」
「それも違う。魔法が使えなかったのは呪具のせい。あんたは何も悪くない。さっき、ちゃんと魔法が発動したじゃないか。ルナは何も悪くないんだよ」
ソフィア様の言葉を聞いて肩の力が抜けた。そうか私のせいじゃなかったんだ。努力が足りない訳でもやる気がない訳でもなくて、本当に呪具のせいだったんだ。そう思えたらポロポロ涙が溢れだして止まらなくなった。
「もう私、ポンコツじゃない?魔法使える?」
「そんな言葉、二度と言わせやしないよ。そんな事を言う奴がいたら私がお仕置きしてやるよ」
ニヤリと笑うソフィア様は頼もしくもあるけど、やりずきそうでちょっと怖い。そう思っていたらリュカ様がハンカチを渡してくれた。
「婆さんはやりずきるから俺が仕返ししてやる」
“俺が仕返しする”と聞いて驚いてリュカ様の顔を見上げると、私に向けて得意気な表情をしていた。やりずきるから?……確かにソフィア様が相手を魔法でボコボコに打ちのめす姿しか思い浮かばないわ。
「フフ、ソフィア様なら相手がボロボロになるまでやりそう」
「そう思うだろう。治療のお礼と嘘をついた詫びだと思って、何時でも言ってくれ」
リュカ様が腕を組み胸を張って堂々と言ってくれて、そんな彼の態度にまた笑った。久しぶりに家族以外と楽しい会話をした気がする。
「ルナ、一つ提案なんだが、あんたドラゴンと契約しないかい?」
「え?契約って使い魔契約みたいなものですか?」
使い魔契約なら授業で習ったし、実際に学園内で連れている人もいたわ。確か契約専用魔法陣で呼び掛けて、応えて出てきた魔物と契約するんだったよね。契約には対価が必要で、魔力だったり宝石だったり魔物によって要求が違うから、確認してから契約する事って教科書には書いていたわね。
「いや、ドラゴンだけはちょっと違うんだよ」
ドラゴンと契約するには相手と仲良くなる事が第一条件。
次にドラゴンのご飯と会話をする為の大きな魔力。
この二つが揃って初めて契約交渉が出来るらしい。それって初めて会う私にはかなり厳しい条件じゃない?魔力はともかく仲良くならなきゃダメなんでしょう?
「ネグルに初対面で気に入られていたし、爺さんが呼んでるから大丈夫さ」
「呼んでるって何の話ですか」
詳しく話を聞くと私の魔力に気付いたドラゴンの翁と呼ばれている最長老が呼んでいるらしい。最長老って何歳?何て暢気に考えていたら、体が大きすぎて村に来ると建物を壊すって言うから引いた。
「えっと、家一軒より大きなドラゴンさんですか……想像つかないです」
「そうさね、この家三軒分はあるかね。大丈夫、図体がデカイだけの爺さんだよ。明日、リュカと一緒に行ってきな」
ソフィア様、家三軒分はデカイだけですまないと思います。
「気付いたかい」
ぼんやりと腕輪を見ていた私に先に声を掛けたのはソフィア様で、その後ろにはリュカ様もいる。この状態からすると私、また倒れたの?
「すみません。ご迷惑お掛けしました」
慌てて謝罪する私を手で制したソフィア様は静かに首を横に降った。
「気にしなくていい。それよりここに来る前に何があった?」
「何がって」
「学園で何か言われたり意地悪されたりしなかったかい?」
学園の事を聞かれて驚いたけど、隠しても仕方ないから“ポンコツ魔法使い”と呼ばれていた事やテストの回答が不正に消された事を話した。でも、急にどうして?
「ルナ、あんたはね自分の魔力で自分を傷つけているだよ」
ソフィア様が教えてくれたのは、魔力が強くなりすぎて身体の内側から壊そうとしている事。そして、それは私自身の心の問題でもある事だった。
「心の問題」
「そうさ、だからあんたは自分を卑下しちゃいけないよ。魔力が高いから魔法使いにならないといけない訳じゃないんだ」
「え、でも」
言いたい事がありすぎて言葉にならない。だって、だって……
お父様は私の魔力量が多いから
侯爵様は侯爵家にとって名誉な事だから
講師達は魔法陣までは成功しているから
『魔法使いになりなさい』
ずっと幼い頃から言われていたわ。周りの人も期待していたわ。でも、一度も魔法が発動しないから次第に私から離れて行ったわ。そう皆、最後には“ポンコツ魔法使い”は必要ないって……
「私は練習しても無駄だから魔法使いにならなくて良いって事ですか?」
グルグルと考えてポロリと溢れた言葉は、ここに来る前にお父様に言われてからずっと疑問だった。どうしてならなくていいの?ポンコツで魔法使いになれないから“ならなくていい”の?
「そりゃ違う」
「でも、私はポンコツだから魔法を発動出来ないですし」
「それも違う。魔法が使えなかったのは呪具のせい。あんたは何も悪くない。さっき、ちゃんと魔法が発動したじゃないか。ルナは何も悪くないんだよ」
ソフィア様の言葉を聞いて肩の力が抜けた。そうか私のせいじゃなかったんだ。努力が足りない訳でもやる気がない訳でもなくて、本当に呪具のせいだったんだ。そう思えたらポロポロ涙が溢れだして止まらなくなった。
「もう私、ポンコツじゃない?魔法使える?」
「そんな言葉、二度と言わせやしないよ。そんな事を言う奴がいたら私がお仕置きしてやるよ」
ニヤリと笑うソフィア様は頼もしくもあるけど、やりずきそうでちょっと怖い。そう思っていたらリュカ様がハンカチを渡してくれた。
「婆さんはやりずきるから俺が仕返ししてやる」
“俺が仕返しする”と聞いて驚いてリュカ様の顔を見上げると、私に向けて得意気な表情をしていた。やりずきるから?……確かにソフィア様が相手を魔法でボコボコに打ちのめす姿しか思い浮かばないわ。
「フフ、ソフィア様なら相手がボロボロになるまでやりそう」
「そう思うだろう。治療のお礼と嘘をついた詫びだと思って、何時でも言ってくれ」
リュカ様が腕を組み胸を張って堂々と言ってくれて、そんな彼の態度にまた笑った。久しぶりに家族以外と楽しい会話をした気がする。
「ルナ、一つ提案なんだが、あんたドラゴンと契約しないかい?」
「え?契約って使い魔契約みたいなものですか?」
使い魔契約なら授業で習ったし、実際に学園内で連れている人もいたわ。確か契約専用魔法陣で呼び掛けて、応えて出てきた魔物と契約するんだったよね。契約には対価が必要で、魔力だったり宝石だったり魔物によって要求が違うから、確認してから契約する事って教科書には書いていたわね。
「いや、ドラゴンだけはちょっと違うんだよ」
ドラゴンと契約するには相手と仲良くなる事が第一条件。
次にドラゴンのご飯と会話をする為の大きな魔力。
この二つが揃って初めて契約交渉が出来るらしい。それって初めて会う私にはかなり厳しい条件じゃない?魔力はともかく仲良くならなきゃダメなんでしょう?
「ネグルに初対面で気に入られていたし、爺さんが呼んでるから大丈夫さ」
「呼んでるって何の話ですか」
詳しく話を聞くと私の魔力に気付いたドラゴンの翁と呼ばれている最長老が呼んでいるらしい。最長老って何歳?何て暢気に考えていたら、体が大きすぎて村に来ると建物を壊すって言うから引いた。
「えっと、家一軒より大きなドラゴンさんですか……想像つかないです」
「そうさね、この家三軒分はあるかね。大丈夫、図体がデカイだけの爺さんだよ。明日、リュカと一緒に行ってきな」
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