婚約破棄されたポンコツ魔法使い令嬢は今日も元気です!

シマ

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龍人の村編

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「間違えちゃいないよ。あんたは初級の魔法陣で上級と同じ効果を出したんだよ」

 ソフィア様言葉が理解できずにいる私は、リュカ様に助けを求めるように視線を向けると困った様に眉を下げていた。えー、本当にどうもないのに、何なのよ……

「今の回復で古い傷跡まで消えてしまった」

 一瞬、何を言われたか理解できずにいたけど、後からジワリと理解が追い付く。古傷の跡が消えたって、逆に言えば跡が残るくらい酷い傷が癒えたって事よね。え?初級の魔法陣で消えないよね。どういう事?

「まだ、分からないのかい。まったく鈍いねぇ。ルナの流す魔力が多すぎたんだよもっと少なくしな」

「……少なくって言われても……」

「なんだい問題でもあんのかい?」

「魔力の量を少なくするとか抑える練習はしたことがないです」

 ソフィア様は口が開いたままになって動かないし、リュカ様はなんていうか目が点になってしまった。どうしよう。魔力を多く流す練習はしていたけど。

「アランの授業では何を中心にしていましたか?」

 リュカ様の話し方に違和感を感じながらも、正直に答えようと思い出す。大舞踏会前の最後の授業は攻撃魔法を復習していた事。初級からやり直してみたけど魔法陣が消えてしまうので魔力を多く流す練習をしていた事を説明した。

「魔法陣が消えていた原因は、魔力の不足か不安定と考えていたと」

 リュカ様の言葉に私が頷くと、ソフィア様が額に手をあてて考え込み、リュカ様も腕を組んで唸っている。私だけ何が問題なのか分からずに戸惑っていると、ソフィア様が棚の中から裁縫に使いそうな細い糸と太いロープを取り出した。

「魔力を糸に例えれば分かるかい?初級の魔法陣に使う魔力はこれくらい」

 そう言って先ほど取り出した糸を目の前のテーブルに置いた。

「あんたが使った魔力は上級の魔法陣に使う荷馬車に荷物を固定する時に使うロープくらいだよ」

 そう言って糸の横にロープを置く。

髪の毛の様に細い糸と私の親指程ある太いロープ。

 目に見える形で違いを説明されて納得したけど、今以上に魔力を弱くするって言われても、どうして良いかよく分からない。そんな私の気持ちが顔に出ていたのか、ソフィア様は深いため息を吐き出した。

「魔力を抑える……困ったねぇ」

「アランに確認しますか?」

「そうだねぇ、授業内容の確認したいからアランに連絡するかね。通信機持ってきておくれ」

 頷いて了承したリュカ様が奥の部屋に入る背中を見ながら私は、ただただ混乱していた。今までの授業や補習では、魔法陣に流す魔力の不足を指摘されていたのに多すぎって今更、逆の事を言われても……

「ルナ、さっきの回復魔法より少ない魔力で明かりを作れるかい?」

 そう言ってソフィア様が左の手のひらに丸い明かりを作って見せてくれた。冒険者活動や魔物討伐の時に必須の魔法で、最初に学ぶ魔法の一つ。最初に学ぶって言っても成功したことはないけど。

「やってみます……“明かり”」

 さっきの回復より魔法陣を小さく作ってみたけど、魔法が発動すると私の手のひらの二倍ほどの大きさに膨らんだ。

「あれ?」

「はぁ……こりゃ参ったよ」

 リュカ様が通信機を持って部屋に戻って来たけど、私の手のひらの明かりを見て動きを止めたから直ぐに消した。えー、やっぱりこの大きさは変なのね。

「さぁて、どうしたもんかね」

 そう言いながら通信機を操作するソフィア様を見ながら、私の中で少しずつ不安が膨らんでくる。回復し過ぎると問題無いのかな?逆に疲れたりしないのかな?

 一度、気になると次から次に疑問が浮かぶ。リュカ様の体調が気になって仕方ない私は、本人に確認しようとリュカ様に視線を向けると彼は何故か一歩下がる。その態度が余計に不安を煽って焦りを感じた時、私の手からバキッと何かが割れる音が聞こえた。
 室内に響いた音に二人の視線が私に集中する中で、フリューゲル団長から渡された腕輪に亀裂が入っていた。

「……ケビンの魔力封じが持たないのかい」

「あ、あれ?一週間は大丈夫じゃなかったの?」

「そのはずだったが……ルナ嬢!?」

 リュカ様が何か話している途中から私の記憶はなくなった。


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