24 / 91
龍人の村編
11
しおりを挟む
「間違えちゃいないよ。あんたは初級の魔法陣で上級と同じ効果を出したんだよ」
ソフィア様言葉が理解できずにいる私は、リュカ様に助けを求めるように視線を向けると困った様に眉を下げていた。えー、本当にどうもないのに、何なのよ……
「今の回復で古い傷跡まで消えてしまった」
一瞬、何を言われたか理解できずにいたけど、後からジワリと理解が追い付く。古傷の跡が消えたって、逆に言えば跡が残るくらい酷い傷が癒えたって事よね。え?初級の魔法陣で消えないよね。どういう事?
「まだ、分からないのかい。まったく鈍いねぇ。ルナの流す魔力が多すぎたんだよもっと少なくしな」
「……少なくって言われても……」
「なんだい問題でもあんのかい?」
「魔力の量を少なくするとか抑える練習はしたことがないです」
ソフィア様は口が開いたままになって動かないし、リュカ様はなんていうか目が点になってしまった。どうしよう。魔力を多く流す練習はしていたけど。
「アランの授業では何を中心にしていましたか?」
リュカ様の話し方に違和感を感じながらも、正直に答えようと思い出す。大舞踏会前の最後の授業は攻撃魔法を復習していた事。初級からやり直してみたけど魔法陣が消えてしまうので魔力を多く流す練習をしていた事を説明した。
「魔法陣が消えていた原因は、魔力の不足か不安定と考えていたと」
リュカ様の言葉に私が頷くと、ソフィア様が額に手をあてて考え込み、リュカ様も腕を組んで唸っている。私だけ何が問題なのか分からずに戸惑っていると、ソフィア様が棚の中から裁縫に使いそうな細い糸と太いロープを取り出した。
「魔力を糸に例えれば分かるかい?初級の魔法陣に使う魔力はこれくらい」
そう言って先ほど取り出した糸を目の前のテーブルに置いた。
「あんたが使った魔力は上級の魔法陣に使う荷馬車に荷物を固定する時に使うロープくらいだよ」
そう言って糸の横にロープを置く。
髪の毛の様に細い糸と私の親指程ある太いロープ。
目に見える形で違いを説明されて納得したけど、今以上に魔力を弱くするって言われても、どうして良いかよく分からない。そんな私の気持ちが顔に出ていたのか、ソフィア様は深いため息を吐き出した。
「魔力を抑える……困ったねぇ」
「アランに確認しますか?」
「そうだねぇ、授業内容の確認したいからアランに連絡するかね。通信機持ってきておくれ」
頷いて了承したリュカ様が奥の部屋に入る背中を見ながら私は、ただただ混乱していた。今までの授業や補習では、魔法陣に流す魔力の不足を指摘されていたのに多すぎって今更、逆の事を言われても……
「ルナ、さっきの回復魔法より少ない魔力で明かりを作れるかい?」
そう言ってソフィア様が左の手のひらに丸い明かりを作って見せてくれた。冒険者活動や魔物討伐の時に必須の魔法で、最初に学ぶ魔法の一つ。最初に学ぶって言っても成功したことはないけど。
「やってみます……“明かり”」
さっきの回復より魔法陣を小さく作ってみたけど、魔法が発動すると私の手のひらの二倍ほどの大きさに膨らんだ。
「あれ?」
「はぁ……こりゃ参ったよ」
リュカ様が通信機を持って部屋に戻って来たけど、私の手のひらの明かりを見て動きを止めたから直ぐに消した。えー、やっぱりこの大きさは変なのね。
「さぁて、どうしたもんかね」
そう言いながら通信機を操作するソフィア様を見ながら、私の中で少しずつ不安が膨らんでくる。回復し過ぎると問題無いのかな?逆に疲れたりしないのかな?
一度、気になると次から次に疑問が浮かぶ。リュカ様の体調が気になって仕方ない私は、本人に確認しようとリュカ様に視線を向けると彼は何故か一歩下がる。その態度が余計に不安を煽って焦りを感じた時、私の手からバキッと何かが割れる音が聞こえた。
室内に響いた音に二人の視線が私に集中する中で、フリューゲル団長から渡された腕輪に亀裂が入っていた。
「……ケビンの魔力封じが持たないのかい」
「あ、あれ?一週間は大丈夫じゃなかったの?」
「そのはずだったが……ルナ嬢!?」
リュカ様が何か話している途中から私の記憶はなくなった。
ソフィア様言葉が理解できずにいる私は、リュカ様に助けを求めるように視線を向けると困った様に眉を下げていた。えー、本当にどうもないのに、何なのよ……
「今の回復で古い傷跡まで消えてしまった」
一瞬、何を言われたか理解できずにいたけど、後からジワリと理解が追い付く。古傷の跡が消えたって、逆に言えば跡が残るくらい酷い傷が癒えたって事よね。え?初級の魔法陣で消えないよね。どういう事?
「まだ、分からないのかい。まったく鈍いねぇ。ルナの流す魔力が多すぎたんだよもっと少なくしな」
「……少なくって言われても……」
「なんだい問題でもあんのかい?」
「魔力の量を少なくするとか抑える練習はしたことがないです」
ソフィア様は口が開いたままになって動かないし、リュカ様はなんていうか目が点になってしまった。どうしよう。魔力を多く流す練習はしていたけど。
「アランの授業では何を中心にしていましたか?」
リュカ様の話し方に違和感を感じながらも、正直に答えようと思い出す。大舞踏会前の最後の授業は攻撃魔法を復習していた事。初級からやり直してみたけど魔法陣が消えてしまうので魔力を多く流す練習をしていた事を説明した。
「魔法陣が消えていた原因は、魔力の不足か不安定と考えていたと」
リュカ様の言葉に私が頷くと、ソフィア様が額に手をあてて考え込み、リュカ様も腕を組んで唸っている。私だけ何が問題なのか分からずに戸惑っていると、ソフィア様が棚の中から裁縫に使いそうな細い糸と太いロープを取り出した。
「魔力を糸に例えれば分かるかい?初級の魔法陣に使う魔力はこれくらい」
そう言って先ほど取り出した糸を目の前のテーブルに置いた。
「あんたが使った魔力は上級の魔法陣に使う荷馬車に荷物を固定する時に使うロープくらいだよ」
そう言って糸の横にロープを置く。
髪の毛の様に細い糸と私の親指程ある太いロープ。
目に見える形で違いを説明されて納得したけど、今以上に魔力を弱くするって言われても、どうして良いかよく分からない。そんな私の気持ちが顔に出ていたのか、ソフィア様は深いため息を吐き出した。
「魔力を抑える……困ったねぇ」
「アランに確認しますか?」
「そうだねぇ、授業内容の確認したいからアランに連絡するかね。通信機持ってきておくれ」
頷いて了承したリュカ様が奥の部屋に入る背中を見ながら私は、ただただ混乱していた。今までの授業や補習では、魔法陣に流す魔力の不足を指摘されていたのに多すぎって今更、逆の事を言われても……
「ルナ、さっきの回復魔法より少ない魔力で明かりを作れるかい?」
そう言ってソフィア様が左の手のひらに丸い明かりを作って見せてくれた。冒険者活動や魔物討伐の時に必須の魔法で、最初に学ぶ魔法の一つ。最初に学ぶって言っても成功したことはないけど。
「やってみます……“明かり”」
さっきの回復より魔法陣を小さく作ってみたけど、魔法が発動すると私の手のひらの二倍ほどの大きさに膨らんだ。
「あれ?」
「はぁ……こりゃ参ったよ」
リュカ様が通信機を持って部屋に戻って来たけど、私の手のひらの明かりを見て動きを止めたから直ぐに消した。えー、やっぱりこの大きさは変なのね。
「さぁて、どうしたもんかね」
そう言いながら通信機を操作するソフィア様を見ながら、私の中で少しずつ不安が膨らんでくる。回復し過ぎると問題無いのかな?逆に疲れたりしないのかな?
一度、気になると次から次に疑問が浮かぶ。リュカ様の体調が気になって仕方ない私は、本人に確認しようとリュカ様に視線を向けると彼は何故か一歩下がる。その態度が余計に不安を煽って焦りを感じた時、私の手からバキッと何かが割れる音が聞こえた。
室内に響いた音に二人の視線が私に集中する中で、フリューゲル団長から渡された腕輪に亀裂が入っていた。
「……ケビンの魔力封じが持たないのかい」
「あ、あれ?一週間は大丈夫じゃなかったの?」
「そのはずだったが……ルナ嬢!?」
リュカ様が何か話している途中から私の記憶はなくなった。
4
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?
gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。
みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。
黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。
十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。
家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。
奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。
公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜
星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」
「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」
公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。
* エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました
砂礫レキ
恋愛
公爵令嬢エミア・シュタイトは婚約者である第二王子アリオス・ルーンファクトを心から愛していた。
けれど幼い頃からの恋心をアリオスは手酷く否定し続ける。その度にエミアの心は傷つき自己嫌悪が深くなっていった。
そして婚約から十年経った時「お前は俺の子を産むだけの存在にしか過ぎない」とアリオスに言われエミアの自尊心は限界を迎える。
消えてしまいたいと強く願った彼女は己の人格と引き換えに前世の記憶を取り戻した。
救国の聖女「エミヤ」の記憶を。
表紙は三日月アルペジオ様からお借りしています。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる