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龍人の村編
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ソフィア様が出してくれたお茶が飲み終わる頃、リュカ様が荷物を届けてくれた。いつの間にかソフィア様の荷物も一緒に置かれていたらしく、二人は私の目の前で言い荒らそいを始めた。
「黙って置くな!一言、言えば良いだろう」
「いちいち細かいね。荷物の一個や二個黙って運びな」
黙っていた事に苦情を言うリュカ様と、全く相手にしないソフィア様。城で見たリュカ様とは別人の様な態度に呆気に取られていると、急に左指に痛みを伴う熱さを感じて手を振った。
「熱!……指輪?」
熱さを逃がすためにソファーから立ち上がり手を振っていると、コロンと軽い音と共に指輪が床に落ちていた。全員の視線が呪具の指輪に集まり、観察していると赤く光始める。十年近く身に付けていて初めての現象に思わず息を止めて見ていると、指輪にヒビが浮き出てバラバラに砕け一瞬で破片は煙の様に消えてしまった。
「え?……消えた?」
「……契約が完了したね」
ソフィア様の言葉が耳に届いたけど、頭で理解しても認めたく無い。侯爵様は……
「リュカ、ケビンとアランに連絡だ。急ぎな」
「了解」
ソフィア様の表情は暗くリュカ様は直ぐに奥の部屋に入って行く。急すぎる出来事に頭が働かない私は、立ったまま指輪があった手を見詰めていたの。
「怪我はしていないかい?」
「はい、熱かっただけです」
ソフィア様にそう返事をしながら手を改めて見てみると、指輪がはまっていた所に赤い跡が残った。ソフィア様も跡に気づいて私の指に触れる。触られても痛みもなく、ただ指輪の跡が残っただけにも見える。
「なんだいこりゃ。呪具がはずれて跡が残るなんて初めてだよ」
「初めて」
「あぁ、見たことないね」
おうむ返しの様に繰り返した言葉に返ってきた返事に気味が悪くて、指輪の痕を擦って少しでも早く消したかった。奥の部屋に入っていたリュカ様が戻って来たけど、眉間に深いシワをつけて嫌な雰囲気だわ。
「侯爵家の監視をしていた騎士から城に緊急連絡が入って、侯爵当主が異様な姿で発見されたらしい」
異様な姿って何だろうと気になっていると、リュカ様がアラン先生から聞いた事を教えてくれた。
侯爵様は呪具が壊されてから何かに怯える様にカーテンを閉めきった部屋に籠って、食事も殆んど手につけていなかったらしい。今朝からは部屋の中から一切の返事が聞こえず、ドアに鍵まで掛けて開かない為に、使用人が見張りの騎士に相談。騎士立ち合いの元でドアを壊して中に入ると、真っ白いボサボサ髪で深いシワの刻まれ十年以上歳をとった様な姿で倒れていたらしい。
「最初は侯爵当主と気付かず連絡が遅れたと言っていた。今からケビン団長が確認に向かう」
「だろうね。ほんの一瞬、朝と昼とで歳をとったなんて誰も信じやしないよ。だってそうだろう?別れて一時間後にゃ何十年って年月過ぎた姿で現れるんだ」
二人の会話を上の空で聞いていた私は背中に冷たい物が流れた気がしたの。風邪をひいて熱が出る前の様にゾクゾクと寒気が止まらず無意識に両手を擦っていた時、ずっと意思の隅に引っ掛かり気になっていた事をやっと思い出したわ!
「あの、質問良いですか?」
「何だい」
少しぶっきらぼうに返事をしたソフィア様に、リュカ様が初めて会った時に言っていた“呪具が深く食い込んでいる”や“後遺症が残る”が気になると伝えた。
「リュカ、不安を煽る様な事を言うんじゃないよ!」
ソフィア様の剣幕に驚きながらも、黙って答えを待っていると、リュカ様は一瞬だけ動きを止めた後で私から視線を反らした。うん?何かしら……リュカ様の態度が変っていうか誤魔化してるというか……
「す、すまない。婆さんにみせないと、はずす条件は分からなかったし」
ふーん
「呪具が深く食い込んでいたのは確かで、後遺症が出る可能性も無きにしも有らずで」
へー
「あ、いやだから……不安になるような事を言って申し訳ありませんでした!」
私が何も言わずに見詰めていると一人で焦って謝罪するリュカ様。自分でも無表情だと分かる顔で謝罪を受け入れると、リュカ様はさらに焦った表情になったけど、何か言う前にソフィア様が止めてくれた。
「今更何を言って聞きやしないよ。リュカは自分の部屋で大人しくしな」
悪戯がバレて反省する大型犬の様に項垂れるリュカ様は、私にもう一度頭を下げてから奥の部屋に入って言った。
この人、信用出来ないわ。
「黙って置くな!一言、言えば良いだろう」
「いちいち細かいね。荷物の一個や二個黙って運びな」
黙っていた事に苦情を言うリュカ様と、全く相手にしないソフィア様。城で見たリュカ様とは別人の様な態度に呆気に取られていると、急に左指に痛みを伴う熱さを感じて手を振った。
「熱!……指輪?」
熱さを逃がすためにソファーから立ち上がり手を振っていると、コロンと軽い音と共に指輪が床に落ちていた。全員の視線が呪具の指輪に集まり、観察していると赤く光始める。十年近く身に付けていて初めての現象に思わず息を止めて見ていると、指輪にヒビが浮き出てバラバラに砕け一瞬で破片は煙の様に消えてしまった。
「え?……消えた?」
「……契約が完了したね」
ソフィア様の言葉が耳に届いたけど、頭で理解しても認めたく無い。侯爵様は……
「リュカ、ケビンとアランに連絡だ。急ぎな」
「了解」
ソフィア様の表情は暗くリュカ様は直ぐに奥の部屋に入って行く。急すぎる出来事に頭が働かない私は、立ったまま指輪があった手を見詰めていたの。
「怪我はしていないかい?」
「はい、熱かっただけです」
ソフィア様にそう返事をしながら手を改めて見てみると、指輪がはまっていた所に赤い跡が残った。ソフィア様も跡に気づいて私の指に触れる。触られても痛みもなく、ただ指輪の跡が残っただけにも見える。
「なんだいこりゃ。呪具がはずれて跡が残るなんて初めてだよ」
「初めて」
「あぁ、見たことないね」
おうむ返しの様に繰り返した言葉に返ってきた返事に気味が悪くて、指輪の痕を擦って少しでも早く消したかった。奥の部屋に入っていたリュカ様が戻って来たけど、眉間に深いシワをつけて嫌な雰囲気だわ。
「侯爵家の監視をしていた騎士から城に緊急連絡が入って、侯爵当主が異様な姿で発見されたらしい」
異様な姿って何だろうと気になっていると、リュカ様がアラン先生から聞いた事を教えてくれた。
侯爵様は呪具が壊されてから何かに怯える様にカーテンを閉めきった部屋に籠って、食事も殆んど手につけていなかったらしい。今朝からは部屋の中から一切の返事が聞こえず、ドアに鍵まで掛けて開かない為に、使用人が見張りの騎士に相談。騎士立ち合いの元でドアを壊して中に入ると、真っ白いボサボサ髪で深いシワの刻まれ十年以上歳をとった様な姿で倒れていたらしい。
「最初は侯爵当主と気付かず連絡が遅れたと言っていた。今からケビン団長が確認に向かう」
「だろうね。ほんの一瞬、朝と昼とで歳をとったなんて誰も信じやしないよ。だってそうだろう?別れて一時間後にゃ何十年って年月過ぎた姿で現れるんだ」
二人の会話を上の空で聞いていた私は背中に冷たい物が流れた気がしたの。風邪をひいて熱が出る前の様にゾクゾクと寒気が止まらず無意識に両手を擦っていた時、ずっと意思の隅に引っ掛かり気になっていた事をやっと思い出したわ!
「あの、質問良いですか?」
「何だい」
少しぶっきらぼうに返事をしたソフィア様に、リュカ様が初めて会った時に言っていた“呪具が深く食い込んでいる”や“後遺症が残る”が気になると伝えた。
「リュカ、不安を煽る様な事を言うんじゃないよ!」
ソフィア様の剣幕に驚きながらも、黙って答えを待っていると、リュカ様は一瞬だけ動きを止めた後で私から視線を反らした。うん?何かしら……リュカ様の態度が変っていうか誤魔化してるというか……
「す、すまない。婆さんにみせないと、はずす条件は分からなかったし」
ふーん
「呪具が深く食い込んでいたのは確かで、後遺症が出る可能性も無きにしも有らずで」
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私が何も言わずに見詰めていると一人で焦って謝罪するリュカ様。自分でも無表情だと分かる顔で謝罪を受け入れると、リュカ様はさらに焦った表情になったけど、何か言う前にソフィア様が止めてくれた。
「今更何を言って聞きやしないよ。リュカは自分の部屋で大人しくしな」
悪戯がバレて反省する大型犬の様に項垂れるリュカ様は、私にもう一度頭を下げてから奥の部屋に入って言った。
この人、信用出来ないわ。
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