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龍人の村編
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案内された村……いや、大きな町の奥にある小さな赤い屋根が特徴的な一軒家だった。
「ここが私の家だ。中でお茶でもしながらリュカを待とうじゃないか」
「はぁ……失礼します」
ドアを開けると直ぐに暖炉のあるリビングがあり、その奥には階段と別の部屋に続くドアが見えた。ソフィア様に促されてリビングのソファーに座ると、向かいに座ったソフィアが指を鳴らす。それだけでテーブの上に温かい紅茶が現れた。
「さぁ、その指輪を見せておくれ」
「はい」
紅茶に驚く私を気にせずにソフィア様はマイペース。戸惑いながらも手を差し出すと、指輪に触れて何かを確認するように上から覗き込んでいる。私には植物柄の地味な指輪にしか見えないけど、何か違いがあるのかソフィア様は一人で頷いていてちょっと引いた。
「あの……何か分かるのですか?」
「契約が完了していないね」
「契約?」
何の事か分からず首を傾げていると、ソフィア様は私の手を放して紅茶を一口飲んでため息を吐いた。
「氷の魔女の呪具を使用するには、手に入れただけじゃ駄目なんだ。契約をしなくちゃいけないんだよ」
そう言って教えてくれたのは“呪具”の落とし穴。呪具は大金を払って買うだけでなく、魔女と使用契約を結ばないと使えない。初めて聞く内容に困惑していると、ソフィア様は使用契約主は侯爵様の可能性が高いと言った。
「ルナも元婚約者の男も呪具とは知らなかったなら、これが何か知っている者が契約者だね」
知っている者と言われると確かに侯爵様以外にあり得ない。侯爵様は父にも何も言わずに私に指輪を渡したから間違い無いだろうけど……
契約者が誰か推察していると、ソフィア様が契約者が報酬を払ったら指輪は直ぐに外れると教えてくれた。
指輪が外れるなら早く報酬を払って欲しいけど、具体的に報酬って何かしら?
「契約の報酬とは具体的に何でしょうか?」
知らない事を考えても分からない。素直にソフィア様に尋ねると、一瞬だけ眉が動いた後、ゆっくりと息を吐き出した。
「報酬は命だよ。あの魔女は他人の生命力や魔力を奪って糧にするんだよ」
「いのち、ですか?」
あまりに衝撃的な内容に呆然としながら聞き返すと、ソフィア様はあっさり頷いて詳しく教えてくれた。
「あの魔女はね。私よりも長生きなんだよ。人の命を奪って自分の寿命を延ばしているんだ。しかも、十年分の報酬だ……侯爵は長くないね」
“長くない”
その一言にゾッとした。つまりこの指輪が外れた時、侯爵様は亡くなる事を指しているんだと頭で理解出来ても心はそうですかと納得なんか出来ない。
どうしよう……侯爵様が亡くなるくらいなら外せないままでも良いんじゃない?いくら私を騙した人でも……
「それ以上、考えるのはおよしよルナ。あんたのせいじゃない。侯爵の自業自得なんだよ。契約は相手も内容を理解していないと結べないんだからね」
「でも……」
「顔見知りだし直ぐに納得しろとは言わない。でもね、使う事を選んだのは侯爵自身だ」
ソフィア様がテーブルの上に置いていた私の手を両手で包み込む様に強く握る。金色の瞳で私を真っ直ぐに見詰めると、もう一度ハッキリと言いきった。
「あんたのせいじゃない。侯爵は契約内容を理解してて使ったんだよ」
「……はい……」
反論を許さない強い視線と言葉に、私が小さな声で返事をするとソフィア様は、頷いた後ゆっくりと手を放して紅茶を一口飲んでため息を漏らした。
「あの魔女の事だ。侯爵の不安を煽ってから受け取るつもりだろうね」
「わざと日を置いてからって事ですか?もう石を壊してから三日経ってます」
「そうかい。それなら明日にでも外れるだろう。指輪が外れたら魔法が使えるから練習するよ」
「はい、分かりました」
了承の返事をしながらも、私は指輪が外れるのか怖くて微かに震えていた。
「ここが私の家だ。中でお茶でもしながらリュカを待とうじゃないか」
「はぁ……失礼します」
ドアを開けると直ぐに暖炉のあるリビングがあり、その奥には階段と別の部屋に続くドアが見えた。ソフィア様に促されてリビングのソファーに座ると、向かいに座ったソフィアが指を鳴らす。それだけでテーブの上に温かい紅茶が現れた。
「さぁ、その指輪を見せておくれ」
「はい」
紅茶に驚く私を気にせずにソフィア様はマイペース。戸惑いながらも手を差し出すと、指輪に触れて何かを確認するように上から覗き込んでいる。私には植物柄の地味な指輪にしか見えないけど、何か違いがあるのかソフィア様は一人で頷いていてちょっと引いた。
「あの……何か分かるのですか?」
「契約が完了していないね」
「契約?」
何の事か分からず首を傾げていると、ソフィア様は私の手を放して紅茶を一口飲んでため息を吐いた。
「氷の魔女の呪具を使用するには、手に入れただけじゃ駄目なんだ。契約をしなくちゃいけないんだよ」
そう言って教えてくれたのは“呪具”の落とし穴。呪具は大金を払って買うだけでなく、魔女と使用契約を結ばないと使えない。初めて聞く内容に困惑していると、ソフィア様は使用契約主は侯爵様の可能性が高いと言った。
「ルナも元婚約者の男も呪具とは知らなかったなら、これが何か知っている者が契約者だね」
知っている者と言われると確かに侯爵様以外にあり得ない。侯爵様は父にも何も言わずに私に指輪を渡したから間違い無いだろうけど……
契約者が誰か推察していると、ソフィア様が契約者が報酬を払ったら指輪は直ぐに外れると教えてくれた。
指輪が外れるなら早く報酬を払って欲しいけど、具体的に報酬って何かしら?
「契約の報酬とは具体的に何でしょうか?」
知らない事を考えても分からない。素直にソフィア様に尋ねると、一瞬だけ眉が動いた後、ゆっくりと息を吐き出した。
「報酬は命だよ。あの魔女は他人の生命力や魔力を奪って糧にするんだよ」
「いのち、ですか?」
あまりに衝撃的な内容に呆然としながら聞き返すと、ソフィア様はあっさり頷いて詳しく教えてくれた。
「あの魔女はね。私よりも長生きなんだよ。人の命を奪って自分の寿命を延ばしているんだ。しかも、十年分の報酬だ……侯爵は長くないね」
“長くない”
その一言にゾッとした。つまりこの指輪が外れた時、侯爵様は亡くなる事を指しているんだと頭で理解出来ても心はそうですかと納得なんか出来ない。
どうしよう……侯爵様が亡くなるくらいなら外せないままでも良いんじゃない?いくら私を騙した人でも……
「それ以上、考えるのはおよしよルナ。あんたのせいじゃない。侯爵の自業自得なんだよ。契約は相手も内容を理解していないと結べないんだからね」
「でも……」
「顔見知りだし直ぐに納得しろとは言わない。でもね、使う事を選んだのは侯爵自身だ」
ソフィア様がテーブルの上に置いていた私の手を両手で包み込む様に強く握る。金色の瞳で私を真っ直ぐに見詰めると、もう一度ハッキリと言いきった。
「あんたのせいじゃない。侯爵は契約内容を理解してて使ったんだよ」
「……はい……」
反論を許さない強い視線と言葉に、私が小さな声で返事をするとソフィア様は、頷いた後ゆっくりと手を放して紅茶を一口飲んでため息を漏らした。
「あの魔女の事だ。侯爵の不安を煽ってから受け取るつもりだろうね」
「わざと日を置いてからって事ですか?もう石を壊してから三日経ってます」
「そうかい。それなら明日にでも外れるだろう。指輪が外れたら魔法が使えるから練習するよ」
「はい、分かりました」
了承の返事をしながらも、私は指輪が外れるのか怖くて微かに震えていた。
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