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龍人の村編
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家が見えなくなり街から出ると、家族と暫く会えないというのに安堵している自分に気がついた。
私は心の何処かで父を恨んでいたのかもしれない。入学には賛成したが苦労するからと寮に入る事を反対した母や学園の生徒の嫌がらせから庇ってくれる兄。父は私の話は聞いてくれたが、婚約を解消したり学園に訴えをしてくれる事はなかった。だから……
「ルナ嬢、父親とは何かあったのか?」
気付かなくても良いのに、リュカ様は何か感じとったらしい。家が見えなくなってから、そんな事を尋ねてきた。
「何て言えば良いのか分かりません。ただ……そうですね。自分の中で父の行動と言動に納得出来ないという言葉が近いです」
「納得出来ない」
私の言葉を復唱する彼に、ただ小さく頷き返して外に視線を向けた。馬車は順調に進み街を出た所の様で、車窓からは緑豊かな景色が見えた。あら?こっちの方角は黒い塊が落ちた丘?
「あの、リュカ様。質問しても宜しいでしょうか?」
「えぇ、どうぞ」
「今朝、この先の丘に黒い塊が落ちたと騒ぎになっていたようですが、道は通れるのでしょうか?」
「落ちたのではなくて着地したのですよ」
私の質問にそう答えたリュカ様は苦笑いしながら心配無いと言った。『着地した』?今の言い方だとあの黒い塊が何か知っている?
「さぁ、着きました。ここからは乗り換えです。それと敬語もやめて頂けると助かります。自分も村では素で話すので」
「はぁ、急に言われても難しいですが、努力します」
敬語とか関係あるの?何て疑問に思いながら馬車を降りると、歩き出したリュカ様が丘の上を指した。上?……は?
「黒い……ドラゴン!?」
「彼はネグル。俺の相棒だ」
「相棒?」
私はリュカ様の言葉を理解出来ずに繰り返す。ドラゴンは群れで生活し、人と関わるの嫌うって。だから、人間が攻撃しない限りドラゴンは何もしないと学園で習ったけど……
「村に入ってからではないと詳しく話せないけど、共存しているって思って」
“共存”って言葉に聞いた事のない話しに首を傾げる。彼と話しながらも歩きを止めずにいたら、もう、目の前にドラゴンがいた。
黒いドラゴンはリュカ様に気付くと、喉を鳴らして頭を近付けてくる。真っ黒だけど艶やかに光る鱗は太陽を反射してキラキラ輝く。そんな輝く鱗に負けないくらい黒い瞳も輝いている。
「……大きい……綺麗……」
大きな体に驚いたけど、近くで見ると大きさより輝く姿の美しさに見惚れてしまう。はぁ……スベスベしてそうな肌に黒曜石の様な切れ長の瞳。
リュカ様の横にいる私が気になるのか大きな頭を傾げながら、私の前に鼻先を近付けてきた。ドラゴンは頭が良いと聞いた事があるわ。きっと初めて見る人間が不思議なのね。
「おはようございますネグル。私はルナ・ニールセン。宜しくお願いします」
自己紹介しながら目の前の鼻先を撫でると、ダーレンが動きを止めてしまう。触ったら駄目だったのかもと思って焦ったけど、次の瞬間、ドラゴンの大きな舌で全身を舐められた。……は?……唾液で服が濡れた……私、御飯じゃないよ
「おや、珍しい。彼が初対面の人を気に入るとはね」
女性の声が何処からか聞こえて視線を動かすと、ドラゴンの足元に女性が居ることに気付いた。女性の割には背が高い?あっ、リュカ様と比べれば小さいかも。髪は白いけど、もしかして
「龍人の方でしょうか?初めましてルナ・ニールセンです」
「へぇ、ケビンとアランが推薦するだけあって洞察力は高そうだね」
艶やかな赤い唇の端を上げて妖艶に笑う女性に、何故か私は全身に鳥肌がたって背中に冷たい汗が流れた。
私は心の何処かで父を恨んでいたのかもしれない。入学には賛成したが苦労するからと寮に入る事を反対した母や学園の生徒の嫌がらせから庇ってくれる兄。父は私の話は聞いてくれたが、婚約を解消したり学園に訴えをしてくれる事はなかった。だから……
「ルナ嬢、父親とは何かあったのか?」
気付かなくても良いのに、リュカ様は何か感じとったらしい。家が見えなくなってから、そんな事を尋ねてきた。
「何て言えば良いのか分かりません。ただ……そうですね。自分の中で父の行動と言動に納得出来ないという言葉が近いです」
「納得出来ない」
私の言葉を復唱する彼に、ただ小さく頷き返して外に視線を向けた。馬車は順調に進み街を出た所の様で、車窓からは緑豊かな景色が見えた。あら?こっちの方角は黒い塊が落ちた丘?
「あの、リュカ様。質問しても宜しいでしょうか?」
「えぇ、どうぞ」
「今朝、この先の丘に黒い塊が落ちたと騒ぎになっていたようですが、道は通れるのでしょうか?」
「落ちたのではなくて着地したのですよ」
私の質問にそう答えたリュカ様は苦笑いしながら心配無いと言った。『着地した』?今の言い方だとあの黒い塊が何か知っている?
「さぁ、着きました。ここからは乗り換えです。それと敬語もやめて頂けると助かります。自分も村では素で話すので」
「はぁ、急に言われても難しいですが、努力します」
敬語とか関係あるの?何て疑問に思いながら馬車を降りると、歩き出したリュカ様が丘の上を指した。上?……は?
「黒い……ドラゴン!?」
「彼はネグル。俺の相棒だ」
「相棒?」
私はリュカ様の言葉を理解出来ずに繰り返す。ドラゴンは群れで生活し、人と関わるの嫌うって。だから、人間が攻撃しない限りドラゴンは何もしないと学園で習ったけど……
「村に入ってからではないと詳しく話せないけど、共存しているって思って」
“共存”って言葉に聞いた事のない話しに首を傾げる。彼と話しながらも歩きを止めずにいたら、もう、目の前にドラゴンがいた。
黒いドラゴンはリュカ様に気付くと、喉を鳴らして頭を近付けてくる。真っ黒だけど艶やかに光る鱗は太陽を反射してキラキラ輝く。そんな輝く鱗に負けないくらい黒い瞳も輝いている。
「……大きい……綺麗……」
大きな体に驚いたけど、近くで見ると大きさより輝く姿の美しさに見惚れてしまう。はぁ……スベスベしてそうな肌に黒曜石の様な切れ長の瞳。
リュカ様の横にいる私が気になるのか大きな頭を傾げながら、私の前に鼻先を近付けてきた。ドラゴンは頭が良いと聞いた事があるわ。きっと初めて見る人間が不思議なのね。
「おはようございますネグル。私はルナ・ニールセン。宜しくお願いします」
自己紹介しながら目の前の鼻先を撫でると、ダーレンが動きを止めてしまう。触ったら駄目だったのかもと思って焦ったけど、次の瞬間、ドラゴンの大きな舌で全身を舐められた。……は?……唾液で服が濡れた……私、御飯じゃないよ
「おや、珍しい。彼が初対面の人を気に入るとはね」
女性の声が何処からか聞こえて視線を動かすと、ドラゴンの足元に女性が居ることに気付いた。女性の割には背が高い?あっ、リュカ様と比べれば小さいかも。髪は白いけど、もしかして
「龍人の方でしょうか?初めましてルナ・ニールセンです」
「へぇ、ケビンとアランが推薦するだけあって洞察力は高そうだね」
艶やかな赤い唇の端を上げて妖艶に笑う女性に、何故か私は全身に鳥肌がたって背中に冷たい汗が流れた。
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