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龍人の村編
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龍人の村に出発する前夜、後は寝るだけとなった頃、父から呼び出しを受けた。夜着の上からショールを羽織り父がいる執務室のドアを叩くと、中から直ぐに返事が返ってくる。室内に入れば何故か肩を落とし落ち込んだ様に見える父がいた。
「お父様、お話とはなんでしょうか?」
「まぁ、座らないか?」
「明日に備えたいので手短にお願いしたいです」
執務室には父が今座る机の他にソファーもあるが、良い思いでのないこのソファーには座りたくない。だってこのソファーに座って何度、父に婚約破棄や学園の休学を頼んだ事か。その度に言われた事は『お前の努力が足りない』だったのよ。
私が座る気がないと理解した父は深いため息を吐いた後、重い口を開く。
「侯爵夫婦並びに子息の処分が決まった。侯爵夫婦は逮捕後に裁判するが最低でも終身刑は免れない。子息は王家所有の鉱山にて強制労役となる」
侯爵家の処分を聞いて正直な感想は『興味ない』の一言。呪具を使って呪われた被害者である私だけど、彼らの顔を見なくて済むならどうでも良かった。だからさっさと話を終わらせて休みたかった。
「そうですか。話が以上でしたら早く魔法を習得する為にも、明日に備えて早く休ませて下さい」
「ルナ、魔法に拘らなくて良いんだ。私が侯爵からの婚約を断りきれていれば、こんな事にならなかった……すまない」
父から言われた言葉に驚いて私は目を見開いた。魔法に拘らない?魔法使いにならなくて良いって事?
学園の寮に入れて勉強漬けにさせた癖に何を今更。
父の言葉を聞いて浮かんだ言葉をのみ込んで、私は曖昧に微笑むと退室の挨拶だけして部屋を出た。ドアを閉める時、チラッと見えた父の顔が泣きそうに見えた気がしたが、躊躇う事なくそのまま閉める。気のせいよ。あの人は何だかんだ言っても私を魔法使いにさせたいのだから。
翌朝、リュカ様の迎えを待っていると外が騒がしくなる。何事かと思って窓から覗くと、庭や目の前の道路にいる人が空を指していた。
空?空に何が……あの黒い塊は何かしら。かなり大きいわ。街から離れた丘に落ちている?
道路にいる人が指した先には上空に大きな黒い塊が流れる様に動く。魔物かと思ったけど、その割には鳴き声一つ聞こえない。しかも、地面が近付くのに慌てる様子も無くゆっくりと丘に落ちた。生き物なら落下する時、もっと抵抗するわよね?何だったの?
「お嬢様、フリューゲル様が来られました」
窓の外に気を取られていると、侍女が迎えが来たと伝えてくれる。
「分かった。直ぐ行くわ」
窓の外はいまだに騒がしく、人々の大きな声が聞こえる。どうやら誰かが騎士団に連絡したとか、野次馬で見に行こう何て言葉も聞こえた。黒い塊は気になるけど、今は目の前に集中しなきゃ。そう言えば村まで何日掛かるか聞いてなかったわ。
自分の失態に気付き、肩を落としながら玄関へ向かうと白いシャツに黒のスラックス姿のリュカ様が父と話していた。
「おはようございます。お待たせ致しました」
「おはようルナ嬢」
朝っぱらから眩しい笑顔で挨拶を返されて、思わず後ろに下がりたくなかったわ。父となにを話していたのか知らないけど、父が何故か不安そうな表情をしていた。昨日から態度が変ね。
「では、行ってきます」
「ルナ……」
父が私の名前を呼んだけど、続く言葉は何もなかった。そんな父に呆れた視線を向けた兄は、私を抱き締めて別れを惜しんでいた。
「向こうでは大変だろうが体調に気をつけるんだぞ。走り回って怪我して迷惑掛けないようにな」
「もう、お兄様。いつの話よ」
「ルナ、手紙を待っているわ」
「お母様、絶対に書くわ」
目に涙を溜める母に笑顔で手紙の約束をすると、リュカ様が乗ってきた馬車に乗り込んだ。ゆっくりと動き出す馬車の中で、私は前だけを見つめていた。
「お父様、お話とはなんでしょうか?」
「まぁ、座らないか?」
「明日に備えたいので手短にお願いしたいです」
執務室には父が今座る机の他にソファーもあるが、良い思いでのないこのソファーには座りたくない。だってこのソファーに座って何度、父に婚約破棄や学園の休学を頼んだ事か。その度に言われた事は『お前の努力が足りない』だったのよ。
私が座る気がないと理解した父は深いため息を吐いた後、重い口を開く。
「侯爵夫婦並びに子息の処分が決まった。侯爵夫婦は逮捕後に裁判するが最低でも終身刑は免れない。子息は王家所有の鉱山にて強制労役となる」
侯爵家の処分を聞いて正直な感想は『興味ない』の一言。呪具を使って呪われた被害者である私だけど、彼らの顔を見なくて済むならどうでも良かった。だからさっさと話を終わらせて休みたかった。
「そうですか。話が以上でしたら早く魔法を習得する為にも、明日に備えて早く休ませて下さい」
「ルナ、魔法に拘らなくて良いんだ。私が侯爵からの婚約を断りきれていれば、こんな事にならなかった……すまない」
父から言われた言葉に驚いて私は目を見開いた。魔法に拘らない?魔法使いにならなくて良いって事?
学園の寮に入れて勉強漬けにさせた癖に何を今更。
父の言葉を聞いて浮かんだ言葉をのみ込んで、私は曖昧に微笑むと退室の挨拶だけして部屋を出た。ドアを閉める時、チラッと見えた父の顔が泣きそうに見えた気がしたが、躊躇う事なくそのまま閉める。気のせいよ。あの人は何だかんだ言っても私を魔法使いにさせたいのだから。
翌朝、リュカ様の迎えを待っていると外が騒がしくなる。何事かと思って窓から覗くと、庭や目の前の道路にいる人が空を指していた。
空?空に何が……あの黒い塊は何かしら。かなり大きいわ。街から離れた丘に落ちている?
道路にいる人が指した先には上空に大きな黒い塊が流れる様に動く。魔物かと思ったけど、その割には鳴き声一つ聞こえない。しかも、地面が近付くのに慌てる様子も無くゆっくりと丘に落ちた。生き物なら落下する時、もっと抵抗するわよね?何だったの?
「お嬢様、フリューゲル様が来られました」
窓の外に気を取られていると、侍女が迎えが来たと伝えてくれる。
「分かった。直ぐ行くわ」
窓の外はいまだに騒がしく、人々の大きな声が聞こえる。どうやら誰かが騎士団に連絡したとか、野次馬で見に行こう何て言葉も聞こえた。黒い塊は気になるけど、今は目の前に集中しなきゃ。そう言えば村まで何日掛かるか聞いてなかったわ。
自分の失態に気付き、肩を落としながら玄関へ向かうと白いシャツに黒のスラックス姿のリュカ様が父と話していた。
「おはようございます。お待たせ致しました」
「おはようルナ嬢」
朝っぱらから眩しい笑顔で挨拶を返されて、思わず後ろに下がりたくなかったわ。父となにを話していたのか知らないけど、父が何故か不安そうな表情をしていた。昨日から態度が変ね。
「では、行ってきます」
「ルナ……」
父が私の名前を呼んだけど、続く言葉は何もなかった。そんな父に呆れた視線を向けた兄は、私を抱き締めて別れを惜しんでいた。
「向こうでは大変だろうが体調に気をつけるんだぞ。走り回って怪我して迷惑掛けないようにな」
「もう、お兄様。いつの話よ」
「ルナ、手紙を待っているわ」
「お母様、絶対に書くわ」
目に涙を溜める母に笑顔で手紙の約束をすると、リュカ様が乗ってきた馬車に乗り込んだ。ゆっくりと動き出す馬車の中で、私は前だけを見つめていた。
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