婚約破棄されたポンコツ魔法使い令嬢は今日も元気です!

シマ

文字の大きさ
上 下
15 / 91
龍人の村編

3

しおりを挟む
 植物に巻きつかれたエリザベスを置いて、二人に挟まれながら学園長の元へ向かい休学の手続きを終わらせた。門の前に待たせている馬車まで向かう途中も、やっぱり私は背の高い二人に挟まれて圧迫感が半端ない。何か気を紛らわしたくて私は、アラン先生にエリザベスの事を聞く事にした。

「アラン先生、エリザベスの事を聞いて良いですか?」

「なんでしょう」

 普通に言葉が反って来たので秘密があるとか無さそうだと考えながら、私は先生が次はない様な事を言ったけど、彼女が何か問題を起こした記憶は無くて気になっていたの。その事を伝えると、アラン先生はゆっくり息を吐き出した後に私に向かって深く頭を下げた。

「え!?せ、先生!!急になに?なに?頭を上げて下さい」

 先生と反対側にいるリュカ様に視線を向けても何も言わないし、私一人だけオロオロと焦っていた。

「スミスさんと一部の職員が貴女の成績を不当に下げていました」

「へ?」

 何ともマヌケな声が出てしまった。えっと、職員は私の事を馬鹿にしていた先生かなって思うけどエリザベスはなに?

「スミスさんが筆記試験の文字が消える様に細工し、職員もそれを分かっていながら、そのまま採点したと判明しました」

「消える細工……アレか!」

 先生のテストの一部に心当たりがあり、自分だけ納得しているとリュカ様の眉間に皺がよりアラン先生の眉がピクッと動いた。

あーれ?二人とも御機嫌ナナメかなぁ~

「ニールセンさん、異変に気付いていたのですか?」

「はぁ……何度か自己採点と結果が違い過ぎたので何となく」

「何故、直ぐに言わなかったのですか」

 こめかみを揉みながらアラン先生が疲れた様な声で尋ねてきたが、誰にも言えない理由があった。それは……

「答案用紙を返却されなかったので確認が出来ませんでした」

 おかしいと思った時に限って答案用紙が返却されなかった。それも一度や二度ではなく何度も。職員室で揉めた事もあるくらい頻繁にだ。でも職員室にいた講師達は味方してくれる事も一緒に探してくれる事もなかった。

「返却を断ったのでは無いと?」

 怪訝な表情で私に尋ねる先生に向かって、私はハッキリと首を縦に振る。内心、誰だよ、ウソついた奴。一発、撲りたいな♡とか考えたのは内緒です。

「間違った所を復習したくて何度か返却を求めましたが、失くしたとか様々な理由で返却されませんでした」

 アラン先生からユラリと何かが見えた気がして一歩下がると、リュカ様が私を後ろに庇ってくれた。

「アラン、殺気を消せ」

「あぁ、驚かせましたね」

「いえ、大丈夫です」

「私はまだやり残した仕事がありますので、ここでお別れです。成長して戻って来るのを楽しみにしていますよ」

 リュカ様に注意されて謝った先生は、私の頭を撫でると来た道を戻って行く。やっぱり殺気が漏れているのか先生が進む先の道から生き物が逃げていった。

「先生って何者なんでんすか?今の普通じゃないですよね」

「あぁ、アランはケビン団長の弟子で魔法師団で隊長になれる程の実力者です」

「そんな凄い人がどうして講師なんかしているのですか?」

 学園の講師と魔法師団の団員では、魔法師団の方が格上で周囲からも持て囃される。それなのに態々、面倒臭くて給料も安い講師なんて選んだんだろう。

「アランは大切な最愛の人の傍にいたくて講師を選んだんですよ。魔法師団だと遠征や魔物討伐、更には戦争もありますから」

 リュカ様が先生が消えた道の奥を見つめながら言った言葉を聞いて、私はそこまで大切にされる相手が羨ましいと思った。

 婚約者とは良好な関係ではなかったし、学園でも邪魔者扱いだったし。家族は勿論、私を愛してくれているし大切にしてくれているし、少ないけど友人もいる。

 それでも呪具の呪いが解けて魔法が使える様になったら……いつか私自身を見て大切だと最愛だと言ってくれる人が現れると信じてる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?

gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。 みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。 黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。 十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。 家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。 奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

前世の記憶を取り戻したら貴男が好きじゃなくなりました

砂礫レキ
恋愛
公爵令嬢エミア・シュタイトは婚約者である第二王子アリオス・ルーンファクトを心から愛していた。 けれど幼い頃からの恋心をアリオスは手酷く否定し続ける。その度にエミアの心は傷つき自己嫌悪が深くなっていった。 そして婚約から十年経った時「お前は俺の子を産むだけの存在にしか過ぎない」とアリオスに言われエミアの自尊心は限界を迎える。 消えてしまいたいと強く願った彼女は己の人格と引き換えに前世の記憶を取り戻した。 救国の聖女「エミヤ」の記憶を。 表紙は三日月アルペジオ様からお借りしています。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...