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婚約破棄編
7 side サイオス
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自分の目の前で妹の魔力が暴走しそうになったが、龍人の部隊長、リュカ・フリューゲルが妹に口付けして魔力を吸い取った。急を要する事態で他に方法がなかったとはいえ、未婚の婚約者でもない令嬢に対する暴挙に拳に力が入る。
「……貴様……」
「貴殿の謗りは後でいくらでも受けよう。今は彼女が再び暴走しないように対処するのが先だ」
「……分かった」
怒りを腹の底に沈めて同意すると、部屋の角で事態を見守っていた騎士に魔法師団団長を呼びに走らせた。
「魔法師団団長も今ので気付いただろう。魔力封じは直ぐに届く」
「魔力封じ……妹はそこまでしないといけないのか?」
元々、産まれた時から魔力が強く機嫌が悪いと回りの物をよく壊していたが、それでも陶器やガラス等の壊れやすい物だけ。魔力封じは完全に魔力を閉じ込め魔法を一切使えなくすると聞いた事がある。そこまでしないと再び暴走すると言うのか?
「これは私個人の推測だが、彼女は魔力を奪われていた期間が長いのではないか?」
「あぁ、あの指輪は十年程つけている」
「十年間、彼女は常に半分程度の魔力しかなかった。そして、十年ぶりに完全回復する」
「あれで半分だと!?今でも次代の大魔法使い候補と言われているのにか」
聞かされた話しに驚き声が大きくなるが、そんな事に気を使っていられない。今でも多く制御に苦労している様なのに……確か成人する16歳位までは、成長が著しく上がり幅も大きいはず。
「常に魔力を使っていたわけだ。聞いた事があるだろう?魔力は使えば使う程増えると」
私と話しながらフリューゲル殿が妹をソファーに寝かせる。顔に掛かる髪を避けてやるその手は厳つい身体からは想像出来ないほど優しい。疚しい気持ち等、一切ないその姿に怒りも大分落ち着いた。それにしても妹の魔力が半分だったのなら……
「このまま学園に通い続けるのは無理か」
ポツリと漏れた言葉にフリューゲル殿も静かに頷き同意した。
「一つ提案だが龍人の長老の預けるてはどうだろう。長老は女性だし魔法師団団長の師匠でもある。学園より遥かに安全に学べるはずだ」
彼の提案は最もな事だ。著名な学者や医者も分からなかった原因をものの数分で見つけ対処する。
平凡な人間と神龍の血を受け継ぐ龍人とでは力量の差は天と地程の開きがある。しかし、それ故に龍人の村には簡単には入れず、暮らしぶりも謎だと聞いた事がある。
「確かにメリットは大きい。デメリットは?」
「冷静だな。龍人と共に行かねば村に入れない事と自分の事は全て自分でせねばならない」
困った様に肩を竦める彼は貴族の令嬢には過酷だと言いたいのだろう。確かに普通の令嬢なら蝶よ花よと大事に育てられ、ろくに徒歩で歩いた事も無いだろう。
だが妹は違う。
侯爵夫人や息子のハリソンは婚約に否定的で嫌がらせをしていた。交流の為に侯爵家に行った帰り、二人が馬車を勝手に断り自宅まで歩いて帰って来る事も多々あった。学園の寮生活では着替えや風呂の手伝いは無く、今では洗濯も自分でしている。
……妹よ、お前は大分規格外な令嬢になってしまったな。だがそれが今役に立つぞ。
「それは問題無い。さて、両親をどう説得するか」
「ニールセン子爵子息、貴殿は反対しないのか?」
ずっと済ました顔をしていたフリューゲル殿が驚いたのか目を丸くしてこちらを見る。その間抜けな表情に少しだけ好感が持てた。
「私の妹は良くも悪くも規格外でね。話の続きの前に、その堅苦しい呼び方は止めてくれ。私はサイオス、妹はルナだ。同じ名字だ名前で呼んでくれ」
「分かった。それでサイオス殿、ルナ嬢を村に行かせて本当に良いのか?」
「構わんよ。妹は規格外と言っただろう。学園の寮で全てを一人でしているので問題は無い。早急に村に行く手続きを始めようじゃないか」
「……貴様……」
「貴殿の謗りは後でいくらでも受けよう。今は彼女が再び暴走しないように対処するのが先だ」
「……分かった」
怒りを腹の底に沈めて同意すると、部屋の角で事態を見守っていた騎士に魔法師団団長を呼びに走らせた。
「魔法師団団長も今ので気付いただろう。魔力封じは直ぐに届く」
「魔力封じ……妹はそこまでしないといけないのか?」
元々、産まれた時から魔力が強く機嫌が悪いと回りの物をよく壊していたが、それでも陶器やガラス等の壊れやすい物だけ。魔力封じは完全に魔力を閉じ込め魔法を一切使えなくすると聞いた事がある。そこまでしないと再び暴走すると言うのか?
「これは私個人の推測だが、彼女は魔力を奪われていた期間が長いのではないか?」
「あぁ、あの指輪は十年程つけている」
「十年間、彼女は常に半分程度の魔力しかなかった。そして、十年ぶりに完全回復する」
「あれで半分だと!?今でも次代の大魔法使い候補と言われているのにか」
聞かされた話しに驚き声が大きくなるが、そんな事に気を使っていられない。今でも多く制御に苦労している様なのに……確か成人する16歳位までは、成長が著しく上がり幅も大きいはず。
「常に魔力を使っていたわけだ。聞いた事があるだろう?魔力は使えば使う程増えると」
私と話しながらフリューゲル殿が妹をソファーに寝かせる。顔に掛かる髪を避けてやるその手は厳つい身体からは想像出来ないほど優しい。疚しい気持ち等、一切ないその姿に怒りも大分落ち着いた。それにしても妹の魔力が半分だったのなら……
「このまま学園に通い続けるのは無理か」
ポツリと漏れた言葉にフリューゲル殿も静かに頷き同意した。
「一つ提案だが龍人の長老の預けるてはどうだろう。長老は女性だし魔法師団団長の師匠でもある。学園より遥かに安全に学べるはずだ」
彼の提案は最もな事だ。著名な学者や医者も分からなかった原因をものの数分で見つけ対処する。
平凡な人間と神龍の血を受け継ぐ龍人とでは力量の差は天と地程の開きがある。しかし、それ故に龍人の村には簡単には入れず、暮らしぶりも謎だと聞いた事がある。
「確かにメリットは大きい。デメリットは?」
「冷静だな。龍人と共に行かねば村に入れない事と自分の事は全て自分でせねばならない」
困った様に肩を竦める彼は貴族の令嬢には過酷だと言いたいのだろう。確かに普通の令嬢なら蝶よ花よと大事に育てられ、ろくに徒歩で歩いた事も無いだろう。
だが妹は違う。
侯爵夫人や息子のハリソンは婚約に否定的で嫌がらせをしていた。交流の為に侯爵家に行った帰り、二人が馬車を勝手に断り自宅まで歩いて帰って来る事も多々あった。学園の寮生活では着替えや風呂の手伝いは無く、今では洗濯も自分でしている。
……妹よ、お前は大分規格外な令嬢になってしまったな。だがそれが今役に立つぞ。
「それは問題無い。さて、両親をどう説得するか」
「ニールセン子爵子息、貴殿は反対しないのか?」
ずっと済ました顔をしていたフリューゲル殿が驚いたのか目を丸くしてこちらを見る。その間抜けな表情に少しだけ好感が持てた。
「私の妹は良くも悪くも規格外でね。話の続きの前に、その堅苦しい呼び方は止めてくれ。私はサイオス、妹はルナだ。同じ名字だ名前で呼んでくれ」
「分かった。それでサイオス殿、ルナ嬢を村に行かせて本当に良いのか?」
「構わんよ。妹は規格外と言っただろう。学園の寮で全てを一人でしているので問題は無い。早急に村に行く手続きを始めようじゃないか」
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