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婚約破棄編
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しおりを挟む私を中心にして足元に輝く魔法陣が広がる。火炎系魔法を意味するオレンジ色の魔法陣が炎の様に広がって完成した。
「火炎竜!」
炎の攻撃魔法を繰り出そうとしたが、ポンッと軽い音と共に一瞬で魔法陣は消滅し何も起きなかった。
「……またですかニールセンさん」
「す、すみません」
額に手を当てて深いため息を吐いたのは、学園専属講師のアラン先生。そして、魔法に失敗した私はルナ・ニールセン子爵令嬢。
私は産まれた時から魔力が強かった。周囲は未来の大魔法使いの誕生だと騒いだらしい。魔法を学ぶ国立ロータス学園に最年少で入学したものの、魔法が成功した事は一度もない。
今日も居残り補習授業中だが、魔法発動の条件である魔法陣は作れるのに、何故か魔法陣は完成した傍から消えていく。世界で名だたる研究者の方や著名なお医者様にも原因が分からない謎の状態。そもそも、魔力の量や資質が無ければ魔法が魔法陣自体が現れないので、原因は魔力ではなく私自身の何かと言われている。そして、今日も魔法発動しない私は、“ポンコツ魔法使い”と呼ばれている。
「もう、遅いですし今日はここまでにしましょう」
「ありがとうございました」
先生から終了を告げられて肩を落とす私に、先生は小さな唸り声を上げた。え?まだ何かあるの?もうお腹空いたよ。
「貴女は龍人に会った事がありますか?」
「へ?龍人……いいえ、無いです」
多種多様な種族を受け入れているマルコネル王国。黒髪と金色の瞳。そして、縦長の瞳孔が特徴の彼らは、少数派に位置する存在だったはず。滅多に出会う事のない彼らとはすれ違った事もなかった。
「もしかしたらなんですが、龍人の方なら原因が分かるかもしれないのです」
先生の“原因が分かる”という言葉に驚きながら続きを聞いていると、龍人はその名の通り龍=神龍の血を引く人々で山奥に小さな村が存在している。龍の血の影響で魔力が強いだけではなく、知能も身体能力も高く騎士団や魔法師団の団長や隊長を勤めているとか。いや、そんなすごい人達に会ったこともないし、会える機会もありませんよ。
「私の知り合いに龍人がいるので、貴女さえ良ければ診て貰いませんか?」
「え?そんな事をお願いしても、本当にいいんですか?」
「えぇ、私としても納得出来ない事が多々あるのでハッキリさせたいですしね」
あー、本当にすみません、私のせいですよね。先生もほぼ毎日、補習に付き合ってもらっているのに成果が出ませんものね。最近は目の下にクマが出来てますしね。
「今度の大舞踏会は出席ですか?」
「はい、一応、婚約者もいますので一緒に行きます」
「あーそうでしたね。彼ももう少し言い方を考えてくれると、こちらも有難いんですがね。その日に会える様に話しますが良いですか?」
「ぜひお願いします!」
先生は苦笑いしながら頷くと、先に教室を出て行った。私も教科書を片付けると学生寮に戻って行った。
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