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理解不能です

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 昨日、お父様と大公様は夕食の時間まで、二人で何かを話していた。婚約破棄をどう進めるかの話だと思うけど、二人の笑顔が余りにも怖くて私と義姉達は何も聞けなかった。大公様が帰り際に私を呼ばれ、暫く学園へ送迎をするから支度が済んだら待つように言われた。断ろうとしたけど、お父様も了承済みと言われたら頷くしかなかった。

 そして、朝から学園に到着した私は、非常に目立っている。こんなに回りの視線が気になるなんて初めてだわ。
 特に女子生徒の視線が痛いわ。そう思いながら大公様の手を借りて馬車から降りると、珍しく朝からエリック様が現れた。

「貴様、婚約者の癖に、朝から浮気とは良い度胸だ」

 私と目が合った瞬間、顔を赤くしたかと思うと、急に怒りも顕に睨んでいる。彼に言われた言葉に驚いて固まった私に向かって、大きな足音を鳴らしながら近付いて来たエリック様が手を伸ばして腕を掴もうとしたが大公様に払われた。その事に更に怒りを増したエリック様は、手を払った相手を見て『アレク・リーベル大公』と気付いて顔色が変わった。赤から白に一瞬で変わって忙しい人。

「あ、あ、あな……たは」

「久しいな、エリック。獣騎士の訓練生が何故、この時間に学園にいる?」

「えっと、いや……そ、それはその……きょ、今日は体調が悪くて……」

 二人の会話から獣騎士の訓練を受けている筈のエリック様は、本来なら訓練場にいる時間らしい。訓練を受けているって事は、一応、婚約の条件の家業の手伝いをする気があったのかしら?でも、大公様との関係を誤解をすると言う事は、大公様が我が家と故意にしていることをご存じない?

「ほう、しかし、今、学園に居るという事は、体調に問題は無いのだな?」

「へ?えっ?あっ、はい」

 体調が悪いとか治ったとか明らかな嘘をつくエリック様を見て、大公様がニヤリと笑い威圧を掛ける。

「そうか。では、今から私が直々に訓練をつけてやろう」

「はぁ!?い、いえ、め、滅相もございません!私ごときに」

 えっ?誰かしら?エリック様の影武者?低姿勢で話すエリック様を初めて見た私は、きっと目が点になってる。大公様を見上げると、私の視線に気付いて首を傾げて言葉を促す仕草をする。
 そのギャップは何ですか?回りの女子生徒から黄色い悲鳴が聞こえますよ?

「いえ、大公様。送って頂きありがとうございました」

「あぁ、では帰りにまたな。エリックは私と共に来い」

 私には笑顔を向けていた大公様がエリック様を睨む。睨まれたエリック様は、小さな声で返事をすると、肩を落として大公様の後に続いている。その横にいるシェリーは不満気に、尻尾でエリック様を叩きながらついていく。

この状況を何て言ったかしら……
エリック様が何をしたいのか理解不能ですわ
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