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中編
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「蔑ろ……私の態度が招いた……」
「えぇ、そうです。お茶会どころかエスコートすらされない婚約者は不要だと言われて階段から突き落とされましたわ」
自分の態度の何が悪かったのか理解する前に、彼女から続けられた言葉は衝撃的だった。
『突き落とされた?エスコートしていない?』
頭の中で整理出来ずに茫然としている私に、彼女は遠慮なく言葉を続けた。
「最初の怪我は半年前ですわよ?怪我をしたと連絡しても返事もなく見舞いにも来ない婚約者。私は皆の笑い者でしたわ」
「そんな手紙は……」
「私が直接、お届けに伺ったので間違いなく届いております」
届いていないと否定しようとした私の言葉は、彼女の横に寄り添う侍女に遮られる。普段なら礼儀知らずと叱る所だろう。しかし、私は読んだ記憶がない。
「読んでいないのですから記憶になくて当然で御座います。侍女が渡した手紙を机の上に投げて、後で読むとお答えしたのですから」
淡々と呆れも混ざるその声は、婚約者のものとは思えずどこか他人事に聞こえた。そうだ。親しみも優しさもなくただ説明するだけの声だ。
「直接渡された手紙を読まない。そんなマナー違反は一度では御座いませんわ。貴方のご両親が放置されている手紙を複数確認した事が証拠ですわ」
両親が確認したのなら自宅にも寮にも未開封の手紙があると言う事か?現実の酷さに何も言えずにいると、彼女は大きなため息を吐き出した。
「そのご様子ではご両親から届いた書類だけご覧になって、こちらに来られたのでは?」
「あぁ、すまない」
「今更、謝罪など結構です。謝られても怪我が治る訳ではありませんもの」
謝罪を拒否され改めて彼女の姿を確認すると、左足を引きずり左頬には大きなガーゼ。そして、遠目でも分かる濃い色の眼鏡。
「その眼鏡は……なぜ……」
「はぁ……三ヶ月前に階段から落ちた時、顔を怪我しましたの。当然、目にも傷が出来ました」
自分の頭の中にあった婚約者との対面の図式はガラガラと音を立てて崩れ、目の当たりにした現実に理解が追い付かず返事も返せない愚か者の姿しかない。侍女が睨みながら彼女は歩く事も辛いのだと言った。
「ターナ、もう良いわよ。そんな事も気付かない人だから、入院して学園にいなかった事にも気付かないのよ」
「あ……」
「卒業後は隣国にて治療に専念したく思いますので、早急のご対応をお願い致します……もう貴方の顔も思い出せませので宜しいですか?」
自分が何も言えずにいる中、彼女は用はないと頭を下げると侍女と共に迎えの馬車に乗り込んだ。その馬車が見えなくなるまで見送ると、急いで寮の部屋へと戻り手紙を探す。机の下の大きな引き出しの中には未開封の手紙の山が現れた。ザッと見ただけで二十通。
震える手で一枚取れば綺麗な字で自分の名前が書いてある。自分がした事の重大さに気付いて膝から崩れ落ちていた。
「えぇ、そうです。お茶会どころかエスコートすらされない婚約者は不要だと言われて階段から突き落とされましたわ」
自分の態度の何が悪かったのか理解する前に、彼女から続けられた言葉は衝撃的だった。
『突き落とされた?エスコートしていない?』
頭の中で整理出来ずに茫然としている私に、彼女は遠慮なく言葉を続けた。
「最初の怪我は半年前ですわよ?怪我をしたと連絡しても返事もなく見舞いにも来ない婚約者。私は皆の笑い者でしたわ」
「そんな手紙は……」
「私が直接、お届けに伺ったので間違いなく届いております」
届いていないと否定しようとした私の言葉は、彼女の横に寄り添う侍女に遮られる。普段なら礼儀知らずと叱る所だろう。しかし、私は読んだ記憶がない。
「読んでいないのですから記憶になくて当然で御座います。侍女が渡した手紙を机の上に投げて、後で読むとお答えしたのですから」
淡々と呆れも混ざるその声は、婚約者のものとは思えずどこか他人事に聞こえた。そうだ。親しみも優しさもなくただ説明するだけの声だ。
「直接渡された手紙を読まない。そんなマナー違反は一度では御座いませんわ。貴方のご両親が放置されている手紙を複数確認した事が証拠ですわ」
両親が確認したのなら自宅にも寮にも未開封の手紙があると言う事か?現実の酷さに何も言えずにいると、彼女は大きなため息を吐き出した。
「そのご様子ではご両親から届いた書類だけご覧になって、こちらに来られたのでは?」
「あぁ、すまない」
「今更、謝罪など結構です。謝られても怪我が治る訳ではありませんもの」
謝罪を拒否され改めて彼女の姿を確認すると、左足を引きずり左頬には大きなガーゼ。そして、遠目でも分かる濃い色の眼鏡。
「その眼鏡は……なぜ……」
「はぁ……三ヶ月前に階段から落ちた時、顔を怪我しましたの。当然、目にも傷が出来ました」
自分の頭の中にあった婚約者との対面の図式はガラガラと音を立てて崩れ、目の当たりにした現実に理解が追い付かず返事も返せない愚か者の姿しかない。侍女が睨みながら彼女は歩く事も辛いのだと言った。
「ターナ、もう良いわよ。そんな事も気付かない人だから、入院して学園にいなかった事にも気付かないのよ」
「あ……」
「卒業後は隣国にて治療に専念したく思いますので、早急のご対応をお願い致します……もう貴方の顔も思い出せませので宜しいですか?」
自分が何も言えずにいる中、彼女は用はないと頭を下げると侍女と共に迎えの馬車に乗り込んだ。その馬車が見えなくなるまで見送ると、急いで寮の部屋へと戻り手紙を探す。机の下の大きな引き出しの中には未開封の手紙の山が現れた。ザッと見ただけで二十通。
震える手で一枚取れば綺麗な字で自分の名前が書いてある。自分がした事の重大さに気付いて膝から崩れ落ちていた。
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