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プロローグ
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ーーーーなんで、こんな目に合わなくちゃいけないんだよ…
石畳と少年を、仄暗い雨が打ち付ける。
蹴られた場所を抱えるように、少年《ジーク》は地面に横たわっていた。
地面に跳ね返った飛沫が顔にかかるが、拭う余力もなく
込み上げる胃液と痛みに唯々耐える…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
少年は路地裏にいた。
所謂、孤児という立場だった…
自分の親の顔も、名前も知らず
どこで生まれたのか、どこから来たのかも知らない。
一番古い記憶といえば、5日前だが
既に人の住まなくなったのであろう崩れかけの廃屋にいたという事だった。
自分の近くには、《ジーク》と刺繍された布と菱形の木彫り細工と革紐の首飾りだけ…
木造だったのか腐って柱が折れ崩れかけている壁や
板張りは残っているが、穴が開き、腐り落ちて基礎の石積みが見えている床
頼りなく柱をぶら下げ、2/3は板が滑り落ちている屋根…
少年は自分の周りを、眺めていた。
どれぐらい経ったのだろうか…
しかし、人間の体というのは厄介なものである。
動かなくても、腹が鳴り…何も口しなければ、渇きと飢えに襲われた。
幼い少年は、短い四肢を動かし
雨が降った日は、水溜まりで泥水を啜り
次の日には、家の扉のない入口の先に生えている草も食べてみた。
それでも、満たされることはなく
少年は徐に家先から続く道を下っていった。
道と辛うじて呼べるのだろうか、草木が禿げ土が露出している地面を辿って行くと
自分の背丈はあろうかという石垣が目の前に現れ、道が左右に枝分かれをしている…
少年は石垣に手をかけ、少し背を伸ばし先を覗きみると、
その眼前には、草原が広がり、もっと低い場所に自分が住んでいる家屋をもっと上等にした
赤、青、茶、黒など、様々な色の屋根を備えた家々が並んでいる。
その家々に囲われるように、青を濃くした海があり、海はずっと先には見えなくなるほど続いているようだった。
その家並みから所々、石造りの四角柱が伸びており、それの真ん中の空洞から煙が上がっているのが見えた。
少年はその景色を初めて見るようで、暫し眺めていたが、
その瞬間 草原の土や葉をなでるような暖かくも嗅いだことのない生臭い匂いを連れた風が頬を撫でる。
ーーーーーッ!?!?
自分の、皮脂で汚れてはいるが、光に透け白とも見まがうような、銀髪を巻き上げながら
風と一緒にやってきた、香りに少年は旋律した…
香ばしくもあり、奥歯の脇の頬の裏側の奥から止めどなくあふれ出る唾液を感じ
何かを考える前に、走ると呼ぶのもおこがましい態勢で駆け出した。
何処をどう通ったのか、どうやって辿り着いたのか、
ようやく少年は、鼻孔をくすぐっていた香りの正体に行き着いた。
石畳と少年を、仄暗い雨が打ち付ける。
蹴られた場所を抱えるように、少年《ジーク》は地面に横たわっていた。
地面に跳ね返った飛沫が顔にかかるが、拭う余力もなく
込み上げる胃液と痛みに唯々耐える…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
少年は路地裏にいた。
所謂、孤児という立場だった…
自分の親の顔も、名前も知らず
どこで生まれたのか、どこから来たのかも知らない。
一番古い記憶といえば、5日前だが
既に人の住まなくなったのであろう崩れかけの廃屋にいたという事だった。
自分の近くには、《ジーク》と刺繍された布と菱形の木彫り細工と革紐の首飾りだけ…
木造だったのか腐って柱が折れ崩れかけている壁や
板張りは残っているが、穴が開き、腐り落ちて基礎の石積みが見えている床
頼りなく柱をぶら下げ、2/3は板が滑り落ちている屋根…
少年は自分の周りを、眺めていた。
どれぐらい経ったのだろうか…
しかし、人間の体というのは厄介なものである。
動かなくても、腹が鳴り…何も口しなければ、渇きと飢えに襲われた。
幼い少年は、短い四肢を動かし
雨が降った日は、水溜まりで泥水を啜り
次の日には、家の扉のない入口の先に生えている草も食べてみた。
それでも、満たされることはなく
少年は徐に家先から続く道を下っていった。
道と辛うじて呼べるのだろうか、草木が禿げ土が露出している地面を辿って行くと
自分の背丈はあろうかという石垣が目の前に現れ、道が左右に枝分かれをしている…
少年は石垣に手をかけ、少し背を伸ばし先を覗きみると、
その眼前には、草原が広がり、もっと低い場所に自分が住んでいる家屋をもっと上等にした
赤、青、茶、黒など、様々な色の屋根を備えた家々が並んでいる。
その家々に囲われるように、青を濃くした海があり、海はずっと先には見えなくなるほど続いているようだった。
その家並みから所々、石造りの四角柱が伸びており、それの真ん中の空洞から煙が上がっているのが見えた。
少年はその景色を初めて見るようで、暫し眺めていたが、
その瞬間 草原の土や葉をなでるような暖かくも嗅いだことのない生臭い匂いを連れた風が頬を撫でる。
ーーーーーッ!?!?
自分の、皮脂で汚れてはいるが、光に透け白とも見まがうような、銀髪を巻き上げながら
風と一緒にやってきた、香りに少年は旋律した…
香ばしくもあり、奥歯の脇の頬の裏側の奥から止めどなくあふれ出る唾液を感じ
何かを考える前に、走ると呼ぶのもおこがましい態勢で駆け出した。
何処をどう通ったのか、どうやって辿り着いたのか、
ようやく少年は、鼻孔をくすぐっていた香りの正体に行き着いた。
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