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心配だったから!
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「おおおおおおお!?」
教室中がざわめく。
はい、言われなくてもわかっています。
男子の憧れである桃ちゃんがベルの役をするって言ってるのに、どこからどうみても普通な私が美女のベル役に立候補するなんて、頭のネジが外れたと思われてもおかしくない。
「立候補してもいいなら……オレ、オレも野獣役がしたいです!」
「ボクも!」
「それならオレだって!」
私の立候補につられて男子も野獣様の役に立候補をしはじめる。
おそらく、桃ちゃん目当てだろう。
「ちょっと、鮫嶋くんが野獣役って言ったでしょう!?」
桃ちゃんも騒ぎ出し、教室の空気は荒れに荒れた。
「ごおっほん! お前ら落ち着け! みんなが劇に意欲的なのよくわかったし、それは嬉しいが言い合いは良くない。人気の出そうな野獣とベルの役は、みんなが『この人にやってほしい』と思う生徒に投票する形にしよう。もちろん、立候補してない生徒にも投票してくれてかまわない。明後日のロングホームルームに投票してもらうから、それまでに各自考えておくように。それじゃあ、次は具体的に他にどんな役割が必要か考えていこう」
投票?! 終わった……せめてじゃんけんで決めるなら私にも勝算があったのに!
落ち込む私を後目に、熊谷先生はロングホームルームを進めていった……。
ロングホームルームが終わったあとも、耳を澄ますと文化祭の話が聞こえてくる。
美女と野獣のベル役については、特に話題になっているようだった。
「やっぱ美女なら兎沢さん? ほかのクラスの男子も喜ぶでしょ」
「でも、野獣役が鮫嶋くんなら、同じいきもの係の白魚さんの方がうまくいくんじゃない?」
「可愛さでは兎沢さんかもだけど、白魚さんだってでしょ可愛いでしょ」
「意外と草間さんもベル役が似合いそうだけど」
「私に投票があったらどうしよ~!?」
「いや、それはない」
みんな楽しそうに、でも真剣に配役について考えてくれているようだった。
今から私にできることがあるだろうか。演技力でもアピールする? とでも言いたいところだけど、生まれてこのかた劇の主人公なんてしたことがない……。
桃ちゃんを見ると、男子生徒に積極的に声をかけているようだった。
勝ち目、ないかもしれない。
***
放課後、鮫嶋くんと一緒に帰り始める。
今日は一段と無口になっていた鮫嶋くんだったけれど、下校時刻になってようやく重たい口を開いた。
「な、なんで俺があんな目立つ役に選ばれるんだ……」
鮫嶋くんは、複雑そうな顔をしている。
「そ、それは……嫌かもしれないけれど、みんなが鮫嶋くんと打ち解けてきた証じゃないかな。元々イケメンだと思われてたけど、怖くて話しかけられなかっただけだと思うし」
「イケメン? 俺がか?」
「じゃないと野獣……ていうか王子様役にぴったりなんて言われないよ」
「野獣だけならまだわかるんだけど」
鮫嶋くんって、自分に自信がないのかもしれない。目立つ役に担ぎ上げられたのは、正直かわいそうな気がしなくもないけれど……。
「ところで、愛奈はなんでベル役に立候補したんだよ?」
「そ、それは……」
鮫嶋くんが好きだから。なんて言えるはずない。恋をしているのは自覚したけど、はっきり気持ちを伝えるのとはまた別の話だ。鮫嶋くんは不思議そうな顔をして私を見つめてくる。
「鮫嶋くんのことが心配だったからだよ! やっぱり鮫嶋くんのことをよくわかっているのは同じいきもの係で、同居もしている私が一番でしょ!? 鮫嶋くんが安心して野獣役をできるように、そう思ったの!!」
本心じゃない言葉がぺらぺらと出てきてしまう。桃ちゃんに鮫嶋くんをとられたくなくて、勢いで立候補したなんて口が裂けても言えない。
「……ふーん。そっか。気遣ってくれて、サンキュ」
「ど、どういたしまして」
しばらくは文化祭の準備でロングホームルームが頻繁にある。
投票の日までに、なにかいいアイディアが思いつくといいんだけど。
教室中がざわめく。
はい、言われなくてもわかっています。
男子の憧れである桃ちゃんがベルの役をするって言ってるのに、どこからどうみても普通な私が美女のベル役に立候補するなんて、頭のネジが外れたと思われてもおかしくない。
「立候補してもいいなら……オレ、オレも野獣役がしたいです!」
「ボクも!」
「それならオレだって!」
私の立候補につられて男子も野獣様の役に立候補をしはじめる。
おそらく、桃ちゃん目当てだろう。
「ちょっと、鮫嶋くんが野獣役って言ったでしょう!?」
桃ちゃんも騒ぎ出し、教室の空気は荒れに荒れた。
「ごおっほん! お前ら落ち着け! みんなが劇に意欲的なのよくわかったし、それは嬉しいが言い合いは良くない。人気の出そうな野獣とベルの役は、みんなが『この人にやってほしい』と思う生徒に投票する形にしよう。もちろん、立候補してない生徒にも投票してくれてかまわない。明後日のロングホームルームに投票してもらうから、それまでに各自考えておくように。それじゃあ、次は具体的に他にどんな役割が必要か考えていこう」
投票?! 終わった……せめてじゃんけんで決めるなら私にも勝算があったのに!
落ち込む私を後目に、熊谷先生はロングホームルームを進めていった……。
ロングホームルームが終わったあとも、耳を澄ますと文化祭の話が聞こえてくる。
美女と野獣のベル役については、特に話題になっているようだった。
「やっぱ美女なら兎沢さん? ほかのクラスの男子も喜ぶでしょ」
「でも、野獣役が鮫嶋くんなら、同じいきもの係の白魚さんの方がうまくいくんじゃない?」
「可愛さでは兎沢さんかもだけど、白魚さんだってでしょ可愛いでしょ」
「意外と草間さんもベル役が似合いそうだけど」
「私に投票があったらどうしよ~!?」
「いや、それはない」
みんな楽しそうに、でも真剣に配役について考えてくれているようだった。
今から私にできることがあるだろうか。演技力でもアピールする? とでも言いたいところだけど、生まれてこのかた劇の主人公なんてしたことがない……。
桃ちゃんを見ると、男子生徒に積極的に声をかけているようだった。
勝ち目、ないかもしれない。
***
放課後、鮫嶋くんと一緒に帰り始める。
今日は一段と無口になっていた鮫嶋くんだったけれど、下校時刻になってようやく重たい口を開いた。
「な、なんで俺があんな目立つ役に選ばれるんだ……」
鮫嶋くんは、複雑そうな顔をしている。
「そ、それは……嫌かもしれないけれど、みんなが鮫嶋くんと打ち解けてきた証じゃないかな。元々イケメンだと思われてたけど、怖くて話しかけられなかっただけだと思うし」
「イケメン? 俺がか?」
「じゃないと野獣……ていうか王子様役にぴったりなんて言われないよ」
「野獣だけならまだわかるんだけど」
鮫嶋くんって、自分に自信がないのかもしれない。目立つ役に担ぎ上げられたのは、正直かわいそうな気がしなくもないけれど……。
「ところで、愛奈はなんでベル役に立候補したんだよ?」
「そ、それは……」
鮫嶋くんが好きだから。なんて言えるはずない。恋をしているのは自覚したけど、はっきり気持ちを伝えるのとはまた別の話だ。鮫嶋くんは不思議そうな顔をして私を見つめてくる。
「鮫嶋くんのことが心配だったからだよ! やっぱり鮫嶋くんのことをよくわかっているのは同じいきもの係で、同居もしている私が一番でしょ!? 鮫嶋くんが安心して野獣役をできるように、そう思ったの!!」
本心じゃない言葉がぺらぺらと出てきてしまう。桃ちゃんに鮫嶋くんをとられたくなくて、勢いで立候補したなんて口が裂けても言えない。
「……ふーん。そっか。気遣ってくれて、サンキュ」
「ど、どういたしまして」
しばらくは文化祭の準備でロングホームルームが頻繁にある。
投票の日までに、なにかいいアイディアが思いつくといいんだけど。
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