上 下
1 / 1

ラブ・クラ荘にようこそ!!

しおりを挟む
春、桜が舞い散る季節。
そして、新生活が始まる季節。

私、七瀬 夏菜 (16歳)も、田舎から憧れの都会東京に上京して来た。
親にはものすごく反対されたけど、それでも都会への憧れは消えることなく、なんとか説得して東京の高校に受かれば上京してもいいとお許しが出た。

死にものぐるいで勉強しこの春、東京にある大学に入学することができた。

『んっ~!!やっぱり田舎と全然違うなぁ~迷子にならないようにしないと!』

スマホの地図を開き、目的の場所を確認する。

ラブ・クラ荘。
私がお世話になる共同アパートだ。
家賃が安く、なおかつ通う大学からも近い。

地図を確認しながら、新生活の第1歩を踏み出す。

そして...

『ココ...ドコ..??』

当たりをキロキロするが、それらしい建物はない。

『あれっ~..確かあっちだったんだけど..』

そう言って行ってみるものの、結局辿り着けず同じ道に出てしまう。

実はこの現象、スマホが壊れるのでは無く私が原因なのだ。
小さい頃から方向音痴で、1人で友達の家に遊びに行けば必ずと言っていいほど迷ってしまう。

この特徴がある事も、両親が東京に上京を反対した理由の一つでもあるんだろうなぁ..

立ち尽くし途方に暮れていると、ふと肩を叩かれ振り返る。

そこには、絹糸のような長い綺麗な金色の髪に、宝石のように青い瞳。
すらっとした立ち姿に、綺麗に整った顔。
正しくと言った印象。

私はしばらくボーッとその姿を眺めてしまった。

「あの..大丈夫ですか?」

彼の一言に我に返り、急に顔が熱くなる。
そりゃ人の顔ジロジロ見たら、そんな反応にもなるよね..

『す.すみません!!』

「いえいえ。私も急に話しかけてしまい申し訳ありません。どうやらお困りのご様子だったので。」

『あはは..実は東京に住むことになって、その場所に向かおうとしたんですけど..方向音痴のせいでなかなかたどり着けなくて..』

「そうだったんですか?あの、地図拝見してもよろしいですか?」

そう言った彼にスマホを手渡し、行きたい場所を教える。
彼は現在の位置と、地図を見比べる。
その姿も、絵になってしまうのだからイケメンと言う人種は恐ろしい..

「ここでしたら、私も案内しますよ?丁度用事も住んだ後ですし」

そう言った彼は私にスマホ渡し、そう提案して来てくれる。

『え?!い、良いんですか..?』

「はい。あ、自己紹介がまだでしたね!私は風谷 風魔かぜたに ふうまと言います。よろしくお願いしますしますね、さん」

『はい!よろしくお願いします!...あれ?名前..』

「さ!行きましょう」

彼、風谷さんは私の荷物を持ち歩き出す。
一瞬違和感があったが、風谷さんを見失う訳にも行かず気のせいと片付け、そのあとを追うようにまた歩き出した。

しばらく歩いていくうちに、木々が増えて行き自然を感じられる。
ビルや建物だらけの場所に現れた、オアシスのような空間。
揺れる葉の隙間から差し込む春の日差しは、とても心地良かった。

すると、目の前におとぎ話とかで出てきそうなお屋敷のような建物が見えて来る。
大きい門が音を立てて開く。
こんな所が家賃たったの1万円って..

「着きましたよ。ここが目的地、ラブ・クラ荘です」

『あ、ありがとうございます風谷さん!』

「困ってる時はお互い様ですよ」

そう言って微笑む彼は、神々しくとてもじゃないが直視出来なかった。

すると突然、行き良いよく玄関の扉が開きそこから何かがこちらに飛び出してくる。

『うわっ?!』

咄嗟の出来事で避け切れず、そのまま押し倒される形で尻もちを着いてしまう。

『いっ..』

「アイツ..本気で投げ飛ばしやがってぇ..!」

ゆっくりと目を開け状況を理解しようとすれば、目の前には言葉に言い表せないほど美しい顔があった。
ルビー見たいな赤い目に、長いまつ毛と綺麗な黒髪を後ろで結んで居る。

『綺麗..』

自然と出た一言に、これがこちらに気づいたのか少し驚いた表情を浮かべた後、立ち上がり私を見下す。

「お前トロイな、さっさと立てよそこに居ると邪魔だろ」

『なっ!貴方が突然吹っ飛んできたんでしょ?!』

私は咄嗟に立ち上がり、声を荒らげる。
それをうるさいと言わんばかりに耳を塞ぐ仕草を撮る彼に、予定に腹が立つ。

「そもそも俺悪くねぇし!あいつが俺の事ぶっ飛ばさなかったらこんな事なってなかったつの!」

そう言って玄関の方を指さすと、そこには凛とした様子で短い赤毛が立っていた。

「いや、お前が僕の前にいて邪魔だったから投げ飛ばしただけだ。」

無症状のまま淡々と言い放った彼に、詰め寄りメンチを切る黒髪の青年。

そこに今まで黙っていた風谷さんが、ゆっくりと近寄り両手を振り上げ、そのままの勢いで2人の頭にチョップをかました。

スコーン!っといい音が鳴った気がしたが、2人はその場でしゃがみこみ頭を抱え悶絶する。

「何すんだよ!金髪頭!!」

「なぜ僕まで..理解不能..」

「二人とも?いい加減にしてくださいね?喧嘩するのは良いですけど..あまりやり過ぎるようだったら..分かりますね?」

そう笑顔を向けた彼だったが、そこから隠しきれない圧を感じる。
優しい人ほど怒らせては行けないとよく言ったものだけど..確かにその通りだなと実感した。

「はぁ..全く..新しい人が来たって言うのに..」

そうため息を着く彼は、私の方を振り返った。

「先程はお見苦しいところをお見せしましたね。改めてこの2人はここの住人で、黒髪の方は黒闇 千理こくや せんりそっちの赤髪の方は、火轟 憐火ひごう れんかと言います。2人共、この方が今日ここに入居する七瀬 夏菜さんですよ」

そう紹介され、ハッとなり勢いよくお辞儀する。

『よ、よろしくお願いします!』

「んっ。てかなんで一緒に来てるんだよ」

「中々来ないので様子を確認しに行ったら、迷子になってた見たいで」

「あっそ、てっきり恋人でも作ってきたと思った」

そう言った彼に、再び手を上げる。
慌てて頭を抑え、ガードする様に後ろに下がる。

「さて、とりあえず部屋に案内しますね。ここまで来るのに大変だったでしょうし少しゆっくりしてください」

『あ、はい!ありがとうございます!』

「それと..」

それと同時に、私の周りを春風が桜の花びらを舞い上がらせていく。

「ようこそ。ラブ・クラ荘へ」

その言葉に、私の気持ちは高ぶっていた。
これから始まる新しい生活。
期待と不安が入り交じりながらも、これからここで起きる日常にワクワクが止まらなかった。

そう、この時の私は知らなかったんです。

まさか..そんなが..

に変わるなんて..

この時から少しづつ、私は混沌の歯車へと飲まれていくことになるのです。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

処理中です...