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8.真夜中(ミーナ)

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 ミーナが重いまぶたを薄ら開くと、当たりは真っ暗になっていた。

(何…してたんだろ…?)

記憶が飛んでる。朝イリヤが会いに来たはず。
 発情期を抑える薬は飲んでた。元々ハーフだ。強い発情をするわけではなかった。今日1日は部屋から出ない。誰とも会わなければ、いつものように上手く乗り切れるはずだった。
 そこにイリヤが現れた。今までに感じたことのないむせかえるような甘美な香り。脳が蕩けるような感覚。話をしているだけで、意識が飛びそうになった。

(そう言えば…イリヤは聖力が高いんだった。油断してた)

 なるべく距離を取ろうと思っていたのに、イリヤが抱きしめてきて…ベッドに縛りつけられて…そこから先の記憶がない。

ーー身体は鉛の様に重い。とりあえず、起きようとベッドで身体を捩ると「おはよう」と声が聞こえた。

「ミーナ…もう起きたの?…体は大丈夫?」

 イリヤは固まっているミーナの頬にそっと口付けると、ベッドサイドのランプを付けた。灯りに照らし出されたのは、キスマークと爪跡だらけの体で、青ざめてくるりと体の向きを変えた。

「…ごめんなさいっ!…まって!…何で……服は?!…私…何…した」

 この状況から考えると、それを付けたのは私で…ダメだ。頭がぐるぐるする。 状況からして確実にイリヤは私の発情期に巻き込まれてしまった。
 混乱して何言っているのか自分でもよく分からない。イリヤは慌てふためく私を背後から抱き寄せるて耳元で囁いた。

「ミーナが何したか、聞きたい?」

「えっ…!?」

「一日中僕と繋がってた…何度イッても、まだナカに欲しいって、指で広げて…」

「!!もぅ、やめて!!分かったから!!」

 思わず膝立ちになってイリヤの口を塞いだ。ミーナの反応を見て、イリヤは満足そうにニヤリと笑っている。
 端正な顔立ちで意地悪そうに微笑むイリヤは、前とは比べ物にならない位大人びていた。

(違う…イリヤは出会った頃から大人びてた)

 罪を犯した私をイリヤは助けてくれた。治療はもちろんだけど、1人ぼっちにならないように、毎日のように病室に顔をだしてくれていた。
 始めは捕虜の女がもの珍しいんだろうと冷たくあしらっていた。
 でも、あなたは素っ気ない態度の私にも優しかった。私が話しかけると「元気になってきたね!」と、嬉しそうに笑うあなたが眩しかった。
 話してくれることは、他愛のない話ばかりで子供だなって微笑ましく聞いていた。
 だけど、時々ブルームン国のことや自分の思想を語る横顔は大人びていた。 
 次期国王がイリヤなら、この国は安泰だって…。出会ったばかりの私が思うくらいに、イリヤは王の素質があった。

 いつの間にかあなたの優しい笑顔に惹かれていた。あなたが来てくれるのを、心待ちにしている自分に気付いた。好きだと言われた時も、今日会いに来てくれたことも嬉しくてたまらなかった。
 イリヤの言葉ひとつひとつが、私を包み込んでくれた。忘れていた『幸せ』を思い出させてくれた。
 イリヤのその温かい瞳に…力強く抱きしめてくれる腕に、心も身体も埋めてしまいたい。

(けれど…怖いの)

エレンにしたことは許されない。私の行った人体実験で、多くの人が犠牲になった。『妹の為』なんて、言い訳にしかならない。犠牲になった者達からしたら、私のした事はイーターと変わらない。恨まれても仕方のないことをしてきた。その事実は消せない。

こんな私が幸せになって良いの…? 

こんな私がイリヤのそばに居てもいいの…?

 自問自答を何度も繰り返して、あなたのそばにいることは出来ないってそう答えを出した。
 国王に言われなくても、この気持ちは伝えずに、イリヤの前から姿を消そうと思っていた。

「ミーナ…?」

 膝立ちになったまま止まってしまったミーナに、心配そうにイリヤは声をかけた。

「…なんでも…」

 そう呟いて、離れようと体勢を変えた時だった。膣から溢れた白い液体が太ももを伝って、シーツを汚した。

「ダメだよ、溢したら。約束したよね?今日で妊娠したら、結婚するって…」

「…何…それ…っキャアっ!!」

 言い終わる前にイリヤが覆い被さって、ベッドに倒されてしまった。

「まだ今日は終わってないよ?もう一回注ぐから…今度は溢さないでね?」

「!まって…そんな…やっんっあっ」

 イリヤの指が中にするりと入ってきた。指が動く度にどちらのか分からない液体が中から溢れて、くちゅくちゅと音が響いた。
 ナカで動く指先は、ミーナのいいところを覚えているかのように、そこを何度も刺激してくる。強い快楽に思わず腰が浮く。

「ああっ!っあっああっ!」

 我慢しようと思っても、声が抑えられない。

「っ…すごい…溢れる程注いだのに。ナカはまだ欲しいって締め付けてくる」

 そう言って指を激しく動かした。快楽に蕩けそうになる。その前に、どうしても伝えたかった。

「…イリ…ヤ…」

「んっ…?」

「…ありがとう…」

こんな私を好きだと言ってくれた。追いかけて、ここまで来てくれた。離れていてもずっと守ってくれていたことだって、知っていたから。
 涙が頬を伝う。視界がボヤけて表情も分からない。

 イリヤは「大丈夫だから」と、頬を伝う涙を唇で拭うと、手の動きは止めずに、荒い呼吸で唇を合わせた。貪るように唇に吸い付きながら、柔らかくなっている秘部に、自分のモノをグリっと挿入した。
 腰を掴んで奥に当たるように、逃れられないように押し付ける。パンパンと、身体がぶつかる音が部屋に響く。
 子宮の奥に当たるたび、離れないようにナカが咥え込む感覚が自分でも分かった。
 身体は正直で「離れたく無い」とでも言うように咥え込んで吸い付く。感覚が研ぎ澄まされてる。快楽に身を任せるように喘いだ。突かれるたびに、音が遠のく。自分の嬌声も…イリヤの声も…。

「っ…っ!ちゃんと受け止めて」

 イリヤがビクっと身体を震わせると、ナカに温かいモノが注がれた。子宮が満たされる。
 今度は溢れないように。叶わない願いだとしても、この先もずっとあなたが隣りにいますように。そんな事を願いながら目を閉じた。
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