それでも好き

プロローグ

　幼い頃…。僕は僕のことを助けてくれた、少し年上の女の子を好きになった。

　その女の子は、幼い僕をイーターの襲撃から助けてくれたかっこいい人。

　その後に訪れた地獄のような日々から、また救い出してくれた人。

　大人と言える歳にはなっていないけれど、僕の中にはその人の美しい赤い瞳が焼き付いて離れない。

　記憶の中のその人は綺麗な黒髪を靡かせて『大丈夫だよ』って、手を差し伸べてくれた。

　なんの迷いもなく、薄汚れた僕を抱きしめてくれる優しい人だ。


　僕は…遠くから彼女のことを眺めているだけで幸せだった。

　いつかまた、笑いかけてもらえたら嬉しい。そんなことを思いながら、話しかける勇気すら持てなかった。


　それに…彼女には好きな人がいる。それはもちろん僕じゃない。


　それでも彼女は僕の生きる意味そのものなのだ。