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交わる過去
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ベッドの上で気を失ったように眠るユリアの頬を撫でた。
初めから飛ばし過ぎたな…。と、少し後悔している。
(離れ離れになってから…もうすぐ十年経とうとしてる)
俺はあの日からずっと、ユリアを忘れたことのなかった。出会えたとしても、触れることなんて出来ない。そう思っていた。
それなのに…甘い声で名前を呼んで、潤んだ瞳で抱きつくから。激しくなっても仕方ないと、自分に言い訳をした。
それよりも気になるのは『体が軽くなった』ということだ。
この感覚は…『魔力吸収』された時と似てる。そう思いながら、隣で眠ってしまったユリアを見つめた。
元々俺は身体に合わない量の魔力を持っている。だからこそ定期的に抜かないとこの前みたいな暴発が起きてしまう。
普通の悪魔族は魔力吸収されると動けなくなる。けれど俺の場合は、暴発しそうな程『制御できない魔力』だから、寧ろ身体は軽くなる。
ユリアに再会するまでは、唯一魔力吸収の力をもっている『サキュバス』を使って、それを行っていた。
(…セイレーンは『魔力吸収』の能力があるのか…?まぁ…ユリアが起きてから聞けばいい)
どうしても緩んでしまう口元を覆いながら、ユリアを起こさないようにそっとベッドから降りた。
その瞬間『ガチャ』と、扉の開く音が響いた。
(テルがもう帰ってきたのか…?)
シュウと一緒だったから、もう少し遅いと思っていたのに。思った以上に早かった。
(あ…兄妹だから…『魔力吸収』のこと、知ってるかもしれない)
急いで服を着て部屋を出た。セイレーンの魔力吸収に関しては、ユリアの説明を聞くよりも、テルに聞いた方が解りやすい…気がする。
ユリアだと「ぐゎーっ」とか「ぎゅーん」とか、謎な擬音語を使いそうだけど、テルは理論的に話しができそうだ。
(子供の頃からそうだった…。ユリアの言うことは理解不能だったから…)
しかもユリアは『初めて』じゃ無かったし。ずっと一緒に暮らしてた、テルは初めてユリアが身体を重ねた相手や、その時のことを知っているかもしれない。
魔力吸収されたのが『ノーマル』の場合は最悪死に陥るから。知らずにヤってしまった場合は大変なことになるはずだし。
***
階段を降りた先で、リビングに入ろうとしているテルと出会した。
「…レイか?」そう呟いて目を見開いている。
「お前…ユリアとヤったのに普通に動けるのか…?」
やっぱりテルは知っている。
「身体が重いとか無いのか?」
「別に何ともない」
そう言って腕を振ってみせた。
「思った通り…。魔力量が尋常じゃ無いんだな。暴発させる位だし」
「まぁね?」
俺の父親は悪魔族の王、魔王種と呼ばれる希少種だ。その魔王種の第一子の俺自身も魔力が以上に高くなった。
制御出来ない程に高い魔力量を意図せずに持って産まれてきてしまった。
制御出来ない魔力は暴発する。暴発わや抑えるには吸収してもらうしか無い。
ユリアがもし吸収できるなら…。そう願わずにはいられないんだ。
「…セイレーンもサキュバスと同じように吸収するのか?」
何気なく呟いてしまった。『セイレーン』に、テルはまた固まった。そう言えば、テルには記憶が残っている事を伝え忘れていた。
説明も面倒だし、別にいいやと軽く考えていた。
「やっぱり…お前はあのレイだよな?ユリアにべったりだった…」
テルが笑いながらそう言うから、今度はこっちが驚いてしまった。
「…なんだ。知ってたのか。…で、テルは記憶を消され無かったんだ?」
「記憶を消された…?ああ、そういうことか。消したのは母さんで、理由はユリアを守る為だろ?…何となく理解できた」
俺の言った一言で、テルは全てを理解したようだ。
「正確にいえば消せなかった。俺にセイレーンの力は受け継がなかたけれど、その代わり歌に耐性が有ったから。何となく覚えてるんだ。お城に行ったとか…覚えていることはもちろん口止めされてた。言うとユリアも母さんも死ぬから絶対に話すなって」
そう言いながら、座って話そうか?と、テルがリビングの扉を開いた。促されるままにソファーに座ると、テルはグラスを用意して問いかけた。
「で?レイはどこまで知ってるんだ?」
「エレンさんがセイレーンだって事も、ガイアさんがジヴァ神の末裔って、ことも、ザレスからユリアが狙われてることも知ってる」
テルは安心したかのように、グラスの水を飲み干して笑った。
「ああ…良かった。それならこっちも話が早くて助かる」
こっちのセリフだと言うと、同じようにグラスの水を飲み干した。
「最初の話しに戻るけど…セイレーンは魔力吸収できるのか?」
俺の問いに、正確には分からないけれど。と、前置きした後で静かに話し始めた。
「セイレーンは歌で魅了して精気を吸収する種族なんだ。だから『魔力吸収』を行うことはできる。ただ、どうやって吸収するのかは分からなかった…。母さんはそれをユリアに教える前にいなくなったから」
「……じゃあ、初めてユリアがヤった時に、その吸収方法を知ったってこと?」
テルは罰が悪そうに視線を逸らすと、静かに頷いて大きなため息をついた。
「そいつが『ユリア』の声を聞いて、魅了になったんだ。あの時ユリアは歌って無かった。状況的にヤった後で、ユリアは吸収した魔力を暴発させたんだろって分かった」
「相手は…?無事だったのか…?魔力が低いと吸収で死ぬけど…」
「とりあえず、動けてはいた。魅了状態になった奴は俺が止めたけれど…。大変だった」
思い出したくはないと呟いたテルは、コーナーソファーの角に腰を下ろすと頭を抱えた。
「……もう一度聞くけど…ユリアとヤったんだよな?」
「そうだな。魔力吸収されたって自覚もあるし」
「…さっきから、なんでレイはそんな普通なんだ?」
「逆に何でそんなに焦ってるんだ?」
「…今の状態だとユリアは声を出すだけで周りの人間を魅了してしまうんだぞ?今のところ、どうやったら暴発を防げるのか分からないんだ」
テルでも治し方が『分からない』んだ。そこで初めて『まずい』と思えた。
「前回の『暴発』は、1日位で終わったけど…。レイ…お前魔力強いよな?」
魔力を吸収されても倦怠感を感じない位に強い。小さく頷く俺にテルは話しを続けた。
「…多分…すごくまずいな」
二人で頭を抱えた。セイレーンの力の使い方がいまいち分からない。どれくらい続くのか?自然に放出されるのか?…それとも魔力を消費するのか?
(それなら、使い切れば治るはずだけど)
考えているとガチャりと音をたててリビングの扉が開いた。顔を赤らめてゆっくりとこっちを覗いている。
「ユリア…!」
思わず声をかけてしまった。ユリアが何か答えようと口を開いた。
「ストップ!喋るなよ。ルシウスとの時にどうなったか覚えてるだろ?俺にはセイレーンの力は効かないけど、他の奴らはあの状態になる…」
ユリアは慌てて口を両手で塞ぎコクコクと頷いた。
「ルシウス?……あぁ……。初めての相手のこと?」
「レイ…気持ちは分かるけど、そこに食いつくな……」
「!!レイ!!違うの…っ!!あ…!」
ユリアは焦って口を塞いでいるけどすでに遅かった。頭で声がこだまする。その声が妙に甘美で脳が震えた。
「…ユリア…声出すなって言っただろ?!」
テルがイラついて、部屋の武器ボックスから大剣を取り出している。
そんなことは、どうでもよかった。目に映るユリアが欲しくてたまらなくなった。
他には何も要らないから、今すぐに肌に触れてめちゃくちゃに抱きたいと思った。これが魅了か…と、思っているうちに意識を失った。
初めから飛ばし過ぎたな…。と、少し後悔している。
(離れ離れになってから…もうすぐ十年経とうとしてる)
俺はあの日からずっと、ユリアを忘れたことのなかった。出会えたとしても、触れることなんて出来ない。そう思っていた。
それなのに…甘い声で名前を呼んで、潤んだ瞳で抱きつくから。激しくなっても仕方ないと、自分に言い訳をした。
それよりも気になるのは『体が軽くなった』ということだ。
この感覚は…『魔力吸収』された時と似てる。そう思いながら、隣で眠ってしまったユリアを見つめた。
元々俺は身体に合わない量の魔力を持っている。だからこそ定期的に抜かないとこの前みたいな暴発が起きてしまう。
普通の悪魔族は魔力吸収されると動けなくなる。けれど俺の場合は、暴発しそうな程『制御できない魔力』だから、寧ろ身体は軽くなる。
ユリアに再会するまでは、唯一魔力吸収の力をもっている『サキュバス』を使って、それを行っていた。
(…セイレーンは『魔力吸収』の能力があるのか…?まぁ…ユリアが起きてから聞けばいい)
どうしても緩んでしまう口元を覆いながら、ユリアを起こさないようにそっとベッドから降りた。
その瞬間『ガチャ』と、扉の開く音が響いた。
(テルがもう帰ってきたのか…?)
シュウと一緒だったから、もう少し遅いと思っていたのに。思った以上に早かった。
(あ…兄妹だから…『魔力吸収』のこと、知ってるかもしれない)
急いで服を着て部屋を出た。セイレーンの魔力吸収に関しては、ユリアの説明を聞くよりも、テルに聞いた方が解りやすい…気がする。
ユリアだと「ぐゎーっ」とか「ぎゅーん」とか、謎な擬音語を使いそうだけど、テルは理論的に話しができそうだ。
(子供の頃からそうだった…。ユリアの言うことは理解不能だったから…)
しかもユリアは『初めて』じゃ無かったし。ずっと一緒に暮らしてた、テルは初めてユリアが身体を重ねた相手や、その時のことを知っているかもしれない。
魔力吸収されたのが『ノーマル』の場合は最悪死に陥るから。知らずにヤってしまった場合は大変なことになるはずだし。
***
階段を降りた先で、リビングに入ろうとしているテルと出会した。
「…レイか?」そう呟いて目を見開いている。
「お前…ユリアとヤったのに普通に動けるのか…?」
やっぱりテルは知っている。
「身体が重いとか無いのか?」
「別に何ともない」
そう言って腕を振ってみせた。
「思った通り…。魔力量が尋常じゃ無いんだな。暴発させる位だし」
「まぁね?」
俺の父親は悪魔族の王、魔王種と呼ばれる希少種だ。その魔王種の第一子の俺自身も魔力が以上に高くなった。
制御出来ない程に高い魔力量を意図せずに持って産まれてきてしまった。
制御出来ない魔力は暴発する。暴発わや抑えるには吸収してもらうしか無い。
ユリアがもし吸収できるなら…。そう願わずにはいられないんだ。
「…セイレーンもサキュバスと同じように吸収するのか?」
何気なく呟いてしまった。『セイレーン』に、テルはまた固まった。そう言えば、テルには記憶が残っている事を伝え忘れていた。
説明も面倒だし、別にいいやと軽く考えていた。
「やっぱり…お前はあのレイだよな?ユリアにべったりだった…」
テルが笑いながらそう言うから、今度はこっちが驚いてしまった。
「…なんだ。知ってたのか。…で、テルは記憶を消され無かったんだ?」
「記憶を消された…?ああ、そういうことか。消したのは母さんで、理由はユリアを守る為だろ?…何となく理解できた」
俺の言った一言で、テルは全てを理解したようだ。
「正確にいえば消せなかった。俺にセイレーンの力は受け継がなかたけれど、その代わり歌に耐性が有ったから。何となく覚えてるんだ。お城に行ったとか…覚えていることはもちろん口止めされてた。言うとユリアも母さんも死ぬから絶対に話すなって」
そう言いながら、座って話そうか?と、テルがリビングの扉を開いた。促されるままにソファーに座ると、テルはグラスを用意して問いかけた。
「で?レイはどこまで知ってるんだ?」
「エレンさんがセイレーンだって事も、ガイアさんがジヴァ神の末裔って、ことも、ザレスからユリアが狙われてることも知ってる」
テルは安心したかのように、グラスの水を飲み干して笑った。
「ああ…良かった。それならこっちも話が早くて助かる」
こっちのセリフだと言うと、同じようにグラスの水を飲み干した。
「最初の話しに戻るけど…セイレーンは魔力吸収できるのか?」
俺の問いに、正確には分からないけれど。と、前置きした後で静かに話し始めた。
「セイレーンは歌で魅了して精気を吸収する種族なんだ。だから『魔力吸収』を行うことはできる。ただ、どうやって吸収するのかは分からなかった…。母さんはそれをユリアに教える前にいなくなったから」
「……じゃあ、初めてユリアがヤった時に、その吸収方法を知ったってこと?」
テルは罰が悪そうに視線を逸らすと、静かに頷いて大きなため息をついた。
「そいつが『ユリア』の声を聞いて、魅了になったんだ。あの時ユリアは歌って無かった。状況的にヤった後で、ユリアは吸収した魔力を暴発させたんだろって分かった」
「相手は…?無事だったのか…?魔力が低いと吸収で死ぬけど…」
「とりあえず、動けてはいた。魅了状態になった奴は俺が止めたけれど…。大変だった」
思い出したくはないと呟いたテルは、コーナーソファーの角に腰を下ろすと頭を抱えた。
「……もう一度聞くけど…ユリアとヤったんだよな?」
「そうだな。魔力吸収されたって自覚もあるし」
「…さっきから、なんでレイはそんな普通なんだ?」
「逆に何でそんなに焦ってるんだ?」
「…今の状態だとユリアは声を出すだけで周りの人間を魅了してしまうんだぞ?今のところ、どうやったら暴発を防げるのか分からないんだ」
テルでも治し方が『分からない』んだ。そこで初めて『まずい』と思えた。
「前回の『暴発』は、1日位で終わったけど…。レイ…お前魔力強いよな?」
魔力を吸収されても倦怠感を感じない位に強い。小さく頷く俺にテルは話しを続けた。
「…多分…すごくまずいな」
二人で頭を抱えた。セイレーンの力の使い方がいまいち分からない。どれくらい続くのか?自然に放出されるのか?…それとも魔力を消費するのか?
(それなら、使い切れば治るはずだけど)
考えているとガチャりと音をたててリビングの扉が開いた。顔を赤らめてゆっくりとこっちを覗いている。
「ユリア…!」
思わず声をかけてしまった。ユリアが何か答えようと口を開いた。
「ストップ!喋るなよ。ルシウスとの時にどうなったか覚えてるだろ?俺にはセイレーンの力は効かないけど、他の奴らはあの状態になる…」
ユリアは慌てて口を両手で塞ぎコクコクと頷いた。
「ルシウス?……あぁ……。初めての相手のこと?」
「レイ…気持ちは分かるけど、そこに食いつくな……」
「!!レイ!!違うの…っ!!あ…!」
ユリアは焦って口を塞いでいるけどすでに遅かった。頭で声がこだまする。その声が妙に甘美で脳が震えた。
「…ユリア…声出すなって言っただろ?!」
テルがイラついて、部屋の武器ボックスから大剣を取り出している。
そんなことは、どうでもよかった。目に映るユリアが欲しくてたまらなくなった。
他には何も要らないから、今すぐに肌に触れてめちゃくちゃに抱きたいと思った。これが魅了か…と、思っているうちに意識を失った。
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