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中間試験
8.キリがない(テル)
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助けてと言う叫び声が聞こえた。テルとシュウは共に声の元へ向かったけれど…。すでに強いモンスターが集まっていて、大混乱となっていた。
「ここで待ってて…俺が行く」
シュウが頷いたのを見届けると、すぐさまオークに向かって大剣を振り下ろした。襲われて怪我している子を、何人かシュウの元に運びながらモンスターを倒していく。
その動きを、もう何度繰り返しているだろう。
(まだ応援部隊は来ないのかよ…)
中等部の子たちを守りながら、戦うことがこんなに大変なことだとは思って居なかった。
四方八方から大型のモンスターが攻撃を仕掛けてくる。パニックになって逃げ惑う子や、その場に立ち尽くしてしまう子…。
その子達を1人で守りながら、戦うのは流石に「大変だ」と思った。額から流れる汗を拭う暇も無い。
特に上空のドラゴンが厄介だった。炎を吹き付けてくるし、上に駆け上がると下が疎かになる。
そう思っていた所にレイが現れた。素早い魔法の連弾でドラゴンやオークを次々と凍らせて行く。
「動きを止める程度の氷漬け。息の根は止めてないから。それを壊すのはテルに任せる」
息ひとつ上がっていないレイに驚いていると、それだけ言ってどこかに行ってしまった。
(何だ…アイツは…。異常か?…でも助かった)
格段にモンスター討伐が楽になった。モンスターを倒すペースが上がり、一帯のモンスターはテル1人の力で一掃することができた。
重傷の子2人を抱き抱えた所で、レイが戻って来た。
「すごいな…まさか1人で一掃するとは思って無かった」
今度はレイが目を丸くしながら、辺りの様子を見て言った。
「いや…それこっちのセリフだから…。とりあえず、怪我している子達をシュウの元へ運ぶ。多分…また集まってくる…」
レイは頷くとテルに向かって「運んだら戻ってこいよ」と呟いて手をかざした。目の前にはまたモンスターの大群が押し寄せて来ている。
分かったと返事をして、シュウの元へ走った。シュウは治療中だったけれど、暇そうにしているユリアに大怪我をしている中等部の子を引き渡した。
(戻らないと…)
レイの元へ戻ると、倒す前の状態に戻ってしまっている。上空にはドラゴン…。地上にはオークやゴーレム…。
「どうなってるんだ?」
剣を構えながらも、思わず本音が漏れた。さっきから、もう50体以上のモンスターを倒している。
大型で倒すのも難しいモンスターが、中等部も入れる施設にこんなに沢山いる訳がない。
しかも、すでに1時間以上戦いっぱなしだ。周りに救助隊も集まって来てる。それでも追いついていない。
(…何かがおかしい…)
隣で戦っていたレイにも、徐々に疲れが見え始めた。それはそうだ。俺以上に、レイはモンスターを倒してる。
大型モンスターを一撃で倒す程の魔法の連弾。逆によくここまで持ったなと感心する。
「…さすがに…疲れた…かも」
荒くなった息でレイも呟いた。
「おーい!!やっと見つけた!!」
振り返るとアスカが息を切らせて走ってくるのが見えた。
「全員実戦ルームから出たら一旦ここを閉じるって。アナウンス…聞こえないよね?」
全く聞こえなかった。アスカはまだ残っている人達に避難誘導を行うよう、指示を受けたらしい。
「…どうなってるんだ?」
アスカに聞くと、詳しくはわからないけれどと前置きしてから、話しを続けた。
「操られているかのように、外部からモンスターが入り込んで来てるんだって。それも大型モンスターばかり」
おかしいわよね?モンスターに意思なんてないのに…なんて言って首を傾げている。
(似たような能力を俺は知ってる…)
そんなわけないよな?なんて、自分に言い聞かせながらも不安を払拭できない。
生きている者を操る能力を持っている種族なんて…この世界に一つだけだ…。
(…セイレーンの能力だ……)
でも…ありえない。母さんは死んだんだ。この世にセイレーンは1人しかいないはず。そのたった1人の生き残りがユリアなんだから。だからイーターに狙われてるはずなんだ。
ユリアはここで戦っていたし、モンスターを誘き寄せた所で、アイツになんのメリットもない。
1人考えていると、遠くからアスカを呼ぶ叫び声が聞こえた。
「アスカさん!!こっちに人はもういないです!」
アスカはその声に「ありがとう、ゼル」と声をかけている。叫び声と共に走って来たのは、細身の色白な女の子…?じゃない。
(…違う…男だ…しかも…)
「…この子…カフェの店員じゃ…」
そう、つぶやいた瞬間に隣りにいたアスカが「あー!そうだ!」と大声で叫んだ。
「!!そっか!カフェの子だ!!アイスおまけしてくれた…!どこかで会ったことある気がしてたんだよね…」
ゼルは「そうです。いつもおまけしてました」なんて、嬉しそうに照れ笑いを浮かべている。
「…アスカ…何?お前気付いて無かったのか?」
「どっかで見たことあるなーって、思ってたんだけど。パニック状態でそれどころじゃ無かったの!そんなことより、シュウ達にも伝えに行きましょう!」
アスカは苦しい言い訳をした後で「早く早く!!」と俺たちの先を行った。
「…なんなんだ…アイツ?なぁ、レイ…?」
そんなことを言いながら振り返ると、レイはその場で苦しそうにうずくまっていた。
モンスターの攻撃を受けたとか、どこか怪我をしたとかそんな様子は一切無かった。
「大丈夫か?」と、慌てて駆け寄ると胸の辺りを抑えて、額に汗を滲ませている。
しかもレイの体は異様なほどに熱くなっていた。
「…大丈夫だ…行こう…」
レイは背中に触れた俺の手を振り払うと、立ち上がろうと地面に手をついた。どう見ても大丈夫じゃない。
「…どこか怪我でもしたのか?」
「いいから…俺から…はな…れてくれ」
息も切れ切れに言った。その瞬間レイから炎が上がった。咄嗟にレイのそばから飛び退いた。
(…何だ…何が起きた?)
いきなりの発火。燃えているのはレイ自身だ。肉の焼ける臭い…それに周りまで燃焼し始めた。炎はどんどん広がっていく。
(…このままじゃ…まずいよな…?)
頭をフル回転させた。何が起こっているのかはわからないけれど、アスカなら何か知ってるかもしれない。シュウなら…治癒魔法でレイを治せる。
「待ってろ!すぐに助けを呼ぶ!」
踵を返してアスカを追いかけた。
「ここで待ってて…俺が行く」
シュウが頷いたのを見届けると、すぐさまオークに向かって大剣を振り下ろした。襲われて怪我している子を、何人かシュウの元に運びながらモンスターを倒していく。
その動きを、もう何度繰り返しているだろう。
(まだ応援部隊は来ないのかよ…)
中等部の子たちを守りながら、戦うことがこんなに大変なことだとは思って居なかった。
四方八方から大型のモンスターが攻撃を仕掛けてくる。パニックになって逃げ惑う子や、その場に立ち尽くしてしまう子…。
その子達を1人で守りながら、戦うのは流石に「大変だ」と思った。額から流れる汗を拭う暇も無い。
特に上空のドラゴンが厄介だった。炎を吹き付けてくるし、上に駆け上がると下が疎かになる。
そう思っていた所にレイが現れた。素早い魔法の連弾でドラゴンやオークを次々と凍らせて行く。
「動きを止める程度の氷漬け。息の根は止めてないから。それを壊すのはテルに任せる」
息ひとつ上がっていないレイに驚いていると、それだけ言ってどこかに行ってしまった。
(何だ…アイツは…。異常か?…でも助かった)
格段にモンスター討伐が楽になった。モンスターを倒すペースが上がり、一帯のモンスターはテル1人の力で一掃することができた。
重傷の子2人を抱き抱えた所で、レイが戻って来た。
「すごいな…まさか1人で一掃するとは思って無かった」
今度はレイが目を丸くしながら、辺りの様子を見て言った。
「いや…それこっちのセリフだから…。とりあえず、怪我している子達をシュウの元へ運ぶ。多分…また集まってくる…」
レイは頷くとテルに向かって「運んだら戻ってこいよ」と呟いて手をかざした。目の前にはまたモンスターの大群が押し寄せて来ている。
分かったと返事をして、シュウの元へ走った。シュウは治療中だったけれど、暇そうにしているユリアに大怪我をしている中等部の子を引き渡した。
(戻らないと…)
レイの元へ戻ると、倒す前の状態に戻ってしまっている。上空にはドラゴン…。地上にはオークやゴーレム…。
「どうなってるんだ?」
剣を構えながらも、思わず本音が漏れた。さっきから、もう50体以上のモンスターを倒している。
大型で倒すのも難しいモンスターが、中等部も入れる施設にこんなに沢山いる訳がない。
しかも、すでに1時間以上戦いっぱなしだ。周りに救助隊も集まって来てる。それでも追いついていない。
(…何かがおかしい…)
隣で戦っていたレイにも、徐々に疲れが見え始めた。それはそうだ。俺以上に、レイはモンスターを倒してる。
大型モンスターを一撃で倒す程の魔法の連弾。逆によくここまで持ったなと感心する。
「…さすがに…疲れた…かも」
荒くなった息でレイも呟いた。
「おーい!!やっと見つけた!!」
振り返るとアスカが息を切らせて走ってくるのが見えた。
「全員実戦ルームから出たら一旦ここを閉じるって。アナウンス…聞こえないよね?」
全く聞こえなかった。アスカはまだ残っている人達に避難誘導を行うよう、指示を受けたらしい。
「…どうなってるんだ?」
アスカに聞くと、詳しくはわからないけれどと前置きしてから、話しを続けた。
「操られているかのように、外部からモンスターが入り込んで来てるんだって。それも大型モンスターばかり」
おかしいわよね?モンスターに意思なんてないのに…なんて言って首を傾げている。
(似たような能力を俺は知ってる…)
そんなわけないよな?なんて、自分に言い聞かせながらも不安を払拭できない。
生きている者を操る能力を持っている種族なんて…この世界に一つだけだ…。
(…セイレーンの能力だ……)
でも…ありえない。母さんは死んだんだ。この世にセイレーンは1人しかいないはず。そのたった1人の生き残りがユリアなんだから。だからイーターに狙われてるはずなんだ。
ユリアはここで戦っていたし、モンスターを誘き寄せた所で、アイツになんのメリットもない。
1人考えていると、遠くからアスカを呼ぶ叫び声が聞こえた。
「アスカさん!!こっちに人はもういないです!」
アスカはその声に「ありがとう、ゼル」と声をかけている。叫び声と共に走って来たのは、細身の色白な女の子…?じゃない。
(…違う…男だ…しかも…)
「…この子…カフェの店員じゃ…」
そう、つぶやいた瞬間に隣りにいたアスカが「あー!そうだ!」と大声で叫んだ。
「!!そっか!カフェの子だ!!アイスおまけしてくれた…!どこかで会ったことある気がしてたんだよね…」
ゼルは「そうです。いつもおまけしてました」なんて、嬉しそうに照れ笑いを浮かべている。
「…アスカ…何?お前気付いて無かったのか?」
「どっかで見たことあるなーって、思ってたんだけど。パニック状態でそれどころじゃ無かったの!そんなことより、シュウ達にも伝えに行きましょう!」
アスカは苦しい言い訳をした後で「早く早く!!」と俺たちの先を行った。
「…なんなんだ…アイツ?なぁ、レイ…?」
そんなことを言いながら振り返ると、レイはその場で苦しそうにうずくまっていた。
モンスターの攻撃を受けたとか、どこか怪我をしたとかそんな様子は一切無かった。
「大丈夫か?」と、慌てて駆け寄ると胸の辺りを抑えて、額に汗を滲ませている。
しかもレイの体は異様なほどに熱くなっていた。
「…大丈夫だ…行こう…」
レイは背中に触れた俺の手を振り払うと、立ち上がろうと地面に手をついた。どう見ても大丈夫じゃない。
「…どこか怪我でもしたのか?」
「いいから…俺から…はな…れてくれ」
息も切れ切れに言った。その瞬間レイから炎が上がった。咄嗟にレイのそばから飛び退いた。
(…何だ…何が起きた?)
いきなりの発火。燃えているのはレイ自身だ。肉の焼ける臭い…それに周りまで燃焼し始めた。炎はどんどん広がっていく。
(…このままじゃ…まずいよな…?)
頭をフル回転させた。何が起こっているのかはわからないけれど、アスカなら何か知ってるかもしれない。シュウなら…治癒魔法でレイを治せる。
「待ってろ!すぐに助けを呼ぶ!」
踵を返してアスカを追いかけた。
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