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神様の衣替え
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「ここ数十年、ずっとこの服だな」
宇宙服のような格好した神様がそう言った。
「昔は色とりどりの華やかな衣装が試着しきれないほど溢れていたのに」
もう一人の神様も同じ姿でそう言った。
「一通り楽しんだし、もうそろそろいいかな」
「そうだな、この先はとびぬけた発展はなさそうだし」
「そうね、新しい住居もできそうにないし」
神様たちは口々にそう言って、思い出に浸るように辺りを見渡した。
洞窟、祠、神社、神殿。今まで人類が神様のために建ててきた住まい。
布切れ一枚から、幾重にも重ねられた煌びやかな衣装まで、人類が想像しただけ神の姿はそこにあり、またその住まいも衣服も存在した。
そんな神様たちの頭上には、まるで映画館のスクリーンのように地上の風景を映している水鏡が浮かんでいた。
水鏡には一面に広がる赤い砂の台地が映っていた。
見渡す限り木々も生き物も見当たらない大地に突如、まるで宇宙服のような格好をした人類が数人映し出された。
その人たちは、地上にわずかに生き残っている虫や、汚染された水を保存容器に入れると、出てきた時と同じように、他には何もない地上にポツリと飛び出た四角い箱の中に入っていく。
それは地下の居住区に繋がっているエレベータだった。
人類はおろかな選択の末、地上を人の住めない環境にしてしまったのだ。
わずかに生き残った人たちは地下に住処を移し、こうして地球がまた綺麗になるのを何十年も待っているのだ。
しかしそれにはまだまだ時間がかかりそうである。
「じゃあ、一度地球をリセットするということで、みなさんいいですね」
水鏡から視線を戻し神様たちに訊ねる。
みんな無言で頷く。
その様子を見て、訊ねた神様が水鏡に向かって手をかざした。
するとそこに映っていた赤い砂ばかりの台地が、一瞬で緑豊かな大地へと変貌した。
「生物はいつもと同じでいいかな?」
「うーん、そうだな、まだ全て試せてないし、いいんじゃないか?」
異議なしと声が上がる。
「じゃあ問題はどの生物に進化の実を与えるかだ」
「僕はまた海洋生物がいいな」
「いやよ、海洋生物は服を作るまでが以上に長いわ」
「服はそうだがあのキラキラ光を放つ家は面白かったじゃないか」
「目が疲れるわ」
「なら、爬虫類はどうだ?」
「爬虫類も、肌触りがいまいちなのよね」
「あのツルツルした感触がいいんじゃないか」
色んな意見が飛び交った、その中で一人の神が言った。
「鳥類はどうだろう?」
「そうね、彼らなら、肌触りの良さそうな服を作ってくれそうね」
「色彩もとてもカラフルだしな」
「フワフワな寝床も期待できそうだ」
「では今回進化の実を与える生物は、鳥類の中から選ぼう」
反対の声はあがらなかった。
それどころか、そこにはあれだけたくさんいた神たちの姿はなかった、姿どころか所せましと並んでいた住居やら銅像も全てきれいさっぱりなくなっていた。
どこまでも真っ白な空間にあるのは、生まれ変わった地球を映し出している水鏡だけ。
人の想像力は神様の姿を、住まいや衣服、食事に至るまですべてを作り上げる。
しかしいつしか人は想像することをやめた。
停滞した思考の中では新しい神は生まれることなく、その衣食住も変化することはない。
変わることない神の世界がまた新たに生まれ変わるには、新たな想像力を持った生物が必要だった。
何もない空間で水鏡に波紋が広がる。
真っ白な世界で水鏡だけが、静かに地上を映している。
そしてそこにはキラキラと輝く実をついばんでいる、二羽の鳥の姿が映っていた。
宇宙服のような格好した神様がそう言った。
「昔は色とりどりの華やかな衣装が試着しきれないほど溢れていたのに」
もう一人の神様も同じ姿でそう言った。
「一通り楽しんだし、もうそろそろいいかな」
「そうだな、この先はとびぬけた発展はなさそうだし」
「そうね、新しい住居もできそうにないし」
神様たちは口々にそう言って、思い出に浸るように辺りを見渡した。
洞窟、祠、神社、神殿。今まで人類が神様のために建ててきた住まい。
布切れ一枚から、幾重にも重ねられた煌びやかな衣装まで、人類が想像しただけ神の姿はそこにあり、またその住まいも衣服も存在した。
そんな神様たちの頭上には、まるで映画館のスクリーンのように地上の風景を映している水鏡が浮かんでいた。
水鏡には一面に広がる赤い砂の台地が映っていた。
見渡す限り木々も生き物も見当たらない大地に突如、まるで宇宙服のような格好をした人類が数人映し出された。
その人たちは、地上にわずかに生き残っている虫や、汚染された水を保存容器に入れると、出てきた時と同じように、他には何もない地上にポツリと飛び出た四角い箱の中に入っていく。
それは地下の居住区に繋がっているエレベータだった。
人類はおろかな選択の末、地上を人の住めない環境にしてしまったのだ。
わずかに生き残った人たちは地下に住処を移し、こうして地球がまた綺麗になるのを何十年も待っているのだ。
しかしそれにはまだまだ時間がかかりそうである。
「じゃあ、一度地球をリセットするということで、みなさんいいですね」
水鏡から視線を戻し神様たちに訊ねる。
みんな無言で頷く。
その様子を見て、訊ねた神様が水鏡に向かって手をかざした。
するとそこに映っていた赤い砂ばかりの台地が、一瞬で緑豊かな大地へと変貌した。
「生物はいつもと同じでいいかな?」
「うーん、そうだな、まだ全て試せてないし、いいんじゃないか?」
異議なしと声が上がる。
「じゃあ問題はどの生物に進化の実を与えるかだ」
「僕はまた海洋生物がいいな」
「いやよ、海洋生物は服を作るまでが以上に長いわ」
「服はそうだがあのキラキラ光を放つ家は面白かったじゃないか」
「目が疲れるわ」
「なら、爬虫類はどうだ?」
「爬虫類も、肌触りがいまいちなのよね」
「あのツルツルした感触がいいんじゃないか」
色んな意見が飛び交った、その中で一人の神が言った。
「鳥類はどうだろう?」
「そうね、彼らなら、肌触りの良さそうな服を作ってくれそうね」
「色彩もとてもカラフルだしな」
「フワフワな寝床も期待できそうだ」
「では今回進化の実を与える生物は、鳥類の中から選ぼう」
反対の声はあがらなかった。
それどころか、そこにはあれだけたくさんいた神たちの姿はなかった、姿どころか所せましと並んでいた住居やら銅像も全てきれいさっぱりなくなっていた。
どこまでも真っ白な空間にあるのは、生まれ変わった地球を映し出している水鏡だけ。
人の想像力は神様の姿を、住まいや衣服、食事に至るまですべてを作り上げる。
しかしいつしか人は想像することをやめた。
停滞した思考の中では新しい神は生まれることなく、その衣食住も変化することはない。
変わることない神の世界がまた新たに生まれ変わるには、新たな想像力を持った生物が必要だった。
何もない空間で水鏡に波紋が広がる。
真っ白な世界で水鏡だけが、静かに地上を映している。
そしてそこにはキラキラと輝く実をついばんでいる、二羽の鳥の姿が映っていた。
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