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”リン”誕生
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「あのラエン、これはなんの準備でしょうか?」
「今度悪魔族たちのところに行く」
「はぁ、なんでいきなり」
リーレンが眉間に皺を寄せる。
「魔王城と魔都市の様子はだいたい分かった。なら次は悪魔族たちが支配する土地がどうなったか視察しといたほうがいいだろう」
「それはそうですが」
まだ力のコントロールを完全に回復させていないラエンを行かせるのは心配だった。それに今リーレンもツノを失っている。これでは本来の力が発揮できない。
「ツノがもう少し大きくなるまで待てませんか?」
「いや、ツノがない今だからチャンスなんだろ、リーレンのツノは特徴がありすぎてすぐに普通の魔族でないとわかってしまうからな」
確かに一番似ている鹿というにも太さが違いすぎるし、だいたい淡く光っているツノなど見たことない。
「私も連れていくというのですね」
ふとラエンの言い回しで気が付いてそう問いかける。
「あぁ初めからそのつもりだが、嫌か?」
「いえ、嫌ではありませんし。一人で行かせるなんてそんなことは許可するつもりはありませんから。ただ、そしたらその間この魔王城は誰が管理するのですか」
リーレンが尋ねた。
「ギルガメシュにでも」
「「無理です」」
言い終わらないうちに二人に却下される。
「なら」
ギルガメシュに粘土を持ってこさせる。
「粘土遊びですかラエン様」
ニコニコしているギルガメシュをウザそうにみあげながら、ラエンはそれを小さな人型に練り上げる。
「こないだ返してもらったツノはどうした?」
ギルガメシュに返されたリーレンのツノを受け取ると、そこにぐっと押し込む。
そして、おもむろにテーブルの上にあった果物ナイフで自分の腕を傷つけると、そこから滴り落ちる血をその泥人形に垂らした。
「ラエン!」
「ラエン様!」
「うるさいな、ちょっと切っただけだ。すぐ治る」
確かに言ってるそばから傷口は塞がっていく。
「とりあえずこいつに任せよう」
満足げなラエンの目の前で、ただの泥人形が、3歳児ほどの子供の姿に変わっていく。
「見た目は幼いが、知識はリーレンがツノを生やしていた時間と同じだけあるから大丈夫だろう、それに、たぶんリーレンもツノを通じて精神を繋げられるだろうから、情報も共有できるはずだ」
「へぇ、ツノにはこんな使い方があったんですね」
なぜかリーレンも感心している。
「力のある魔族の一部なら、似たようなことができるからツノでもできるとおもっただけだ」
ラエンがえへんと自慢げに言った。
その時ようやく人型に固まって来た泥人形が、ポテポテと歩きだし、ギルガメシュの足にしがみついた。
「何してるんだ、リーレンジュニア」
なぜかラエンが怒ったような口調で言った。
「ちょっと大きな声出さないでくださいよ、おびえてるじゃないですか」
ギルガメシュがリーレンジュニアを抱き上げるとかばうように抱きしめる。
リーレンジュニアの土色だった肌が透き通るような白い肌に、目とツノはリーレンと同じ輝く黄金色に変化を始めた。
それはリーレンをそのまま小さくしたような姿だった。
「どういうことだ!」
ラエンが驚きの声をあげる。
しかし髪だけがなぜか緑ではなく、真ん中から白と黒のツートンカラーに変化した。
「なんて綺麗な髪をした子なんだ」
髪の色を見てギルガメシュが思わず高々とリーレンジュニアを持ち上げた。
リーレンジュニアがうれしそうにキャキャと声をあげて笑う。
ラエンだけがその様子を面白くなさげに睨みつける。
「ギルガメシュ、貴様何をした」
「あっしはなにもしてないですよ」
「もしかして、しばらくの間ギルの家にツノを置いていたから、ツノにギルの毛がついていたんじゃないですか」
リーレンが冷静に分析する。
それを聞いてラエンが額を抑えてため息を付く。
「まあいい、これでリーレンの仕事の心配は大丈夫だろう」
「こんな小さい子に仕事をさせるんですか」
非難めいた目でギルガメシュが見てくる。
「こいつは子供の姿をしているが、ただの泥とツノの魔力でできた人形だ」
「でも生きてます」
「生きているように見えるだけ。リーレンのツノの記憶で生き物らしく振舞っているだけにすぎない」
「そんなのわからないじゃないですか、もしかして本当に命が宿ったかもしれないじゃないですか」
そんなことはありえないと、一笑に付すこともできたがラエンは口をつぐんだ。
(無垢な瞳で見上げてくるこの子供は、本当にただの泥人形なのだろうか?)
普通の泥人形は命令を与えるまで動いたりはしない、でもこの泥人形はまだ色も定まっていないうちにギルガメシュに寄っていった。
これはツノ以外に毛が混じってしまったからなのか、神を冠する龍神族のツノのせいか、それとも鬼神族の血のせいか。
「わかった。でも仕事をさせるために作ったのに、仕事をさせないのはダメだろ。泥人形は使命を果たすことが生れた意味なのだから」
「でも」
「お前もそう思うよな」
リーレンジュニアにラエンが聞くと、リーレンジュニアがニコリと微笑んだ。
そしてギルガメシュの腕から飛び降りると、リーレンの机の椅子によじ登る。
そして机の上の書類を見てサインをすると、それを三人に見せる。
「なんて頭のいい子なんだ」
完全に親バカ発言でギルガメシュが感涙している。
「リーレンもこれで安心して行けるな」
「そうですね……はい。魔力を送ればその日の記憶のリンクもできそうなので、これなら大丈夫ですかね」
何かを試したのかリーレンがそんなことを言った。
「で、ラエン様この子は食事は何を与えればいいんですか?」
「空気中の魔素で動いているから、与えなくても大丈夫だぞ」
その発言に明らかにギルガメシュが悲しそうな顔をする。
「まあ普通はそうだが、こいつはちょっと変わってるから、もし本人が食べたがるようだったら与えてみればいいだろう。でも成長はしないぞ」
「わかりました」
それでもそれを聞いてギルガメシュの機嫌が明らかに良くなる。
これは絶対に甘やかしモードに入っているなとラエンは思ったが、現在魔界の魔素は少ないから食物からエネルギー補給をするのも、いいことかもしれないと思いなおす。
「ところで名前はどうします? いつまでもリーレンジュニアじゃあ」
「そうだな」
「エンキドゥってどうですか」
「却下、可愛くない」
「レンでいいんじゃないですか」
「安直すぎ」
「リン」
「それも縮めただけだろ」
しかしその時リーレンジュニアが”キュ”と鳴いて両手を挙げた。
「……リン?」
「キュ!」
どうやら気に入ったらしい。
「リンで決まりですね」
「そうだな、リンで決まりだな」
そうして新たにここにリンが誕生したのだった。
「今度悪魔族たちのところに行く」
「はぁ、なんでいきなり」
リーレンが眉間に皺を寄せる。
「魔王城と魔都市の様子はだいたい分かった。なら次は悪魔族たちが支配する土地がどうなったか視察しといたほうがいいだろう」
「それはそうですが」
まだ力のコントロールを完全に回復させていないラエンを行かせるのは心配だった。それに今リーレンもツノを失っている。これでは本来の力が発揮できない。
「ツノがもう少し大きくなるまで待てませんか?」
「いや、ツノがない今だからチャンスなんだろ、リーレンのツノは特徴がありすぎてすぐに普通の魔族でないとわかってしまうからな」
確かに一番似ている鹿というにも太さが違いすぎるし、だいたい淡く光っているツノなど見たことない。
「私も連れていくというのですね」
ふとラエンの言い回しで気が付いてそう問いかける。
「あぁ初めからそのつもりだが、嫌か?」
「いえ、嫌ではありませんし。一人で行かせるなんてそんなことは許可するつもりはありませんから。ただ、そしたらその間この魔王城は誰が管理するのですか」
リーレンが尋ねた。
「ギルガメシュにでも」
「「無理です」」
言い終わらないうちに二人に却下される。
「なら」
ギルガメシュに粘土を持ってこさせる。
「粘土遊びですかラエン様」
ニコニコしているギルガメシュをウザそうにみあげながら、ラエンはそれを小さな人型に練り上げる。
「こないだ返してもらったツノはどうした?」
ギルガメシュに返されたリーレンのツノを受け取ると、そこにぐっと押し込む。
そして、おもむろにテーブルの上にあった果物ナイフで自分の腕を傷つけると、そこから滴り落ちる血をその泥人形に垂らした。
「ラエン!」
「ラエン様!」
「うるさいな、ちょっと切っただけだ。すぐ治る」
確かに言ってるそばから傷口は塞がっていく。
「とりあえずこいつに任せよう」
満足げなラエンの目の前で、ただの泥人形が、3歳児ほどの子供の姿に変わっていく。
「見た目は幼いが、知識はリーレンがツノを生やしていた時間と同じだけあるから大丈夫だろう、それに、たぶんリーレンもツノを通じて精神を繋げられるだろうから、情報も共有できるはずだ」
「へぇ、ツノにはこんな使い方があったんですね」
なぜかリーレンも感心している。
「力のある魔族の一部なら、似たようなことができるからツノでもできるとおもっただけだ」
ラエンがえへんと自慢げに言った。
その時ようやく人型に固まって来た泥人形が、ポテポテと歩きだし、ギルガメシュの足にしがみついた。
「何してるんだ、リーレンジュニア」
なぜかラエンが怒ったような口調で言った。
「ちょっと大きな声出さないでくださいよ、おびえてるじゃないですか」
ギルガメシュがリーレンジュニアを抱き上げるとかばうように抱きしめる。
リーレンジュニアの土色だった肌が透き通るような白い肌に、目とツノはリーレンと同じ輝く黄金色に変化を始めた。
それはリーレンをそのまま小さくしたような姿だった。
「どういうことだ!」
ラエンが驚きの声をあげる。
しかし髪だけがなぜか緑ではなく、真ん中から白と黒のツートンカラーに変化した。
「なんて綺麗な髪をした子なんだ」
髪の色を見てギルガメシュが思わず高々とリーレンジュニアを持ち上げた。
リーレンジュニアがうれしそうにキャキャと声をあげて笑う。
ラエンだけがその様子を面白くなさげに睨みつける。
「ギルガメシュ、貴様何をした」
「あっしはなにもしてないですよ」
「もしかして、しばらくの間ギルの家にツノを置いていたから、ツノにギルの毛がついていたんじゃないですか」
リーレンが冷静に分析する。
それを聞いてラエンが額を抑えてため息を付く。
「まあいい、これでリーレンの仕事の心配は大丈夫だろう」
「こんな小さい子に仕事をさせるんですか」
非難めいた目でギルガメシュが見てくる。
「こいつは子供の姿をしているが、ただの泥とツノの魔力でできた人形だ」
「でも生きてます」
「生きているように見えるだけ。リーレンのツノの記憶で生き物らしく振舞っているだけにすぎない」
「そんなのわからないじゃないですか、もしかして本当に命が宿ったかもしれないじゃないですか」
そんなことはありえないと、一笑に付すこともできたがラエンは口をつぐんだ。
(無垢な瞳で見上げてくるこの子供は、本当にただの泥人形なのだろうか?)
普通の泥人形は命令を与えるまで動いたりはしない、でもこの泥人形はまだ色も定まっていないうちにギルガメシュに寄っていった。
これはツノ以外に毛が混じってしまったからなのか、神を冠する龍神族のツノのせいか、それとも鬼神族の血のせいか。
「わかった。でも仕事をさせるために作ったのに、仕事をさせないのはダメだろ。泥人形は使命を果たすことが生れた意味なのだから」
「でも」
「お前もそう思うよな」
リーレンジュニアにラエンが聞くと、リーレンジュニアがニコリと微笑んだ。
そしてギルガメシュの腕から飛び降りると、リーレンの机の椅子によじ登る。
そして机の上の書類を見てサインをすると、それを三人に見せる。
「なんて頭のいい子なんだ」
完全に親バカ発言でギルガメシュが感涙している。
「リーレンもこれで安心して行けるな」
「そうですね……はい。魔力を送ればその日の記憶のリンクもできそうなので、これなら大丈夫ですかね」
何かを試したのかリーレンがそんなことを言った。
「で、ラエン様この子は食事は何を与えればいいんですか?」
「空気中の魔素で動いているから、与えなくても大丈夫だぞ」
その発言に明らかにギルガメシュが悲しそうな顔をする。
「まあ普通はそうだが、こいつはちょっと変わってるから、もし本人が食べたがるようだったら与えてみればいいだろう。でも成長はしないぞ」
「わかりました」
それでもそれを聞いてギルガメシュの機嫌が明らかに良くなる。
これは絶対に甘やかしモードに入っているなとラエンは思ったが、現在魔界の魔素は少ないから食物からエネルギー補給をするのも、いいことかもしれないと思いなおす。
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