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宰相のツノ
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「ギルガメシュ、知らなかっとはいえ、すまなかった」
「いや、あっしもまさか宰相様がツノに対してここまで無知で無自覚で無頓着だったとは知らなかったんで、いいですよ」
悪意のないギルガメシュの言葉に、リーレンがガックシと落ち込む。
「でも本当に気を付けてくださいよ、あっしだったからよかったものの、他のツノ持ちだったら血を見ることになりますよ、または責任問題迫られます」
その場合血の海に沈むのは明らかに相手になるが、責任問題は困る。まぁ異性のツノなど触ることはないだろうが。リーレンはとりあえずもうツノには触らないことを宣言する。
「しかし宰相様はツノを触られても嫌悪感とかないんですか?」
「特にないと思うが、まあその前にツノを触られたこともないし」
「ちょっと試しにあっしが触ってみてもいいですか」
好奇心に満ちた目でそんなことを言う。
「おいギルガメシュそれはダメだろ」
ムッとしたようにラエンが口を挟む。
「別に構わないですよ、これでお互い様ということで」
当のリーレンは全く気にせず呑気にそんなことを言っている。
「それじゃあ」
そういってギルガメシュが、リーレンの鈍い黄金色の光を放つ枝のようなツノに手を伸ばす。
木の枝のような手触りかと思っていたが、以外にスベスベしていてほんのり温かみがある。
「おい、もういいだろ」
ラエンが口を尖らしながらそう言った。
「どうです? 宰相様」
「別にさわられているなという感じだな」
やはり不快感などは感じないらしい。なんとも変わったツノ持ちである。
その時であった。
メリっという小さな音がした。
「?」
「?」
「?」
そして次の瞬間何かが床にポトリと落ちた。
三人の視線がそれに集中する。
先が枝分かれした鈍い黄金色のツノのようなものが床に転がっている。
「……あっ」
「────!!!!」
「────○&%$#×!?」
約一名から声にならない悲鳴が上がる。
「宰相様のツノが!!」
ブワッとギルガメシュの両目から涙が噴き出る。
ラエンも声こそ上げなかったが青い顔でリーレンを見上げた。
しかし当のリーレンは、落ちたツノを拾うと。
「そんな時期でしたか」となんでもないようにサラリと言った。
「大丈夫ですよ、生え代わりの時期だったみたいです」
「生え代わり?」
膝から崩れ落ちているギルガメシュにどう説明したものかと困った顔で笑いかける。
「あぁ、そうだ確か鹿魔族なども、あるみたいですよ、数十年に一度ツノが生え変わる時期が」
「そうなんですか?」
「はい、私も大昔に一度抜けてまた生えてきたので、きっとそういうものなのでしょう」
自分のことなのに、まるで他人事である。
「ラエンは一度見たことあると思いましたが。ほら歯固めにちょうどいいとか言ってラセツ様にあたえられてましから」
ラセツとはラエンの父親前魔王のことである。
「歯固めって」
明らかに赤ちゃんの時だ、そんなの覚えているわけがないだろうと。ラエンが眉間に皺を寄せる。
「よかった、あっしが触ったせいで落ちたのかと」
今度は安堵の涙をボロボロとこぼす。
「そうだこれ、結構いい匂いするんですよ」
場を和ませようと、リーレンはそう言って己のツノをギルガメシュに差し出す。
「……宰相様の匂いがします」
リーレンからほのかに香っていたのは、お香を焚きつけたものでなく、ツノの香りだったことが判明する。
「召喚の供物としても使えるし、よかったらどうぞ」
「リーレン」
ツノなどそんな気軽にあげていいものではない……と思う。使い方によっては、黒魔術や悪いことにだって使えるだろう。焦るラエンを見てリーレンが、もう片方、頭に残っているツノに手をかける。
「ラエンも欲しいならあげますよ。どうせこちらももう落ちるでしょうし」
何のためらいもなく、自分のツノを取る。しかしほぼ自然に落ちた方とは違って、少し血がにじむ。
「宰相様!」
「リーレン!」
二人が青い顔で見詰める。
「痛くないので大丈夫ですよ」
笑顔でそんなことを言う。もうここまでくると無頓着というか、ホラーだ。
その時部屋の扉が開いた。
「宰相様、こちらの書類にサインを…………────!!!」
秘書官のティラミスの手から書類がバサリと落ちる。
「キャー! ツノが! 血が!!」
そしてそのツノを、見たこともない赤い髪の悪魔族の青年が持っているのを見て、さらに大きな悲鳴をあげる。
「まて、落ち着け。違う!」
「誰か! 悪魔族が!」
部屋を飛び出そうとしたティラミスを、ラエンが魔力を放って眠らせる。
騒ぎを聞きつけ駆け付けてきた警備兵にギルガメシュが説明をする。
「なんか大変なことになってしまいましたね」
ぐったりとする二人に対し、呑気にリーレンはそう言うのだった。
「いや、あっしもまさか宰相様がツノに対してここまで無知で無自覚で無頓着だったとは知らなかったんで、いいですよ」
悪意のないギルガメシュの言葉に、リーレンがガックシと落ち込む。
「でも本当に気を付けてくださいよ、あっしだったからよかったものの、他のツノ持ちだったら血を見ることになりますよ、または責任問題迫られます」
その場合血の海に沈むのは明らかに相手になるが、責任問題は困る。まぁ異性のツノなど触ることはないだろうが。リーレンはとりあえずもうツノには触らないことを宣言する。
「しかし宰相様はツノを触られても嫌悪感とかないんですか?」
「特にないと思うが、まあその前にツノを触られたこともないし」
「ちょっと試しにあっしが触ってみてもいいですか」
好奇心に満ちた目でそんなことを言う。
「おいギルガメシュそれはダメだろ」
ムッとしたようにラエンが口を挟む。
「別に構わないですよ、これでお互い様ということで」
当のリーレンは全く気にせず呑気にそんなことを言っている。
「それじゃあ」
そういってギルガメシュが、リーレンの鈍い黄金色の光を放つ枝のようなツノに手を伸ばす。
木の枝のような手触りかと思っていたが、以外にスベスベしていてほんのり温かみがある。
「おい、もういいだろ」
ラエンが口を尖らしながらそう言った。
「どうです? 宰相様」
「別にさわられているなという感じだな」
やはり不快感などは感じないらしい。なんとも変わったツノ持ちである。
その時であった。
メリっという小さな音がした。
「?」
「?」
「?」
そして次の瞬間何かが床にポトリと落ちた。
三人の視線がそれに集中する。
先が枝分かれした鈍い黄金色のツノのようなものが床に転がっている。
「……あっ」
「────!!!!」
「────○&%$#×!?」
約一名から声にならない悲鳴が上がる。
「宰相様のツノが!!」
ブワッとギルガメシュの両目から涙が噴き出る。
ラエンも声こそ上げなかったが青い顔でリーレンを見上げた。
しかし当のリーレンは、落ちたツノを拾うと。
「そんな時期でしたか」となんでもないようにサラリと言った。
「大丈夫ですよ、生え代わりの時期だったみたいです」
「生え代わり?」
膝から崩れ落ちているギルガメシュにどう説明したものかと困った顔で笑いかける。
「あぁ、そうだ確か鹿魔族なども、あるみたいですよ、数十年に一度ツノが生え変わる時期が」
「そうなんですか?」
「はい、私も大昔に一度抜けてまた生えてきたので、きっとそういうものなのでしょう」
自分のことなのに、まるで他人事である。
「ラエンは一度見たことあると思いましたが。ほら歯固めにちょうどいいとか言ってラセツ様にあたえられてましから」
ラセツとはラエンの父親前魔王のことである。
「歯固めって」
明らかに赤ちゃんの時だ、そんなの覚えているわけがないだろうと。ラエンが眉間に皺を寄せる。
「よかった、あっしが触ったせいで落ちたのかと」
今度は安堵の涙をボロボロとこぼす。
「そうだこれ、結構いい匂いするんですよ」
場を和ませようと、リーレンはそう言って己のツノをギルガメシュに差し出す。
「……宰相様の匂いがします」
リーレンからほのかに香っていたのは、お香を焚きつけたものでなく、ツノの香りだったことが判明する。
「召喚の供物としても使えるし、よかったらどうぞ」
「リーレン」
ツノなどそんな気軽にあげていいものではない……と思う。使い方によっては、黒魔術や悪いことにだって使えるだろう。焦るラエンを見てリーレンが、もう片方、頭に残っているツノに手をかける。
「ラエンも欲しいならあげますよ。どうせこちらももう落ちるでしょうし」
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「宰相様!」
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「なんか大変なことになってしまいましたね」
ぐったりとする二人に対し、呑気にリーレンはそう言うのだった。
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第一章にあたる作品
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