28 / 39
カリンと宰相
しおりを挟む私が初めてあの人に...ドミニカ様に出会ったのはちょうど5歳になったばかりの頃だった。
私の今は亡き毋に連れられ後宮に御挨拶に行ったのだ。
母上とは違う紫色の髪と瞳で、煌びやか...いや、その派手過ぎる装いに苦手な人だと感じてしまったのは今でも変わらない。
「お初にお目にかかります。レオン・クラン・カスティリアと申します。以後、お見知り置きを。」
そうしてまだ、少し慣れない不格好な礼をした。
そうするとドミニカ様は目を優しそうに細め、口をにこやかにした。
「これはこれは、レオン様。ご丁寧にどうもありがとうございます。
私はドミニカですわ。どうぞ、第二の母だと思って下さいませ。」
見た目よりも遥かに優しそうな物腰に私は少し警戒心を解いてしまっていた。
ああ、この方は見た目よりも穏やかな人なのではと。
だが、その勝手な想像は直ぐに打ち砕かれる。
「ああ、そうだわ。アリナ様もいらしゃっていたわね。あまりにも質素な装いだから気付かなかったわ。
ごめんなさいね...?」
そういい扇で隠す口元は見なくても分かるほど歪んでいるろうと感じた。
母上はその物言いに不機嫌を示すように眉を寄せたが、直ぐに戻す。
「いいえ…お気になさらないでくださいまし。今日はこの子の挨拶で来たのですから。」
そう言って、軽く流していた。
そんな安い喧嘩を受けるほど頭も弱くないのだ。さっさと挨拶を済ませ、帰るつもりでいた。
「…そうですわね。あぁ、そうだわ!せっかくなのですからお茶会なんていかがかしら?私、もっとよくレオン様とお話したいのです。」
ドミニカ様はこれはいい案だとばかりに先に決め、近くのメイドに支持をした。
母上はあまりに変えない顔を少ししかめ、忌々しそうにドミニカ様を見つめていた。
断ってもよかったのだが、あまりこの人に悪い印象を与えるべきではないと判断し参加することになった。
母上はとても嫌そうだったがさっさと終わらせて帰るわよと目が語っていた。
席につき、お茶会が始まる。
時間のほとんどをドミニカ様がお話になり、ご自分の得意なこと、好きなこと、趣味や何故かお父様についても多く語っていた。
ドミニカ様のお生まれは隣国のアスクエート帝国で第3皇女だったそうだ。
アスクエート帝国は海に面しており、貿易が盛んだった。それに目をつけた父上…国王陛下はアスクエート帝国とカスティリア王国に協定を結んだ。
陸地での貿易行路でカスティリア王国の領土を渡る代わりに、アスクエート帝国の海路の貿易航路を確保した。そんな協定だ。
そして、その協定をより強固にするためにドミニカ様との政略結婚が決まったのだ。
だが、お父様は元々結婚だなんだという話は
苦手で、母上との結婚も国王という地位に収まるためだけのものだったらしい。
そして、今回も国の実益のためだ。
結婚だなんて名ばかりで、ドミニカ様を早々に後宮に放り込み放置しているというのが今の現状だ。
まぁ、お父様が物凄くドミニカ様を嫌っているというのもあるのだが…
ふと、耳を済ませると女の子の泣き声が聞こえる。
「あら、ラベンナが泣いていますわ。私に会いたくなったのかしら…?」
そう思うのであれば、早く会いに行けば良いものを。
「私のラベンナは、それはそれは可愛いのですわ。私に似たのかしら…ふふ。この前もね…」
そうして、また話が始まる。
私は最早遠い目をして、これはいつ終わるのだろうか。と感じていた。
ふと、母上を見ると顔色が少し悪く感じる。
近くに控えていたメイドを呼び、支えられるように立ちながらも母上はこちらを見やった。
「ごめんなさい…少し気分が優れないみたいで……そろそろおいとましましょうか。」
はい、と立ち上がろうとすると私の手をドミニカ様が掴んだ。
「お待ちになって。レオン様、まだ私とお話しましょう?私、まだまだ話し足りないのですわ。アリナ様、ご気分が優れないのでしたら直ぐに医務室に行かれた方が良いのではなくて?」
私はその一瞬、この人が何を言ったのか分からなかった。
何を言っているんだこの人は?
母上は正妃、貴方よりも地位は上だ。その方にその言いざまはなにか?
頭に血が登り始め、掴まれた腕を振りほどこうとした。が、その前に母上が弱々しい声で話し出す。
「……何を言って………。うっ…」
益々、顔色が悪くなっていく。そんな母上が心配になり、気づいたら声を出していた。
「母上、私は大丈夫です。ドミニカ様とお茶会を続けますので、早く王宮にお戻りください。私は、大丈夫ですので。」
そう強く見つめ、母上に伝える。
母上は酷く眉間にシワを寄せていたが、暫くして頷き、メイドに支えられるようにして王宮に戻って行った。
私の今は亡き毋に連れられ後宮に御挨拶に行ったのだ。
母上とは違う紫色の髪と瞳で、煌びやか...いや、その派手過ぎる装いに苦手な人だと感じてしまったのは今でも変わらない。
「お初にお目にかかります。レオン・クラン・カスティリアと申します。以後、お見知り置きを。」
そうしてまだ、少し慣れない不格好な礼をした。
そうするとドミニカ様は目を優しそうに細め、口をにこやかにした。
「これはこれは、レオン様。ご丁寧にどうもありがとうございます。
私はドミニカですわ。どうぞ、第二の母だと思って下さいませ。」
見た目よりも遥かに優しそうな物腰に私は少し警戒心を解いてしまっていた。
ああ、この方は見た目よりも穏やかな人なのではと。
だが、その勝手な想像は直ぐに打ち砕かれる。
「ああ、そうだわ。アリナ様もいらしゃっていたわね。あまりにも質素な装いだから気付かなかったわ。
ごめんなさいね...?」
そういい扇で隠す口元は見なくても分かるほど歪んでいるろうと感じた。
母上はその物言いに不機嫌を示すように眉を寄せたが、直ぐに戻す。
「いいえ…お気になさらないでくださいまし。今日はこの子の挨拶で来たのですから。」
そう言って、軽く流していた。
そんな安い喧嘩を受けるほど頭も弱くないのだ。さっさと挨拶を済ませ、帰るつもりでいた。
「…そうですわね。あぁ、そうだわ!せっかくなのですからお茶会なんていかがかしら?私、もっとよくレオン様とお話したいのです。」
ドミニカ様はこれはいい案だとばかりに先に決め、近くのメイドに支持をした。
母上はあまりに変えない顔を少ししかめ、忌々しそうにドミニカ様を見つめていた。
断ってもよかったのだが、あまりこの人に悪い印象を与えるべきではないと判断し参加することになった。
母上はとても嫌そうだったがさっさと終わらせて帰るわよと目が語っていた。
席につき、お茶会が始まる。
時間のほとんどをドミニカ様がお話になり、ご自分の得意なこと、好きなこと、趣味や何故かお父様についても多く語っていた。
ドミニカ様のお生まれは隣国のアスクエート帝国で第3皇女だったそうだ。
アスクエート帝国は海に面しており、貿易が盛んだった。それに目をつけた父上…国王陛下はアスクエート帝国とカスティリア王国に協定を結んだ。
陸地での貿易行路でカスティリア王国の領土を渡る代わりに、アスクエート帝国の海路の貿易航路を確保した。そんな協定だ。
そして、その協定をより強固にするためにドミニカ様との政略結婚が決まったのだ。
だが、お父様は元々結婚だなんだという話は
苦手で、母上との結婚も国王という地位に収まるためだけのものだったらしい。
そして、今回も国の実益のためだ。
結婚だなんて名ばかりで、ドミニカ様を早々に後宮に放り込み放置しているというのが今の現状だ。
まぁ、お父様が物凄くドミニカ様を嫌っているというのもあるのだが…
ふと、耳を済ませると女の子の泣き声が聞こえる。
「あら、ラベンナが泣いていますわ。私に会いたくなったのかしら…?」
そう思うのであれば、早く会いに行けば良いものを。
「私のラベンナは、それはそれは可愛いのですわ。私に似たのかしら…ふふ。この前もね…」
そうして、また話が始まる。
私は最早遠い目をして、これはいつ終わるのだろうか。と感じていた。
ふと、母上を見ると顔色が少し悪く感じる。
近くに控えていたメイドを呼び、支えられるように立ちながらも母上はこちらを見やった。
「ごめんなさい…少し気分が優れないみたいで……そろそろおいとましましょうか。」
はい、と立ち上がろうとすると私の手をドミニカ様が掴んだ。
「お待ちになって。レオン様、まだ私とお話しましょう?私、まだまだ話し足りないのですわ。アリナ様、ご気分が優れないのでしたら直ぐに医務室に行かれた方が良いのではなくて?」
私はその一瞬、この人が何を言ったのか分からなかった。
何を言っているんだこの人は?
母上は正妃、貴方よりも地位は上だ。その方にその言いざまはなにか?
頭に血が登り始め、掴まれた腕を振りほどこうとした。が、その前に母上が弱々しい声で話し出す。
「……何を言って………。うっ…」
益々、顔色が悪くなっていく。そんな母上が心配になり、気づいたら声を出していた。
「母上、私は大丈夫です。ドミニカ様とお茶会を続けますので、早く王宮にお戻りください。私は、大丈夫ですので。」
そう強く見つめ、母上に伝える。
母上は酷く眉間にシワを寄せていたが、暫くして頷き、メイドに支えられるようにして王宮に戻って行った。
0
第一章にあたる作品
・起きてください魔王様!~勘違い群像劇コメディ~
ライト文芸大賞 参加作品
「ばなな姫 ~最悪な出会い~」
考察
・色々な小説投稿サイト使った感想や考察や収益
・アルファポリス 消える24hポイントの謎 考察 2021年
BLライト・BL?
・紅い月〜私を見ないでください。あなたを殺してしまうから〜
・屈強な兵士たちの受難
・起きてください魔王様!~勘違い群像劇コメディ~
ライト文芸大賞 参加作品
「ばなな姫 ~最悪な出会い~」
考察
・色々な小説投稿サイト使った感想や考察や収益
・アルファポリス 消える24hポイントの謎 考察 2021年
BLライト・BL?
・紅い月〜私を見ないでください。あなたを殺してしまうから〜
・屈強な兵士たちの受難
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く


【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる