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ウルクと反省する宰相
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「おはようございます」
ギルガメシュが出勤する時間に訪れたのは、明らかに毛の艶が衰えた牛魔族だった。宰相じゃなくても一目瞭然だったが、宰相はニヤリとほくそ笑むと。
「ギルガメシュではないな、お前は誰だ」
自信ありげに訊いた。
「お久しぶりです、長い間魔王様のお世話をさせていただいたウルクです。ギルガメシュの祖父の」
「あぁ、ウルクか」
そういいながら、キョロキョロと廊下を除く。
「孫は今日は気分がすぐれないと代わりに私が参りました」
「……そうか、とりあえず入れ、魔王様のことは話は聞いているのか?」
「はい、目覚められたと……」
頷くと宰相はウルクと共に魔王を起こす。
「ん? お前は……今度こそウルクだな」
魔王は目覚めると同時にパッと笑顔になるとそう言った。
「はい、よくわかりましたね。さすが魔王様。それにしても私がお世話をしていた時よりずいぶん縮んでしまわれたようで」
まぁ年を取ると獣系も人型もみな同じなのですね。魔王の場合は幼くなったせいなのだが、ウルクにその違いはわからない。魔王も特にそれについて訂正しない。
「ところでウルク、ギルガメシュはどこが具合が悪いのだ」
なんだか落ち着きがないようすで宰相が尋ねる。
「昨夜帰ってきた時から、調子がよくなかったようで、今日は布団からでてきていません」
「…………」
「俺といた時は元気そうだったけどな」
魔王は昨日のことを思いだしながらそう言った。
「仕方ない、リーレンお茶を持ってこい」
「魔王様、それは私の仕事……」
「いやウルクは今日はお客だ、俺が眠っている間のことを話して聞かせろ。リ……宰相に訊いても仕事の話以外全くわからないからつまらなかったんだ」
どさくさに紛れてひどいいわれようであったが、宰相ことリーレンはペコリと頭を垂れると、魔王の寝室を後にした。
☆──☆
「さぁ、どうしたものか」
リーレンはとりあえず近くにいたものに茶を持ってくるように指示を出した後、部屋の前で一人頭を抱えた。
「絶対私のせいだな」
「まさか、(区別が付いてないと気が付いて)ギルガメシュがそこまで傷付くとは……」
「宰相様──」
いつからそこにいたのか、いつも怖いぐらい強い眼力で仕事をチャックしている秘書官が宰相を見上げていた。
犬魔族の秘書官は三匹いるが、この一匹だけ目力が異様なので、さすがの宰相もこの秘書官だけは区別が付いた。
「あぁ、新しい書類か」
受け取ろうと手を伸ばすが、なぜかその秘書の犬魔族はさっと書類を後ろに隠して渡そうとしない。
「?」
「宰相様、なにかあったのですか? ギルガメシュ様がどうとか言ってましたが」
どうやら声にでていたらしい。宰相が恥ずかしさでカッと頬を染める。
それをみた犬魔族の娘はなぜかさらに瞳を輝かせながら、宰相に詰め寄って来た。
「どうしたのですか? 何があったかこのショコラ、お力になれることがあったらなんなりと聞きますよ」
ブンブンと尻尾を振りながらそんなことをいう。
「いや、別に大した話ではないのだ」
そういいつつチラリとショコラを見る。
☆──☆
「あの、宰相様……」
突然ショコラと共に秘書室に訪れた宰相にティラミスが戸惑いを隠せない。
「確か秘書は三匹だったな。すまんがみんなちょっと並んでくれないか」
言われてティラミス、ショコラ、クッキーが並ぶ。
(よく見ればみな同じ犬魔族だが、背丈も毛の色も長さもそれぞれ違うな)
秘書課のメンバーは3匹。
この中で一番背も高く、長く勤めてくれているのはイングリッシュコッカースパニエル系の主任のティラミスだ。
全体的に白い長毛、垂れた耳と目や鼻の周りだけ明るい茶色だ。
次にこの中で一番小柄なのに目力が強いショコラ。
ポメラニアン系特有の小さな頭に丸い大きな目、手足は小さく、尻尾は背中に向けて巻いておりふわふわの綿菓子のようなオレンジの毛をしている。
秘書課の中では新米であるクッキーはダックスフンド系。密に生えた短い毛は滑らかなビロードのような光沢がありまり、ブラックをベースカラーとし、頬回りや額、手足、あと人型の眉に当たる部分に茶褐色の毛が混じっている、眉っぽい毛のせいか他の獣系よりかは、表情がわかる気がする。
自分はいままでいかに適当に魔族たちに接してきたか痛感する。
「すまなかった。仕事の邪魔をしたな」
そういい出ていく。
☆──☆
「はぁ、びっくりした」
宰相が出ていくのを見届けてからクッキーがそういうとその場にへたり込んだ。
「ちょっとショコラ説明しなさいよ?」
「さあ、私もよくわわからないのだけど……」
ショコラはきっと何か意味があるのだろうと答えた。そういいつつもショコラも心の中で首をひねる。
(これが本当にギルガメシュ様の役に立つことなのかしら?)
ショコラの様子にティラミスとクッキーが顔を見合わせる。
「まぁいいわ。とりあえず仕事を続けましょう。宰相様が何を考えているか分からないなんて今に始まったことでもないのだし」
ティラミスがお手上げてというように肩をすくめるとそう言った。
ギルガメシュが出勤する時間に訪れたのは、明らかに毛の艶が衰えた牛魔族だった。宰相じゃなくても一目瞭然だったが、宰相はニヤリとほくそ笑むと。
「ギルガメシュではないな、お前は誰だ」
自信ありげに訊いた。
「お久しぶりです、長い間魔王様のお世話をさせていただいたウルクです。ギルガメシュの祖父の」
「あぁ、ウルクか」
そういいながら、キョロキョロと廊下を除く。
「孫は今日は気分がすぐれないと代わりに私が参りました」
「……そうか、とりあえず入れ、魔王様のことは話は聞いているのか?」
「はい、目覚められたと……」
頷くと宰相はウルクと共に魔王を起こす。
「ん? お前は……今度こそウルクだな」
魔王は目覚めると同時にパッと笑顔になるとそう言った。
「はい、よくわかりましたね。さすが魔王様。それにしても私がお世話をしていた時よりずいぶん縮んでしまわれたようで」
まぁ年を取ると獣系も人型もみな同じなのですね。魔王の場合は幼くなったせいなのだが、ウルクにその違いはわからない。魔王も特にそれについて訂正しない。
「ところでウルク、ギルガメシュはどこが具合が悪いのだ」
なんだか落ち着きがないようすで宰相が尋ねる。
「昨夜帰ってきた時から、調子がよくなかったようで、今日は布団からでてきていません」
「…………」
「俺といた時は元気そうだったけどな」
魔王は昨日のことを思いだしながらそう言った。
「仕方ない、リーレンお茶を持ってこい」
「魔王様、それは私の仕事……」
「いやウルクは今日はお客だ、俺が眠っている間のことを話して聞かせろ。リ……宰相に訊いても仕事の話以外全くわからないからつまらなかったんだ」
どさくさに紛れてひどいいわれようであったが、宰相ことリーレンはペコリと頭を垂れると、魔王の寝室を後にした。
☆──☆
「さぁ、どうしたものか」
リーレンはとりあえず近くにいたものに茶を持ってくるように指示を出した後、部屋の前で一人頭を抱えた。
「絶対私のせいだな」
「まさか、(区別が付いてないと気が付いて)ギルガメシュがそこまで傷付くとは……」
「宰相様──」
いつからそこにいたのか、いつも怖いぐらい強い眼力で仕事をチャックしている秘書官が宰相を見上げていた。
犬魔族の秘書官は三匹いるが、この一匹だけ目力が異様なので、さすがの宰相もこの秘書官だけは区別が付いた。
「あぁ、新しい書類か」
受け取ろうと手を伸ばすが、なぜかその秘書の犬魔族はさっと書類を後ろに隠して渡そうとしない。
「?」
「宰相様、なにかあったのですか? ギルガメシュ様がどうとか言ってましたが」
どうやら声にでていたらしい。宰相が恥ずかしさでカッと頬を染める。
それをみた犬魔族の娘はなぜかさらに瞳を輝かせながら、宰相に詰め寄って来た。
「どうしたのですか? 何があったかこのショコラ、お力になれることがあったらなんなりと聞きますよ」
ブンブンと尻尾を振りながらそんなことをいう。
「いや、別に大した話ではないのだ」
そういいつつチラリとショコラを見る。
☆──☆
「あの、宰相様……」
突然ショコラと共に秘書室に訪れた宰相にティラミスが戸惑いを隠せない。
「確か秘書は三匹だったな。すまんがみんなちょっと並んでくれないか」
言われてティラミス、ショコラ、クッキーが並ぶ。
(よく見ればみな同じ犬魔族だが、背丈も毛の色も長さもそれぞれ違うな)
秘書課のメンバーは3匹。
この中で一番背も高く、長く勤めてくれているのはイングリッシュコッカースパニエル系の主任のティラミスだ。
全体的に白い長毛、垂れた耳と目や鼻の周りだけ明るい茶色だ。
次にこの中で一番小柄なのに目力が強いショコラ。
ポメラニアン系特有の小さな頭に丸い大きな目、手足は小さく、尻尾は背中に向けて巻いておりふわふわの綿菓子のようなオレンジの毛をしている。
秘書課の中では新米であるクッキーはダックスフンド系。密に生えた短い毛は滑らかなビロードのような光沢がありまり、ブラックをベースカラーとし、頬回りや額、手足、あと人型の眉に当たる部分に茶褐色の毛が混じっている、眉っぽい毛のせいか他の獣系よりかは、表情がわかる気がする。
自分はいままでいかに適当に魔族たちに接してきたか痛感する。
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(これが本当にギルガメシュ様の役に立つことなのかしら?)
ショコラの様子にティラミスとクッキーが顔を見合わせる。
「まぁいいわ。とりあえず仕事を続けましょう。宰相様が何を考えているか分からないなんて今に始まったことでもないのだし」
ティラミスがお手上げてというように肩をすくめるとそう言った。
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第一章にあたる作品
・起きてください魔王様!~勘違い群像劇コメディ~
ライト文芸大賞 参加作品
「ばなな姫 ~最悪な出会い~」
考察
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・アルファポリス 消える24hポイントの謎 考察 2021年
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