魔族達の狂想曲〜愛憎・陰謀・荒唐無稽!魔族達の群像劇〜

トト

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兄と妹

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「もー超ー気持ち悪いんですけど」

 城の兵士たちに誘導されながらランランが文句を垂れる。

「それに、何この音? 声? 怖いんですけど~」

 さっきまで青白い顔をしていたが、城を出てからは少し落ち着いたのか、これだけ話せるようになったのなら一先ず安心だろう。

 城の外にはすでに沢山の魔族たちが集められていた。
 エリザベスはその中に兄のギルガメシュの姿がないか探したが見当たらない。
 兵士たちに聞いても何が起こっているのかよくわからないとのことだった。

「お兄ちゃん……」

 兄にもらった赤いブレスレットを思わず片方の手で握りしめる。
 その時、ギルガメシュが城の中から走り出てくるのが見えた。ギルガメシュは近くにいた兵士に、抱きかかえてきた魔族を手渡すと、また城の中に戻っていこうとしているようだった。

「ランラン、ちょっと行ってくる」

 エリザベスはそういうと兄を追って城の中に飛び込んだ。


「お兄ちゃん!」
「エリザベスっ! どうした、早く避難しろ」
「何があったの? お兄ちゃんは大丈夫なの?」

 いつもと違う不安げな妹の表情に、ギルガメシュは立ち止まると、エリザベスのもとまで戻りそっとその頭をなぜる。

「大丈夫だ。これは魔王様の魔力が暴走しているせいで、魔力の弱い魔族たちが魔力酔いを起こしてるだけなんだ」
「お兄ちゃんだって、魔力そんな強くないじゃない」

 エリザベスがすかさずたたみかける。

「そのはずなんだけど、なぜか大丈夫なんだよな」

 ギルガメッシュも困ったように笑いながら首を傾げる、それから妹をまじまじと見つめながら。

「そういうお前も大丈夫そうだな。ここにいて気持ち悪くなったりしないのか?」

 宰相が結界を張ってくれたおかげか、さっきまで倒れていた魔族たちも自分の足で非難を始めていた、それでも魔力の弱い魔族はみな青白い顔をしている。

「うん。ランランが気持ち悪いって言った時も、私は大丈夫だった……」
「そうか、それなら良かった。でも一応みんなと一緒に城の外で待っていろ。今は宰相様が魔力が外に漏れないよう部屋に結界を張っていてくれているけど、いつまでもつかわからない」

 そう言いい立ち去ろうとするギルガメッシュの裾をエリザベスがつかんだ。

「本当に私大丈夫だから、何か手伝えることある?」
「大丈夫って言っても……」

 そう言いかけて、言葉を切る。それから少し考えて。

「本当になんともないのか?」
「だからそういっているよね」

 いつものちょっと生意気な口調で口を尖らす。

「ならお前。おかゆ作れるか? ドロドロの」
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