応援歌だったりダークサイドだったり 詩集です

トト

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素敵な家

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彼女は、猫の額ほどの庭の小さな家に住んでいます

隣に広い庭の小さな家が建ちました
 隣の家が素敵に見えて引っ越しました

隣に広い庭の大きな家が建ちました
 隣の家が素敵に見えて引っ越しました

隣に、真っ赤な花が咲いている広い庭の大きな家が建ちました
 隣の家が素敵に見えて引っ越しました

隣に、真っ赤な花が咲いている広い庭の美しい装飾が施された大きな家が建ちました
 隣の家が素敵に見えて引っ越しました

町で一番真っ赤な花が咲いている広い庭の
町で一番美しい装飾が施された大きな家を
手に入れました

みんなが彼女の家を褒めてくれます
「なんて素敵な家なの」

でも彼女は言います
「広い庭は一人ではとても手入れが追いつかないわ」

また彼女は言います
「大きな家は一人ではとても寂しいわ」

彼女は言いました
「町で一番真っ赤な花が咲いている広い庭を持ち、町で一番美しい装飾が施された大きな家に住んでいるのに、どうして私の心は満たされないのだろう? 私にはみんなの家のほうが素敵に見えてしょうがないわ」

誰かが聞きました
「貴方は本当にその家が欲しかったの?」

彼女は考えます
「広い庭はみんながうらやましがるわ、でも手入れで一日が終わってしまい私の自由を奪うわ」

「真っ赤な花はみんながきれいだというわ、でも本当は淡い色の花も好きなの」

「大きな家はみんなが憧れるわ、でも私には寂しさしか与えないわ」

「美しい装飾が施された家はみんなが豪華だというわ、でもそれに見合うだけの私がいないわ」

彼女は好きな時間で手入れできる庭に、自分の好きな花を植えました

彼女は一人で住むにはちょうどいい大きさの家に、自分好みの家具をそろえました

余裕のできた時間で好きな本を読んだり、好きな音楽を聴きました

時には料理作って近所の人を招待しました

毎日とても充実しています
毎日誰かが家に遊びに来るからもう寂しくありません

彼女は、猫の額ほどの庭の小さな家に住んでいます

もう彼女は引っ越そうとは思いません

「素敵な家でしょ」
そしてにっこり微笑みました
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