起きてください魔王様!〜過保護な宰相の日々〜

トト

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宰相の悩み

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 あっ、まただ。

 宰相は食い入るような視線を感じ、グッと腹に力を入れた。
 視線の送り主はわかっている、秘書の犬女だ。

 きっと魔王様にばかり時間を使って仕事が滞っていることを怒っているに違いない。

 宰相はなるべく早くサインすべき、緊張でカラカラの喉の渇き無視して休むことなく手を動かした。

「はぁ。やっと終わった」

 書類のサインを全部終わらせ秘書が出ていくと、宰相は大きくため息を付いた。
 そしてゴクリゴクリと一気に湯飲みの茶を飲み干す。

「最近なんだか大変そうですね」
「まぁ仕方ないのだが」

 仕事部屋を魔王様の寝室に移してから、どうしても魔王様に構う時間が増えてしまい仕事が滞っていることには気が付いていた。
 だけれども、秘書たちも何もいわないし(本当のところ表情はわからないのだが)怒っているという感じでもないし、催促もされなかったので、ついその状況に甘えてしまっていた。
 しかしある時から、秘書の一人がものすごい圧のある視線を向けていることに気が付いた。
 そしてしばらくすると、書類のサインが終わるまで「部屋で待機させてもらいます」というようになった。
 なんなら自分の机ごと持ってきかねない秘書の態度に、「本来魔王様の寝室は女魔禁制なのだが、秘書は仕事上特別に許可しているだけなので、それはダメだ」とどうにかこうにか突っぱねたのだ。

 「女魔禁制」という言葉に一瞬衝撃を受けていたようだが、どうにか納得してくれたらしい。
 ただサインの方は終わるまで帰らなそうだったので仕方なく諦めた。まぁ秘書が書類置いて出ていったとたん少しだけと魔王様を起こしたりしているうちに、時間が過ぎ、秘書たちが書類を取りに来ても終わってないことが続いたのだから仕方のないことだといえる。

 しかし、これだけガン見されては、逆に仕事に集中できない。

「早く信頼と取り戻さねば」

 宰相が大きく伸びをしながらひとりごちる。

「あっしにお手伝いできることはありませんが、せめて肩でもおもみしましょうか?」

 ギルガメシュが気の毒そうにそう言う。

「あぁ、頼む」

 バタン!
 その時扉が開かれたかと思ったら瞬間すごい勢いで閉じられた。それは誰が開けたか認識できないほどの早さだった。

「今誰か来ましたよね?」
「部屋、間違えたんじゃないか?」

 魔王の寝室を間違えて開ける間抜けな魔族が果たしているだろうか?

 ギルガメシュは首を傾げながらも、「気持ちー」という宰相の肩をもみほぐすのだった。 
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