起きてください魔王様!〜過保護な宰相の日々〜

トト

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ランランの愛読書

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「まじ、マジヤバい」

 昼休みランランが興奮気味にバンと机の上に一冊の少女漫画をおいた。

「ちょっとエリザベスも読んでみてよ」

 エリザベスは兄の影響で少年漫画は小さい時よく読んでいたが少女漫画はあまり読んだこともないし、興味もなかった。

「いいから、まじヤバいの、革命だから」

 ランランの語学力が低すぎて何をいっているのかわからないが、とりあえず読まないことには話題を変えてくれそうにない。
 エリザベスは仕方なくランランの持ってきた少女漫画のページをめくった。


「ねぇマジやばくない?」
「確かに、いままでにない話だったね」

 少女漫画と言えば種族同士の恋愛が王道。たまに異種族の恋愛もあったが、それでも毛色違いでの恋愛程度だった、しかし今回の漫画は毛皮を持つ種族と毛皮を持たない種族の全くの異種族同士の恋愛。それだけでも少女漫画としてだいぶ冒険した攻めの戦法だといえるのに、今回はさらに異性でなく、同性同士の恋愛だったのだ。

 魔族界初のBL漫画の誕生である。

「でもこれって、犬魔族とトカゲ魔族の話だよね。私昔トカゲ魔族は途中で性転換するものがいるって本で読んだよ」

 エリザベスの指摘に、ランランが肩をすくめる。

「そういう話をしたいんじゃないの。私は種族も性別も越えた愛。そう禁断の愛の話がしたいのよ」
「そう、なんだ……」

 漫画の中で白黒の毛皮の美しい犬魔族ダルと固い皮膚が取り柄のトカゲ魔族の兵士フトアの種族も身分も違う、そして同性という偏見と闘いながら愛を勝ち取るまでのストーリーが描かれている。

「でも、わざわざこんな面倒な恋をしなくても」

 どうしても毛が無いフトアに引かれるものを感じられず、ダルに感情移入ができない。

「まったくエリザベスはお子様ね。沢山の障害があっても抑えられない、それが究極の愛なのよ」

 しかし恋する乙女モードに入ったランランには言うだけ無駄である。

「まぁそうだね」

 だからとりあえず相槌を打つ。
 しかしこの現象はランランだけでなく、魔族界の一部女性陣から絶大な人気を勝ち取り、しばらくエリザベスはいたるところで、同じような目に合うのだった。
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