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第二章
ここまで来たら最後まで
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「山崎さん! 早くこの子たち直してあげてください」
隣の部屋から腹の割かれたぬいぐるみを抱きしめながら、真が泣きそうな顔で駆け寄ってくる。
「あぁ、痛かっただろすぐ直してあげるからね」
着ぐるみを腰まで下ろし本物の人間の手をだすと、山崎はまるで神業のようにぬいぐるみたちを見事に修復していった。
「こいつらのお仕置きは、こんなものでいいだろう」
自慢の服にもそのきれいな髪にも全てに埃をつけたアリスが、それを払いならが言いはなつ。
「アリスちゃん、また腕を上げましたね」
真がアリスについた埃を払うのを手伝いながら言った。
「秋之助さんも敵わないんじゃないか」
山崎もなぜか誇らしげにアリスを褒める。
「まだ、まだだ」
なぜか褒められたのに、口を尖らし怒ったような口調でアリスはそっぽを向く。しかし言葉とは裏腹に、その頬がほんのり赤く染まって見えたのは気のせいではないだろう。
山崎と真はそんなアリスを微笑ましく眺めた。
アリスの父秋之助は、このままいけば人間国宝とまでいわれるくらい人形を操るのが巧みな人形遣いだった。
そしてアリスはその技を、ぬいぐるみで受け継いでいたのだ。
そしてこの階の天井裏に潜んで、ハルの身代わりになったウサギのぬいぐるみを操っていたのだった。
「さあ、親分はどんなおもてなしをしようか」
気を失っている堂本と子分をしっかり縄で結わいて部屋の隅に転がしながら、山崎は子供がいたずらを考える時のようににんまりと微笑した。
やれやれと子供を見守る親のように、アリスと真が肩をすくめて見せる。
「といいたいところだが、さすがに親分のほうは何人でくるかわからないし、俺たちができるのはここまでかな」
山崎が言った。その時である、何かに呼ばれるように、アリスが振り返った。そして段ボールの奥に置かれている机をじっと見つめる。
「どうしたアリス」
アリスは自然にその机の引き出しに手を掛ける。しかし鍵がかかっているのかビクともしない。
アリスは周りをキョロキョロ見回すと、目的のものを見つけてそれを使って鍵を壊した。
――パーン!
突然行動に、真と山崎も止めることができなかった。
「キャ!」
「いや、すまん、まさかこんなに大きな音がするとは」
床に尻餅をつきながらアリスはそう言うと、堂本から借りた(この場合、本人は気を失っているので無許可だが)銃を床に置いた。
「アリス、なに馬鹿なことしてるんだ! これは子供のおもちゃじゃないんだぞ」
本気で怒っている山崎をしかしアリスは無視した。今はそれより感心を引くものがあるらしい。
こういうことはちゃんとけじめをつけないといけない。山崎が、アリスのもとに近づく。
しかし山崎も、アリスの手にしたそれを見て動きを止めた。
「なにか感じるのか?」
そっと目を伏せたアリスに、山崎が打って変わって静かな声で訊く。
アリスが手にしていたのは、丁度一円玉をひとまわり小さくしたぐらいの大きさの、古ぼけた紺色のボタンだった。
「まったく、私も自分がつくづくおせっかいで嫌になる」
アリスはそう言って、悲しそうに小さく微笑むと、そのボタンを強く握り締めた。
隣の部屋から腹の割かれたぬいぐるみを抱きしめながら、真が泣きそうな顔で駆け寄ってくる。
「あぁ、痛かっただろすぐ直してあげるからね」
着ぐるみを腰まで下ろし本物の人間の手をだすと、山崎はまるで神業のようにぬいぐるみたちを見事に修復していった。
「こいつらのお仕置きは、こんなものでいいだろう」
自慢の服にもそのきれいな髪にも全てに埃をつけたアリスが、それを払いならが言いはなつ。
「アリスちゃん、また腕を上げましたね」
真がアリスについた埃を払うのを手伝いながら言った。
「秋之助さんも敵わないんじゃないか」
山崎もなぜか誇らしげにアリスを褒める。
「まだ、まだだ」
なぜか褒められたのに、口を尖らし怒ったような口調でアリスはそっぽを向く。しかし言葉とは裏腹に、その頬がほんのり赤く染まって見えたのは気のせいではないだろう。
山崎と真はそんなアリスを微笑ましく眺めた。
アリスの父秋之助は、このままいけば人間国宝とまでいわれるくらい人形を操るのが巧みな人形遣いだった。
そしてアリスはその技を、ぬいぐるみで受け継いでいたのだ。
そしてこの階の天井裏に潜んで、ハルの身代わりになったウサギのぬいぐるみを操っていたのだった。
「さあ、親分はどんなおもてなしをしようか」
気を失っている堂本と子分をしっかり縄で結わいて部屋の隅に転がしながら、山崎は子供がいたずらを考える時のようににんまりと微笑した。
やれやれと子供を見守る親のように、アリスと真が肩をすくめて見せる。
「といいたいところだが、さすがに親分のほうは何人でくるかわからないし、俺たちができるのはここまでかな」
山崎が言った。その時である、何かに呼ばれるように、アリスが振り返った。そして段ボールの奥に置かれている机をじっと見つめる。
「どうしたアリス」
アリスは自然にその机の引き出しに手を掛ける。しかし鍵がかかっているのかビクともしない。
アリスは周りをキョロキョロ見回すと、目的のものを見つけてそれを使って鍵を壊した。
――パーン!
突然行動に、真と山崎も止めることができなかった。
「キャ!」
「いや、すまん、まさかこんなに大きな音がするとは」
床に尻餅をつきながらアリスはそう言うと、堂本から借りた(この場合、本人は気を失っているので無許可だが)銃を床に置いた。
「アリス、なに馬鹿なことしてるんだ! これは子供のおもちゃじゃないんだぞ」
本気で怒っている山崎をしかしアリスは無視した。今はそれより感心を引くものがあるらしい。
こういうことはちゃんとけじめをつけないといけない。山崎が、アリスのもとに近づく。
しかし山崎も、アリスの手にしたそれを見て動きを止めた。
「なにか感じるのか?」
そっと目を伏せたアリスに、山崎が打って変わって静かな声で訊く。
アリスが手にしていたのは、丁度一円玉をひとまわり小さくしたぐらいの大きさの、古ぼけた紺色のボタンだった。
「まったく、私も自分がつくづくおせっかいで嫌になる」
アリスはそう言って、悲しそうに小さく微笑むと、そのボタンを強く握り締めた。
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