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第二章
大人げない大人
しおりを挟む「圭介さんは大学生なんですか」
「はい、今年入ったばかりです」
「大学は楽しいですか」
「はい」
「フフ、いいわね青春って感じで」
「真さんだって、そんな変わらないじゃないですか」
「そんな、私今年で二十四ですよ」
「えぇ!」
高校卒業後すぐ鍼師の資格と取ったと聞いてはいたが、一つ二つ上かなと思っていたが、まさか五つも年上とは。
ちょこんと座ったその姿は、やはりとてもそんな年上には見えない、肌つやだけみたら高校生でもまだ通りそうな瑞々しさだ。
「お姉さんって、呼んでいいですよ」
ニコリと微笑みながらそんなことを言うものだから、圭介は思いっきりケーキを喉に詰まらせてゴホゴホと咳き込んだ。
真は茹蛸のように真っ赤になった圭介をみて、おかしそうにクスクスと笑った。圭介はそんなふうに笑う姿まで、かわいいと思ってしまいまた赤くなった。
山崎が骨抜きにされるのも、わからなくはない。と圭介は目を閉じる。そしてそのまま紅茶を啜る。
これ以上は本当に惚れてしまいそうだった。
――ダン! ダン! ダン!
階段を一段飛ばしで駆け上がってくるような轟音と共に、勢い良く襖が開けられた。
「おまたせ」
そんなに長い階段ではないだろうに。肩でゼエゼエ息を切りながら、真に向かって微笑みかけたのは、もちろん山崎だった。
「誰も、待ってなどいないぞ」
「なんだよ、反抗期か」
「馬鹿もの、誰が反抗期だ」
くしゃくしゃとアリスの頭を撫ぜながら、アリスの隣にドカリと腰を下ろす。
アリスは髪を直すと山崎を睨みつける。
「いいかげん、子ども扱いするな」
「はいはい」と答えながら、圭介には真とアリスに変なことしてないだろうなと言わんばかりの視線を送って来る。
「山崎さん、お客様は?」
「あぁ全然大丈夫、打ち合わせは無事終わったから、ちゃんと店の鍵もかけてきた」
「いつもより打ち合わせ、早く切り上げただろ」
アリスのセリフに圭介にはわからないがなんとなく頷く。
「それに閉店時間はまだだぞ」
アリスは部屋の時計を指差し文句を言った。
時計は二時十分前を指している。
「あれは十分遅れているんだ」
圭介がちらりと自分の時計を見る。
十分前だった。
「私の携帯の時計も十分前だぞ」
圭介は相変わらず口を閉ざしていたが、アリスは容赦しない。
「じゃあ店の時計が十分進んでいたんだな」
山崎もあくまでシラを切る様子だ。
「もう一度店を開けて来い」
「いいじゃねぇか、十分ぐらいどうせ俺が店番の時なんてほとんど客はこないんだから」
なんだか悲しい事実まで打ち明ける山崎に同情しながらふと真の方をみると、真は見慣れた光景なのか、気にした様子もなく、一人ケーキの味を堪能していた。
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