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第二章
やはりまともな人はいないのか?
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「人を刺すのと布を刺す感触は違いますが、あの等間隔で針穴を刺してそれが繋がっていく様子がなんとも気持ちよくて。そして、気が付くと、可愛らしい服ができてるじゃないですか。いくら人に鍼を刺しても、可愛いものは出来上がりませんが、針仕事は目から鱗でした」
色々突っ込みどころか満載だったが、あまりの予想外の回答にさすがの圭介もあんぐり口を開けたまま言葉をなくす。
一番常識人に見えていた真が実は一番危ない思考の持ち主だったかもしれない事実に頭がついていかない。
「えぇ、じゃあ真さんは刺すのが好きだったから、鍼師になったんですか?」
「そうですね。鍼師なら資格取ればすぐ働けるし、法に反することなく人を刺せますからね、一石二鳥だなって」
看護婦という選択肢もあったようだが、注射だけの仕事ではないので諦めたらしい。
可愛い顔でとんでもなく恐ろしいことを口にしている。
鍼が人に刺さる瞬間が好きって、たぶん普通の感覚じゃない。何か背中に冷たいものを感じ引きつった笑みを浮かべる。
「でも最近は何もない布からきれいな洋服ができる達成感のほうが大きいかもしれませんね。だから鍼師も好きだけど将来は趣味にして、本業は洋服作りにしたいなってもちろんぬいぐるみ以外の服も注文があれば作っていけるような」
ニコリと微笑む。
洋服作りが趣味。そんなことをいう女の子は可愛いくて奥ゆかしい。などという圭介の思い込みは今日この瞬間崩れ去った。
ふと山崎はこの事実を知っていてそれでもなお真を可愛いといっているのだろうかと、ちょっと心配になる。
「今度、圭介さんも洋服作ってみますか?」
「いえ、僕は……遠慮しときます」
真の教室に通ってみたいとは思ったこともあったが、今の話を聞いた後では、素直に応じることはできなかった。
「そうですか、でも気が向いたらいつでもきてくださいね」
真はにこやかにそう言った。
「そういえば、山崎さんってあの店に住んでいるんですか?」
圭介は話の流れを変えようと、無理やり山崎の話題を振った。
「そうですよ」
真はその言葉をいったとたん、明るい笑顔に少しだけ影を落とした。
圭介はそれを見て慌てて、
「すみません、関係ない僕がいろいろ聞くような話じゃないですよね」
あまりに真の動機が衝撃すぎたので、深く考えずに違う話題として山崎の話を振ったのだが、真の表情を見たとたん圭介はしまったと内心思った。
たぶんこの話題は、アリスの家庭の事情と、深く係わり合いのあるものになってしまうに違いないと気がついたからだ。
「うーん、でも圭介さんなら話してもいいかな」
真は少し困ったような顔をした後、自問自答するようにそう呟き頷いた。
色々突っ込みどころか満載だったが、あまりの予想外の回答にさすがの圭介もあんぐり口を開けたまま言葉をなくす。
一番常識人に見えていた真が実は一番危ない思考の持ち主だったかもしれない事実に頭がついていかない。
「えぇ、じゃあ真さんは刺すのが好きだったから、鍼師になったんですか?」
「そうですね。鍼師なら資格取ればすぐ働けるし、法に反することなく人を刺せますからね、一石二鳥だなって」
看護婦という選択肢もあったようだが、注射だけの仕事ではないので諦めたらしい。
可愛い顔でとんでもなく恐ろしいことを口にしている。
鍼が人に刺さる瞬間が好きって、たぶん普通の感覚じゃない。何か背中に冷たいものを感じ引きつった笑みを浮かべる。
「でも最近は何もない布からきれいな洋服ができる達成感のほうが大きいかもしれませんね。だから鍼師も好きだけど将来は趣味にして、本業は洋服作りにしたいなってもちろんぬいぐるみ以外の服も注文があれば作っていけるような」
ニコリと微笑む。
洋服作りが趣味。そんなことをいう女の子は可愛いくて奥ゆかしい。などという圭介の思い込みは今日この瞬間崩れ去った。
ふと山崎はこの事実を知っていてそれでもなお真を可愛いといっているのだろうかと、ちょっと心配になる。
「今度、圭介さんも洋服作ってみますか?」
「いえ、僕は……遠慮しときます」
真の教室に通ってみたいとは思ったこともあったが、今の話を聞いた後では、素直に応じることはできなかった。
「そうですか、でも気が向いたらいつでもきてくださいね」
真はにこやかにそう言った。
「そういえば、山崎さんってあの店に住んでいるんですか?」
圭介は話の流れを変えようと、無理やり山崎の話題を振った。
「そうですよ」
真はその言葉をいったとたん、明るい笑顔に少しだけ影を落とした。
圭介はそれを見て慌てて、
「すみません、関係ない僕がいろいろ聞くような話じゃないですよね」
あまりに真の動機が衝撃すぎたので、深く考えずに違う話題として山崎の話を振ったのだが、真の表情を見たとたん圭介はしまったと内心思った。
たぶんこの話題は、アリスの家庭の事情と、深く係わり合いのあるものになってしまうに違いないと気がついたからだ。
「うーん、でも圭介さんなら話してもいいかな」
真は少し困ったような顔をした後、自問自答するようにそう呟き頷いた。
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