【完結】モフモフたちは見てる〜アリスのぬいぐるみ専門店〜

トト

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第二章

気になるその後は

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「いらっしゃいませ」

 店の扉を開けると、この間と違ったメイド服を着たマコちゃんと呼ばれていた女性が元気な声をかけてくれた。

「あの、山崎さんいますか?」
「ご予約の方ですか」
「いえ、違います、谷村圭介といえばわかると思うのですが……」

 もう忘れられているかもという思いから、言葉がしりつぼみになっていく。
 あれから一週間以上は経過している。圭介には印象的な出来事だったが、こういう仕事柄をしている二人にとってはどうだったかわからない。

「あぁ、この間の──、少々お持ちください」

 ぱっと思い出したというように表情を明るくすると、真はレジの横に設置されている電話の内戦を山崎に繋いでくれた。
 
「どうぞ、上がってください」

 ニコリと圭介に微笑みかける。営業スマイルなのだろうが、それでも圭介はその綺麗な微笑みにドキリとした。
 ジロジロみていなかっただろうか、鼻の下が伸びていなかっただろうか、圭介は内心あせりながら「はい」と、ぎこちない笑みを浮かべながらレジの後ろの暖簾をくぐった。

 真の姿が見えなくなるとホッと吐息を漏らす。
 あいかわらず非の打ちどころのないプロポーションだ。それにこの間もちょっと思ったが、あの真っすぐに向けられる笑顔は、まるで自分を「待っていました」といわんばかりで、ありもしない期待を胸に抱いてしまいそうになる。
 店の入り口に張られていた案内を思い出し、思わず「ぬいぐるみの洋服教室通おうかな……」と呟いていた。そして自分の言葉にハッとすると同時に「手出すなよ」と、いう山崎の強面を思い出しブルリと身震いした。

「どうした、またなにかあったか?」
「いえ、あれからどうなったのか気になって」
「なんだ、まだ夢見るから返金しろといいにきたわけじゃないのか」

 冗談ぽくニカリと笑いながら、山崎は上がって来た圭介にお茶を出す。

「まぁそんなこといったら、袋叩きにしているところだったがな」

 冗談だか本気だかわからないような口調で口走る。
 まあ、それも自信の表れなのだろう。それにあれだけの力を見せつけられてそんなことを言ったら、逆に呪いを掛けられそうで怖くて言えない。と圭介は心の中で呟いた。

「おかげさまで、あれからはなんの夢も見ずによく眠れてます」
「そうか、ならよかった」

 少しほっとしたように笑う。山崎はこんな見た目だが、性根がすごく優しい男なのだろう。ここのぬいぐるみたちを見ればそれは言葉を交わさなくてもよくわかる。

「あれからハルちゃんは見つかりましたか?」
「いやまだだ、とりあえず明日ぐらいにはアリスの力も回復するだろうから、それからだな」

 「まったく、力を証明するのに圭介の前であんな大技使わなくてもいいのにな」と圭介に同意を求めるように愚痴をこぼす。
 さらりとアリスはやってのけていたがその言いっぷりだと、ぬいぐるみネットワークはだいぶ疲れる力技だったらしい。
 まあ、一番インパクトはあるがそれでしばらく力が使えなくなっては元も子もない。だがそれは圭介が疑ったせいなのだが、とりあえず圭介は山崎の機嫌を損ねないように「そうですねぇ」と、相槌を打っておいた。

 そして自然に話はアリスの話から、山崎の愚痴に、そして思い出話へと変わっていった。

「まったくあいつは誰に似たんだか、マリアさんも秋之助さんも二人ともおっとりしたいい人なのに、あいつは本当に困ったじゃじゃ馬だ」
「マリア? 秋之助?」
「あぁ、アリスの両親だ。もともとこの店は二人がやっていたんだ。俺とマコちゃんはマリアさんのぬいぐるみ教室の生徒だったんだ」
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