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目から鱗の山暮らし

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 どうやら私は人より丈夫らしい、睡眠時間を削って過酷な仕事環境にあっても、結局過労死はできず、無駄に会社を大きくしてしまっただけだった。
 会社もいまや世界に恥ずかしくないホワイト企業へと変貌してしまったし。

 目標を見失った私は、虚無感を抱えながら久々に本屋に立ち寄った。
 そして再びそこで次の目標を経たのだった。

 ──『スローライフ』

 それは山を歩いているだけで、異世界に行ってしまい、そこでスローライフを送るという話だった。

 転生、転移はだいたい死ぬことによってだし、召喚は向こうの都合なのでいつどういった条件の下で訪れるかわかならいので対策の立てようがなかったが。

 ──山に行くだけで異世界に行けるなんて!

 目から鱗とはまさにこのことである。
 私はさっそくキャンプ用品をそろえると、山へと入っていった。

 初めこそ火をおこすのにも苦労したが、一度コツを覚えてしまえば後は楽だった。
 サバイバルナイフ一つあれば、たいていのことはやることはできた。
 木を切り抜き食器も作れるし、野草の知識もあるから食料に困ることもなかった。
 罠を仕掛けて狩っていた小動物も、数か月もする頃には、手製の弓で、鳥やイノシシを狩れるようになっていた。

 たまに病気や怪我をすることがあっても、わざわざ町まで降りずとも自分の知識の範囲で処置できた。
 そして今日こそは異世界の夜空が広がってるかもしれないと、淡い期待をこめながら星を眺めて眠った。

 そんなある日すごい嵐が私の住んでいる山を襲った。
 幸い私が住処としていた洞穴にはなんの影響もなかったが、嵐が去った後仕掛けていた罠にとんでもないものがかかっていた。
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