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いざブラック企業へ
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しかしいざ準備ができたら転生、転移の登竜門である事故などなかなな起きないし、召喚なんてひたすら待つしかやる事はない。
だからといって自ら事故を起こすのは違うと思う。
だいたい、小説では主人公は無職で引きもこもりだったりする場合が多いが、あいにく私は脛をかじる親がいないため、経済的に引きこもりはできない。そういった理由で今は学生だがこの先も無職になる予定はない。
ただでさえこんな条件なので偶然トラックに引かれても、異世界にいける確率は低そうだ。
だからなおさら自ら事故を偽造するなど危険極まりない博打である。
それに自分の勝手な我儘で、トラック運転手に、人をはねて死なせてしまったという罪を一生背負わせるわけにもいかない。
私にだってそれくらいの常識はあるのだ。
トラック転生は無理そうなので、次に思いついたのはブラック企業転生である。
これならば将来働くという私の目標も達成できるし、誰かに罪を負ってもらうこともない。
──よし、ブラック企業に就職するぞ!
私は大学に残ってくれという教授たちに別れを告げ、大手企業からのスカウトも全て断り、町の片隅にあるいかにも人手不足で、みな疲れてはてた顔の人ばかりの小さな会社に就職した。
面接した社長は履歴書を見て、なぜ我が社にと逆に怪しまれたが、口八丁手八丁で言いくるめ、うまく入社させた。
それから私は馬車馬のように働いた。
上司から理不尽に振られる仕事だけでなく、同僚が背負わされた仕事も、後輩がやらなくてはならない雑用も、朝から晩まで休みも返上し会社が家なのかと言われるほど働いた。
その結果、小さな名もなき会社は、2年で中小企業へ、そしてさらに3年後には誰もが名を知らない者はいない大企業へと成長を遂げた。
そして一社畜だったはずの私は、影の支配者と呼ばれる人物になっていた。
進級を断り続けていたので役職こそついていないが、会社の中で私に逆らえるものは誰もいなくなってたからだ。
社長でさえ、私の顔色を伺いながら話しかけてくる。私の一言で全ての方針が決まるようになっていたのだ。
5年間休みなく働き続けた私は、周りがドクターストップをかけるぐらい過労死直前まで来ていた。
しかしふと、今私が過労死したら、この会社はどうなるのだろう。そんな疑問が生まれた。
本来社員が一人減っても誰かしら一緒にやっていたものがその仕事を引き継ぐものなのだが、しかし私は自ら進んでみんなの仕事を取り上げてきたため、引き継ぐ内容はとても一人では済まない量になっていた。
それに全ての契約に何かしら私が関わっているのにその詳細も全て一人でこなしてきてしまったため、ほとんど皆は詳しい内容を知らないのだ。
これでは私がいなくなった場合、倒産はしなくても、大きく会社が傾くことは想像に容易かった。
──このままではいけない。過労死後会社に迷惑はかけれない。
そう思い私は私の受け持っている仕事を、その日から少しずづ引き継いでいった。
そうして、全ての引き継ぎが終わる頃には、私はすっかり重役待遇に落ち着いていてとても残業をやらせてもらえる状態ではなくなっていた。
そのため私は泣いてすがる社長たちをしり目に長い休暇をもらうことにした。
本当は辞表をだしたのだが、どうしてもそれは受け取ってもらえず、ずっと働きづめだったから無期限の休暇扱いに留めてくれと、名前だけは抜かないでくれと懇願されたためだ。
私も自分勝手に会社を大きくしてしまった責任も感じていたので、とりあえずは名前だけは残して、数年務めた会社を後にした。
だからといって自ら事故を起こすのは違うと思う。
だいたい、小説では主人公は無職で引きもこもりだったりする場合が多いが、あいにく私は脛をかじる親がいないため、経済的に引きこもりはできない。そういった理由で今は学生だがこの先も無職になる予定はない。
ただでさえこんな条件なので偶然トラックに引かれても、異世界にいける確率は低そうだ。
だからなおさら自ら事故を偽造するなど危険極まりない博打である。
それに自分の勝手な我儘で、トラック運転手に、人をはねて死なせてしまったという罪を一生背負わせるわけにもいかない。
私にだってそれくらいの常識はあるのだ。
トラック転生は無理そうなので、次に思いついたのはブラック企業転生である。
これならば将来働くという私の目標も達成できるし、誰かに罪を負ってもらうこともない。
──よし、ブラック企業に就職するぞ!
私は大学に残ってくれという教授たちに別れを告げ、大手企業からのスカウトも全て断り、町の片隅にあるいかにも人手不足で、みな疲れてはてた顔の人ばかりの小さな会社に就職した。
面接した社長は履歴書を見て、なぜ我が社にと逆に怪しまれたが、口八丁手八丁で言いくるめ、うまく入社させた。
それから私は馬車馬のように働いた。
上司から理不尽に振られる仕事だけでなく、同僚が背負わされた仕事も、後輩がやらなくてはならない雑用も、朝から晩まで休みも返上し会社が家なのかと言われるほど働いた。
その結果、小さな名もなき会社は、2年で中小企業へ、そしてさらに3年後には誰もが名を知らない者はいない大企業へと成長を遂げた。
そして一社畜だったはずの私は、影の支配者と呼ばれる人物になっていた。
進級を断り続けていたので役職こそついていないが、会社の中で私に逆らえるものは誰もいなくなってたからだ。
社長でさえ、私の顔色を伺いながら話しかけてくる。私の一言で全ての方針が決まるようになっていたのだ。
5年間休みなく働き続けた私は、周りがドクターストップをかけるぐらい過労死直前まで来ていた。
しかしふと、今私が過労死したら、この会社はどうなるのだろう。そんな疑問が生まれた。
本来社員が一人減っても誰かしら一緒にやっていたものがその仕事を引き継ぐものなのだが、しかし私は自ら進んでみんなの仕事を取り上げてきたため、引き継ぐ内容はとても一人では済まない量になっていた。
それに全ての契約に何かしら私が関わっているのにその詳細も全て一人でこなしてきてしまったため、ほとんど皆は詳しい内容を知らないのだ。
これでは私がいなくなった場合、倒産はしなくても、大きく会社が傾くことは想像に容易かった。
──このままではいけない。過労死後会社に迷惑はかけれない。
そう思い私は私の受け持っている仕事を、その日から少しずづ引き継いでいった。
そうして、全ての引き継ぎが終わる頃には、私はすっかり重役待遇に落ち着いていてとても残業をやらせてもらえる状態ではなくなっていた。
そのため私は泣いてすがる社長たちをしり目に長い休暇をもらうことにした。
本当は辞表をだしたのだが、どうしてもそれは受け取ってもらえず、ずっと働きづめだったから無期限の休暇扱いに留めてくれと、名前だけは抜かないでくれと懇願されたためだ。
私も自分勝手に会社を大きくしてしまった責任も感じていたので、とりあえずは名前だけは残して、数年務めた会社を後にした。
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