66 / 147
第二章 青春をもう一度
アスタとユアンとメアリーと
しおりを挟む
メアリーの視線の先。ぴょこぴょこと奇妙な動きをしている後姿の男子生徒が見える。
魔法学部の黒い制服に銀髪の髪。後姿だが、たぶんそうだろう。
「何をしているのかしら?」
「どうせ、アンリ先輩に関わることに違いないし、ほっときましょう」そう言いかけた視線の先に、ユアンはそれを見て口をつぐむ。そしてどうしようかと額を抑えた。
「本当になにをやっているんだ、あの人は」
距離があるので顔は見えないが間違いない、あの良く見慣れた佇まいは。
(キールだ、そしてその隣にいるのは多分……)
「アスタ先輩、覗き見なんてよくありませんよ」
ユアンもメアリーとローズマリーに同じことをしたことなどすっかり忘れて、木陰からキールとアンリの様子を覗き見しているアスタに声をかける。
「っ!なんだユアンか、びっくりさせるなよ」
驚きの眼で振り返りそこにユアンの姿を見て取ると、急に不機嫌そうにそう言った。
「あのやろう、僕の許可もなく、アンリと一緒にお昼を食べているんだぞ、それもアンリの手作り弁当だ!」
今にも乗り込んでいきそうな形相でギギギと隠れている木に爪を立てる。
「最近、テレパシーで連絡しても遮断してる時があると思ったら」
「もう、いい加減妹離れしろということじゃないんですか?」
呆れながらユアンが口にする、後ろでメアリーも困ったような笑みを浮かべている。
「僕は妹に変な虫が付かないよう監視してるだけだ」
「変な虫って……」
呆れ顔でアスタを見ながらこめかみを抑える。
視線の先では、このさわやかな日差しのように、仲睦まじく談笑しながら食事をしている二人の姿が見える。
「いっときますけど、キール以上の優良物件、なかなかないですよ」
真面目で努力家で剣の腕も素晴らしく将来有望。見た目も男らしいのに暑苦しくなくどんな激しい運動の後も爽やかという言葉が似あう男。それに、きっと一途だ。
グッとアスタが唇を噛みしめながら振り返る。そんなこと言われなくてもアスタほどの人物ならちゃんと理解できているのだろう、しかし感情がそれを上回っている。
「ほら、わざわざテレパシー遮断までされているのに、こんなところ見つかったら、嫌われちゃいますよ」
嫌われる。という単語にピクリと反応する。そして、血の涙でも流すんじゃないかと思えるほど、木の陰からキールを睨みつけると、その場を離れるために歩き出す。
ユアンとメアリーが困ったように見詰めあう、それから二人小さく頷くとアスタの後を追った。
魔法学部の黒い制服に銀髪の髪。後姿だが、たぶんそうだろう。
「何をしているのかしら?」
「どうせ、アンリ先輩に関わることに違いないし、ほっときましょう」そう言いかけた視線の先に、ユアンはそれを見て口をつぐむ。そしてどうしようかと額を抑えた。
「本当になにをやっているんだ、あの人は」
距離があるので顔は見えないが間違いない、あの良く見慣れた佇まいは。
(キールだ、そしてその隣にいるのは多分……)
「アスタ先輩、覗き見なんてよくありませんよ」
ユアンもメアリーとローズマリーに同じことをしたことなどすっかり忘れて、木陰からキールとアンリの様子を覗き見しているアスタに声をかける。
「っ!なんだユアンか、びっくりさせるなよ」
驚きの眼で振り返りそこにユアンの姿を見て取ると、急に不機嫌そうにそう言った。
「あのやろう、僕の許可もなく、アンリと一緒にお昼を食べているんだぞ、それもアンリの手作り弁当だ!」
今にも乗り込んでいきそうな形相でギギギと隠れている木に爪を立てる。
「最近、テレパシーで連絡しても遮断してる時があると思ったら」
「もう、いい加減妹離れしろということじゃないんですか?」
呆れながらユアンが口にする、後ろでメアリーも困ったような笑みを浮かべている。
「僕は妹に変な虫が付かないよう監視してるだけだ」
「変な虫って……」
呆れ顔でアスタを見ながらこめかみを抑える。
視線の先では、このさわやかな日差しのように、仲睦まじく談笑しながら食事をしている二人の姿が見える。
「いっときますけど、キール以上の優良物件、なかなかないですよ」
真面目で努力家で剣の腕も素晴らしく将来有望。見た目も男らしいのに暑苦しくなくどんな激しい運動の後も爽やかという言葉が似あう男。それに、きっと一途だ。
グッとアスタが唇を噛みしめながら振り返る。そんなこと言われなくてもアスタほどの人物ならちゃんと理解できているのだろう、しかし感情がそれを上回っている。
「ほら、わざわざテレパシー遮断までされているのに、こんなところ見つかったら、嫌われちゃいますよ」
嫌われる。という単語にピクリと反応する。そして、血の涙でも流すんじゃないかと思えるほど、木の陰からキールを睨みつけると、その場を離れるために歩き出す。
ユアンとメアリーが困ったように見詰めあう、それから二人小さく頷くとアスタの後を追った。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる