【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

文字の大きさ
上 下
62 / 147
第二章 青春をもう一度

土魔法

しおりを挟む
「さすがお兄様! ルナ感動しました!」

 ルナは憧れのヒーローを見つけた子供のような眼でユアンに抱き着く。

「まぁ、そうだな……」

 体を張った実験を手伝ってるのは嘘ではない。
 
「ルナもここに入部したいです」

 ユアンから体を離すルナがそう言った。

「いや、ルナには危険だよ、それに、一年生は後期学期が始まるまではクラブには入れない決まりだし」

 危険なのは本当だ。なにせ、魔法陣を使った実験は国で禁止されているのだから。

 ユアンが首を振る。
 みんなもそれを察したようだ、どうしようという顔をしている。 

「ところで、ルナ嬢はなにか魔法ができるのかな?」

 オロオロする皆に変わって、アスタが話題を変える。

「ルナは土魔法が使えます」

 ルナは昨年の洗礼パーティーで土属性の魔力持ちであることが判明したのだ。

「でもわかってからまだ数か月しかたってないだろ」

 属性がわかってから、それを使いこなせるようになるまでは結構な訓練がいるという。

「はい、だからルナは毎日がんばってます」

 そういうといつも持ち歩いているのか、腰につけている巾着袋の中身を机の上にばらまく。

「土?」

 それを見てユアンがハッとした顔すると、慌てた様子で「待てルナ!」と叫んだが、時すでに遅し。
 見てくださいと言わんばかりに、ルナが魔法の言葉を口にするのが同時だった。

「土魔法”お兄様”!」

 机の上にばらまかれた土が、ルナの言葉とともに一つのまとまり小さな土人形ゴーレムができあがった。

「まだ動かすことはできませんが」

 キラキラした目でユアンを見上げる。それは犬が飼い主に褒めてもらうのを待っている姿に似ている。

「これは、もしかして、ユアン君なのかな?」

 魔法の言葉はその人のイメージを強くするもので特に決まりはない。

「はい、そうです」

 ルナがニコニコと答える。

「ルナのこの世で一番尊敬するお兄様の姿をお借りしました」

 机の上にちょこんと座ったような形で固まった土人形は。頭に動物の耳があればコロコロに太った子熊を作ったと思うような造形をしていた。

 まだ、練習中だということだし、失敗なのだろうか。アスタがそんな表情を浮かべているところに

「確かに、入学時は熊のぬいぐるみのようにぽっちゃりしてましたわね」

 ローズマリーがしげしげと土人形を見詰めながら、よくできてますわと、ルナを褒める。

「本当に、とても可愛らしいお姿ですね」

 メアリーもニコニコしながら、それに続く。

「へー、ユアン君昔はこんなに太っていたんだ」

 赤ちゃんかと思ったといいながら、アンリが驚いたように、コロコロの土人形を指でつつく。

 ブハッ!

 たまらずアスタが噴き出す。

「ユアン、お前妹に愛されてるな」

 ユアンは自分の顔が真っ赤になるのがわかった。

「はい、ルナはお兄様が大好きです」

 みんなに褒めてもらえて、うれしそうに顔をほころばしながら、ユアンにも褒めてと言わんばかりに、上目遣いで見上げてくる。

「はい、可愛い妹です」

 片方の手で自分の顔を覆いながら、もう片方の手で妹の頭をくしゃりと撫ぜる。

 ルナはどんな姿の兄も愛している、でも太っていたころが一番兄と一緒に過ごした時間が長かったので、その姿に愛着を捨てきれない、だからこその土人形。
 他意も悪気もない、でも

(穴があったら入りたい)

 耳まで真っ赤に染めてユアンは心からそう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

処理中です...