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第二章 青春をもう一度
土魔法
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「さすがお兄様! ルナ感動しました!」
ルナは憧れのヒーローを見つけた子供のような眼でユアンに抱き着く。
「まぁ、そうだな……」
体を張った実験を手伝ってるのは嘘ではない。
「ルナもここに入部したいです」
ユアンから体を離すルナがそう言った。
「いや、ルナには危険だよ、それに、一年生は後期学期が始まるまではクラブには入れない決まりだし」
危険なのは本当だ。なにせ、魔法陣を使った実験は国で禁止されているのだから。
ユアンが首を振る。
みんなもそれを察したようだ、どうしようという顔をしている。
「ところで、ルナ嬢はなにか魔法ができるのかな?」
オロオロする皆に変わって、アスタが話題を変える。
「ルナは土魔法が使えます」
ルナは昨年の洗礼パーティーで土属性の魔力持ちであることが判明したのだ。
「でもわかってからまだ数か月しかたってないだろ」
属性がわかってから、それを使いこなせるようになるまでは結構な訓練がいるという。
「はい、だからルナは毎日がんばってます」
そういうといつも持ち歩いているのか、腰につけている巾着袋の中身を机の上にばらまく。
「土?」
それを見てユアンがハッとした顔すると、慌てた様子で「待てルナ!」と叫んだが、時すでに遅し。
見てくださいと言わんばかりに、ルナが魔法の言葉を口にするのが同時だった。
「土魔法”お兄様”!」
机の上にばらまかれた土が、ルナの言葉とともに一つのまとまり小さな土人形ができあがった。
「まだ動かすことはできませんが」
キラキラした目でユアンを見上げる。それは犬が飼い主に褒めてもらうのを待っている姿に似ている。
「これは、もしかして、ユアン君なのかな?」
魔法の言葉はその人のイメージを強くするもので特に決まりはない。
「はい、そうです」
ルナがニコニコと答える。
「ルナのこの世で一番尊敬するお兄様の姿をお借りしました」
机の上にちょこんと座ったような形で固まった土人形は。頭に動物の耳があればコロコロに太った子熊を作ったと思うような造形をしていた。
まだ、練習中だということだし、失敗なのだろうか。アスタがそんな表情を浮かべているところに
「確かに、入学時は熊のぬいぐるみのようにぽっちゃりしてましたわね」
ローズマリーがしげしげと土人形を見詰めながら、よくできてますわと、ルナを褒める。
「本当に、とても可愛らしいお姿ですね」
メアリーもニコニコしながら、それに続く。
「へー、ユアン君昔はこんなに太っていたんだ」
赤ちゃんかと思ったといいながら、アンリが驚いたように、コロコロの土人形を指でつつく。
ブハッ!
たまらずアスタが噴き出す。
「ユアン、お前妹に愛されてるな」
ユアンは自分の顔が真っ赤になるのがわかった。
「はい、ルナはお兄様が大好きです」
みんなに褒めてもらえて、うれしそうに顔をほころばしながら、ユアンにも褒めてと言わんばかりに、上目遣いで見上げてくる。
「はい、可愛い妹です」
片方の手で自分の顔を覆いながら、もう片方の手で妹の頭をくしゃりと撫ぜる。
ルナはどんな姿の兄も愛している、でも太っていたころが一番兄と一緒に過ごした時間が長かったので、その姿に愛着を捨てきれない、だからこその土人形。
他意も悪気もない、でも
(穴があったら入りたい)
耳まで真っ赤に染めてユアンは心からそう思った。
ルナは憧れのヒーローを見つけた子供のような眼でユアンに抱き着く。
「まぁ、そうだな……」
体を張った実験を手伝ってるのは嘘ではない。
「ルナもここに入部したいです」
ユアンから体を離すルナがそう言った。
「いや、ルナには危険だよ、それに、一年生は後期学期が始まるまではクラブには入れない決まりだし」
危険なのは本当だ。なにせ、魔法陣を使った実験は国で禁止されているのだから。
ユアンが首を振る。
みんなもそれを察したようだ、どうしようという顔をしている。
「ところで、ルナ嬢はなにか魔法ができるのかな?」
オロオロする皆に変わって、アスタが話題を変える。
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ルナは昨年の洗礼パーティーで土属性の魔力持ちであることが判明したのだ。
「でもわかってからまだ数か月しかたってないだろ」
属性がわかってから、それを使いこなせるようになるまでは結構な訓練がいるという。
「はい、だからルナは毎日がんばってます」
そういうといつも持ち歩いているのか、腰につけている巾着袋の中身を机の上にばらまく。
「土?」
それを見てユアンがハッとした顔すると、慌てた様子で「待てルナ!」と叫んだが、時すでに遅し。
見てくださいと言わんばかりに、ルナが魔法の言葉を口にするのが同時だった。
「土魔法”お兄様”!」
机の上にばらまかれた土が、ルナの言葉とともに一つのまとまり小さな土人形ができあがった。
「まだ動かすことはできませんが」
キラキラした目でユアンを見上げる。それは犬が飼い主に褒めてもらうのを待っている姿に似ている。
「これは、もしかして、ユアン君なのかな?」
魔法の言葉はその人のイメージを強くするもので特に決まりはない。
「はい、そうです」
ルナがニコニコと答える。
「ルナのこの世で一番尊敬するお兄様の姿をお借りしました」
机の上にちょこんと座ったような形で固まった土人形は。頭に動物の耳があればコロコロに太った子熊を作ったと思うような造形をしていた。
まだ、練習中だということだし、失敗なのだろうか。アスタがそんな表情を浮かべているところに
「確かに、入学時は熊のぬいぐるみのようにぽっちゃりしてましたわね」
ローズマリーがしげしげと土人形を見詰めながら、よくできてますわと、ルナを褒める。
「本当に、とても可愛らしいお姿ですね」
メアリーもニコニコしながら、それに続く。
「へー、ユアン君昔はこんなに太っていたんだ」
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ブハッ!
たまらずアスタが噴き出す。
「ユアン、お前妹に愛されてるな」
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「はい、ルナはお兄様が大好きです」
みんなに褒めてもらえて、うれしそうに顔をほころばしながら、ユアンにも褒めてと言わんばかりに、上目遣いで見上げてくる。
「はい、可愛い妹です」
片方の手で自分の顔を覆いながら、もう片方の手で妹の頭をくしゃりと撫ぜる。
ルナはどんな姿の兄も愛している、でも太っていたころが一番兄と一緒に過ごした時間が長かったので、その姿に愛着を捨てきれない、だからこその土人形。
他意も悪気もない、でも
(穴があったら入りたい)
耳まで真っ赤に染めてユアンは心からそう思った。
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