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第二章 青春をもう一度
魔法石と実験2
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「アスタ先輩、そんなに脅さないでください。そもそも込められてる魔力が少ないんですから。それにすでに、マリーとアスタ先輩が試しているじゃないですか」
横で聞いていたメアリーがさすがに青ざめているユアンを心配して言葉をはさむ。
「えっ、試したんですか?」
それじゃあこの実験の意味ってないのでは?顔に書いてあったのだろう、アスタがため息交じりに、
「僕たちはもともと魔力持ちだから、魔力を引き出す鍵さえわかれば、成功して当たり前だ」
「……」
「でも、魔力無しのお前が使えて初めてこの実験は成功したと言えるんだ」
そうだろ。と言われ、少し首をひねったが、まあ確かに、目的は魔力無しの人間でも使える魔法道具の開発だし、そうかと納得する。
「実験もう終わったのかしら? それとも……」
そこに遅れてやってきたローズマリーが現れた。
「マリーこれからよ」
「じゃあ、世紀の一瞬に間に合ったということですわね」
メアリーの手を取り、うれしそうにピョンピョンはねる。
「じゃあ、ユアン君頼んだぞ」
そんなローズマリーとメアリーを引き連れアスタが小屋の影に隠れる。
「あぁ、でも隠れるのは隠れるんだ」
安心していいのか、いけないのか乾いた笑いをこぼしながら、ユアンが手の中の魔法石をもう一度確認する。
それから意を決すると。ユアンは白い魔法石の魔法陣が書かれている場所に指が当たるようにそっとつまんで持つ。念のためすぐ放り出せるように。
「光魔法”輝き”」
一応ギュッと目をつぶる、それから指に痛みがないことを確認してから、ゆっくりと目を開ける。
細められた視界の先に、ポワっと淡い光を放っている石を見た。
「──!」
小屋の方を振り返る。しかし三人は無反応である。
「どうだった?失敗か?」
どうやら三人には遠すぎて光が見えないみたいだ。
「成功です」
ユアンが顔を高揚させながら叫ぶ姿をみて、三人が顔を見合わせて喜びの声を発した。
「本当か、もう一度、見せてみろ!」
駆け寄ってきて今度は近くで見る。
「光魔法”輝き”」
ユアンの言葉に反応して、石をつまんでいる指先が再びポワっとさっきより強く光りを放つ。
「光った!」
「光りましたわ!」
「光りましたね!」
メアリーなんて涙目になっている。前まであれだけ嫌っていた魔力が誰かのために役に立つかもしれないのだ。うれしいに決まっている。
ユアンはそんなメアリーを見て。心から喜びが沸き上がった。それと同時に今でもたまに思い出す悪夢。
(こんなに早く研究が成功するとは、もしや、あの地震が来るまでには、街だけではなく、国中に街灯が設置されるのも夢ではないかも。そうすれば、あの街を飲み込む大火災も、回避できるかもしれない)
ユアンが自宅に向かう途中の馬車から見えた光景。先ほどまでいた港が街が、真っ赤な炎に飲み込まれていく景色。
祭りの日だった。屋台が立ち並び、その日は夜遅くまで家の軒先に蝋燭やオイルランプを吊るしていた。それがあの揺れで街を飲み込んだのだ。
街灯がたくさん配置されれば、蝋燭やオイルランプを吊るす家はなくなるかもしれない、それにこの魔法石が一般家庭にも普及すれば、この石が代わりに吊るされるかもしれない。そうなれば火災の心配はほぼなくなるだろう。
飛び跳ねて喜ぶメアリーとローズマリーを見ながら、ユアンはギュッとこの奇跡を握りしめたのだった。
横で聞いていたメアリーがさすがに青ざめているユアンを心配して言葉をはさむ。
「えっ、試したんですか?」
それじゃあこの実験の意味ってないのでは?顔に書いてあったのだろう、アスタがため息交じりに、
「僕たちはもともと魔力持ちだから、魔力を引き出す鍵さえわかれば、成功して当たり前だ」
「……」
「でも、魔力無しのお前が使えて初めてこの実験は成功したと言えるんだ」
そうだろ。と言われ、少し首をひねったが、まあ確かに、目的は魔力無しの人間でも使える魔法道具の開発だし、そうかと納得する。
「実験もう終わったのかしら? それとも……」
そこに遅れてやってきたローズマリーが現れた。
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「じゃあ、ユアン君頼んだぞ」
そんなローズマリーとメアリーを引き連れアスタが小屋の影に隠れる。
「あぁ、でも隠れるのは隠れるんだ」
安心していいのか、いけないのか乾いた笑いをこぼしながら、ユアンが手の中の魔法石をもう一度確認する。
それから意を決すると。ユアンは白い魔法石の魔法陣が書かれている場所に指が当たるようにそっとつまんで持つ。念のためすぐ放り出せるように。
「光魔法”輝き”」
一応ギュッと目をつぶる、それから指に痛みがないことを確認してから、ゆっくりと目を開ける。
細められた視界の先に、ポワっと淡い光を放っている石を見た。
「──!」
小屋の方を振り返る。しかし三人は無反応である。
「どうだった?失敗か?」
どうやら三人には遠すぎて光が見えないみたいだ。
「成功です」
ユアンが顔を高揚させながら叫ぶ姿をみて、三人が顔を見合わせて喜びの声を発した。
「本当か、もう一度、見せてみろ!」
駆け寄ってきて今度は近くで見る。
「光魔法”輝き”」
ユアンの言葉に反応して、石をつまんでいる指先が再びポワっとさっきより強く光りを放つ。
「光った!」
「光りましたわ!」
「光りましたね!」
メアリーなんて涙目になっている。前まであれだけ嫌っていた魔力が誰かのために役に立つかもしれないのだ。うれしいに決まっている。
ユアンはそんなメアリーを見て。心から喜びが沸き上がった。それと同時に今でもたまに思い出す悪夢。
(こんなに早く研究が成功するとは、もしや、あの地震が来るまでには、街だけではなく、国中に街灯が設置されるのも夢ではないかも。そうすれば、あの街を飲み込む大火災も、回避できるかもしれない)
ユアンが自宅に向かう途中の馬車から見えた光景。先ほどまでいた港が街が、真っ赤な炎に飲み込まれていく景色。
祭りの日だった。屋台が立ち並び、その日は夜遅くまで家の軒先に蝋燭やオイルランプを吊るしていた。それがあの揺れで街を飲み込んだのだ。
街灯がたくさん配置されれば、蝋燭やオイルランプを吊るす家はなくなるかもしれない、それにこの魔法石が一般家庭にも普及すれば、この石が代わりに吊るされるかもしれない。そうなれば火災の心配はほぼなくなるだろう。
飛び跳ねて喜ぶメアリーとローズマリーを見ながら、ユアンはギュッとこの奇跡を握りしめたのだった。
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