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第一章 出会いからもう一度
デートとは2
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「君がマリーにアドバイスをしたという、ユアン君だね」
「いや、アドバイスなんて大それたことではなく、ちょっと思ったことを……」
別に攻めてるわけではないから、そんなに緊張しないで欲しい。とレイモンドは言ったがそれは無理な話である。
前の人生でも遠くからしか見たことなかった王太子が、今は手を伸ばせば届く向かいの席にいて話しかけてくるのだから。
本来なら一生関わり合いのない空の上の人物が。
「君がどう思ってマリーにアドバイスをしたかはわからないが、そのおかげで、彼女はだいぶ変わったよ。そういう私も、彼女を誤解していたことに気づかされた」
そういうことなら、これは、婚約破棄なんて恐ろしい未来は回避されたと思ってよいのだろうか?
どうやらレイモンドも周りに流れている噂を聞いて、彼女の本質を誤解していたようだ。
「レイも、これでいいよな」
アレクが山盛りにパンやらパスタを持った皿をレイモンドの前に置く。
アレクとアスタとアンリはレイモンドとは同学年で、アレクは一学年のとき同じクラスだったららしくそのせいか普通に接していた。
「あの、婚約者さん、そういえばお名前教えてもらっていいですか?」
のんきに名前を聞いているメアリーはやはりレイモンドの正体に気が付いていないのだろう、そもそも地方出身で、王太子など見る機会などないから知らないのも当たり前である。そしてローズマリーの婚約者も、特に公に発表されているわけではないので、どこぞの貴族であるとしか思っていないのであろう。
「”レイ”とお呼びください、ご令嬢」
「レイ様ですね、私はメアリーと申します。マリーにはいつもよくしてもらっています」
「メアリー嬢ですね。話はマリーから私も聞いています。あなたのおかげで、彼女はさらに素敵な女性に変わりました。ありがとう」
イケメンオーラ満載の爽やかなスマイルを浮かべる王太子に、メアリーの頬がポッと赤く染まる。
「私こういうお店初めてですわ」
その時自分たちのテーブルに並べられた色とりどりのケーキたちを見てローズマリーが歓喜の声を上げた。
「私もここは初めてだけど、すごく美味しいと話題よ。ユアン様、誘っていただきありがとうございます」
メアリーもいつもよりキラキラした目で並べられている美味しそうなケーキたちを見ながら、ユアンにはちきれんばかりの笑顔を向ける。
「みんなの口にも合えばいいのだけど」
ここは前回の人生で一番目メアリーと一緒に通ったお気に入りのお店である。メアリーの口には合うのは絶対だが、ローズマリーはこれでも公爵令嬢だ、家でもお抱えのパティシエの一人や二人いてもおかしくない。
しかし食べ始めたローズマリーを見る限りそんなものは杞憂だとわかった。
「レイも食え、毒見は俺がしてやるから」
半分冗談で、アレクが自分が持ってきたパンやパスタをレイモンドの皿に取り分ける。
「ありがとう。いただくよ」
どうやらレイモンドは結構お忍びで街に降りてきては平民たちと一緒のものを食べていたりするようで、王室では考えられないような適当な盛り付けをされた皿にも躊躇なく手を付けた。
(婚約破棄後に言われていたような、世間知らずで、筋肉バカなだけの王子ではなかったようだな)
平民の店と下に見るわけでもなく、傲慢な態度もとらず、たえず笑顔でそれでいてまわりのことをちゃんと見ている。
ユアンは目の前の光景を見ながら、ローズマリーの時といい本当に人の噂なんてあてにならないものだということを再確認したのだった。
「いや、アドバイスなんて大それたことではなく、ちょっと思ったことを……」
別に攻めてるわけではないから、そんなに緊張しないで欲しい。とレイモンドは言ったがそれは無理な話である。
前の人生でも遠くからしか見たことなかった王太子が、今は手を伸ばせば届く向かいの席にいて話しかけてくるのだから。
本来なら一生関わり合いのない空の上の人物が。
「君がどう思ってマリーにアドバイスをしたかはわからないが、そのおかげで、彼女はだいぶ変わったよ。そういう私も、彼女を誤解していたことに気づかされた」
そういうことなら、これは、婚約破棄なんて恐ろしい未来は回避されたと思ってよいのだろうか?
どうやらレイモンドも周りに流れている噂を聞いて、彼女の本質を誤解していたようだ。
「レイも、これでいいよな」
アレクが山盛りにパンやらパスタを持った皿をレイモンドの前に置く。
アレクとアスタとアンリはレイモンドとは同学年で、アレクは一学年のとき同じクラスだったららしくそのせいか普通に接していた。
「あの、婚約者さん、そういえばお名前教えてもらっていいですか?」
のんきに名前を聞いているメアリーはやはりレイモンドの正体に気が付いていないのだろう、そもそも地方出身で、王太子など見る機会などないから知らないのも当たり前である。そしてローズマリーの婚約者も、特に公に発表されているわけではないので、どこぞの貴族であるとしか思っていないのであろう。
「”レイ”とお呼びください、ご令嬢」
「レイ様ですね、私はメアリーと申します。マリーにはいつもよくしてもらっています」
「メアリー嬢ですね。話はマリーから私も聞いています。あなたのおかげで、彼女はさらに素敵な女性に変わりました。ありがとう」
イケメンオーラ満載の爽やかなスマイルを浮かべる王太子に、メアリーの頬がポッと赤く染まる。
「私こういうお店初めてですわ」
その時自分たちのテーブルに並べられた色とりどりのケーキたちを見てローズマリーが歓喜の声を上げた。
「私もここは初めてだけど、すごく美味しいと話題よ。ユアン様、誘っていただきありがとうございます」
メアリーもいつもよりキラキラした目で並べられている美味しそうなケーキたちを見ながら、ユアンにはちきれんばかりの笑顔を向ける。
「みんなの口にも合えばいいのだけど」
ここは前回の人生で一番目メアリーと一緒に通ったお気に入りのお店である。メアリーの口には合うのは絶対だが、ローズマリーはこれでも公爵令嬢だ、家でもお抱えのパティシエの一人や二人いてもおかしくない。
しかし食べ始めたローズマリーを見る限りそんなものは杞憂だとわかった。
「レイも食え、毒見は俺がしてやるから」
半分冗談で、アレクが自分が持ってきたパンやパスタをレイモンドの皿に取り分ける。
「ありがとう。いただくよ」
どうやらレイモンドは結構お忍びで街に降りてきては平民たちと一緒のものを食べていたりするようで、王室では考えられないような適当な盛り付けをされた皿にも躊躇なく手を付けた。
(婚約破棄後に言われていたような、世間知らずで、筋肉バカなだけの王子ではなかったようだな)
平民の店と下に見るわけでもなく、傲慢な態度もとらず、たえず笑顔でそれでいてまわりのことをちゃんと見ている。
ユアンは目の前の光景を見ながら、ローズマリーの時といい本当に人の噂なんてあてにならないものだということを再確認したのだった。
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