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第一章 出会いからもう一度
学園祭に誘え
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「メアリーさん」
校門の前で呼び止められ若草色の瞳が驚いたように振り返る。
「……あっ、ユアン様」
「学園祭、僕と一緒に回ってくれませんか」
すぐにそれがユアンだとわかり、メアリーはフワリと微笑んだ。
しかし、次にユアンの放った言葉を聞いて、戸惑いの表情を浮かべる。
「キールが『集え未来の剣士達』に出場するんです」
そんな表情をみて思わずキールの話題をだしてしまうユアン。
まあ、はじめからそこは応援に行くつもりだったし。と自分にいいわけをして。
「すみません。私、チェスター様が剣鬼様だって知らなくて、クラスメートに初日剣鬼様を見たいから店番代わってと頼まれちゃったんです」
メアリーが申し訳なさそうにそういった。
「本当にごめんなさい、チェスター様にも応援に行けなくてすみませんとお伝えください」
「そうなんですね、じゃあ2日目は」
学術祭は2日間開催される。
「えーと、ローズマリー様と約束してしまってて……」
メアリーが気まずそうに笑みを浮かべる。
「フローレス嬢と──」
最近メアリーとローズマリーが仲良くなっているのは知っていたが、まさか学園祭を一緒に回るほどとは。
前の人生では接点もないし、ユアンが苦手にしていたのでメアリーも進んでローズマリーに関わることはなかったのだが、まさかの伏兵である。
「あ、でもユアン様なら、きっとローズマリー様も喜ばれると思います。前にいただいたアドバイスのおかげで、クラスの人達とも打ち解けられたとうれしそうに話してましたし」
そうユアンは、彼女を誤解していたことに対し、少しでも罪滅ぼしにと、彼女に人と話す時の言葉使いを少し変えた方が良いとそれとなく伝えたのだ。
「それはよかった、本当の彼女がみんなに伝わったなら、僕もうれしいです」
「私もローズマリー様の、素晴らしさがみなさんに伝わればと思います」
メアリーも自分のことのように嬉しそうにほほ笑んだ。
もともと根はよい子なのだ。あの言葉選びさえ間違わなければ、すぐに人気者になれるはずである。
まあそうはいっても、長年の言葉がすぐになおるわけはなく、ユアンの翻訳まがいの合いの手と、それを聞いたクラスメートの何かを察した結果であるのだが。
前の人生では、まとまりきらなかったクラスの出し物も、今回は特に大きなトラブルもなく、一致団結した盛り上がりを見せていた。
(これで、子猫の恩も返せたかな)
そこまで考えてユアンは首を横に振った。
「やはりいいです。遠慮します」
「なんでですか?」
「確か彼女は婚約者がいる身ですよね、そんな人が学園祭を僕みたいな男と回っていたなどと、悪い噂がたったら申し訳ないので」
彼女は前の人生で、この先大変な目にあうのだが、今ならあれも誤解だということがわかる。だからここでまた変な噂を立てて、トラブルを起こすのはユアンの求めるところではない。
「すみません、そうですね」
メアリーもはっとして目を伏せる。
「一応確認ですが、後夜祭……」
「…………」
その顔を見れば、もう聞かなくてもわかる。ローズマリーは婚約者と行く可能性が高い、そこまでの読みは合っていたようだが……。
「クラスメートと一緒に……」
どうやらメアリーも独りぼっちだった前の人生とは違って、クラスメートと親しく打ち解けているみたいだ。
「……そうなんですね」
それはとても喜ばしいことなのに。
ユアンは折れかけている心を、必死に立て直すと、最後の力で振り絞るように言葉を吐き出す。
「あの、その、良かったら。今度ケーキバイキングに一緒に行っていただけないですか?」
これを断られたら、きっとこの場で泣き崩れるかもしれない。
「ケーキバイキングですか?」
しかしキラリと彼女の目が光ったのをユアンは見逃さなかった。それは希望の光のようにユアンの心にも明かりを灯す。
「実は僕、甘いものが大好きなんです」
「──そう、なんですね」
メアリーが一瞬言葉に詰まりながらそれを誤魔化すように微笑む。
「でもキールはそんなものに付き合ってくれないし、男1人でケーキバイキングなんてちょっと恥ずかしくて、できたら一緒についてきてくれませんか?」
本当は恥ずかしくもなんともない、前の人生では1人で事あるごとにケーキバイキングに行っていたものだ。
そこで同じように1人で来ていたメアリーともよく鉢合わせもしていた。だからメアリーがどこのケーキバイキングが好きなのかもよく知っている。
「わかりました。ご一緒させていただきます」
キラキラと瞳を輝かせながら彼女が元気よくそう答えた。
「ありがとうございます」
思わすガッツポーズをとる。
学園祭を一緒にまわれないのは残念だが、デートの約束はもらえたので、よしとしよう。
校門の前で呼び止められ若草色の瞳が驚いたように振り返る。
「……あっ、ユアン様」
「学園祭、僕と一緒に回ってくれませんか」
すぐにそれがユアンだとわかり、メアリーはフワリと微笑んだ。
しかし、次にユアンの放った言葉を聞いて、戸惑いの表情を浮かべる。
「キールが『集え未来の剣士達』に出場するんです」
そんな表情をみて思わずキールの話題をだしてしまうユアン。
まあ、はじめからそこは応援に行くつもりだったし。と自分にいいわけをして。
「すみません。私、チェスター様が剣鬼様だって知らなくて、クラスメートに初日剣鬼様を見たいから店番代わってと頼まれちゃったんです」
メアリーが申し訳なさそうにそういった。
「本当にごめんなさい、チェスター様にも応援に行けなくてすみませんとお伝えください」
「そうなんですね、じゃあ2日目は」
学術祭は2日間開催される。
「えーと、ローズマリー様と約束してしまってて……」
メアリーが気まずそうに笑みを浮かべる。
「フローレス嬢と──」
最近メアリーとローズマリーが仲良くなっているのは知っていたが、まさか学園祭を一緒に回るほどとは。
前の人生では接点もないし、ユアンが苦手にしていたのでメアリーも進んでローズマリーに関わることはなかったのだが、まさかの伏兵である。
「あ、でもユアン様なら、きっとローズマリー様も喜ばれると思います。前にいただいたアドバイスのおかげで、クラスの人達とも打ち解けられたとうれしそうに話してましたし」
そうユアンは、彼女を誤解していたことに対し、少しでも罪滅ぼしにと、彼女に人と話す時の言葉使いを少し変えた方が良いとそれとなく伝えたのだ。
「それはよかった、本当の彼女がみんなに伝わったなら、僕もうれしいです」
「私もローズマリー様の、素晴らしさがみなさんに伝わればと思います」
メアリーも自分のことのように嬉しそうにほほ笑んだ。
もともと根はよい子なのだ。あの言葉選びさえ間違わなければ、すぐに人気者になれるはずである。
まあそうはいっても、長年の言葉がすぐになおるわけはなく、ユアンの翻訳まがいの合いの手と、それを聞いたクラスメートの何かを察した結果であるのだが。
前の人生では、まとまりきらなかったクラスの出し物も、今回は特に大きなトラブルもなく、一致団結した盛り上がりを見せていた。
(これで、子猫の恩も返せたかな)
そこまで考えてユアンは首を横に振った。
「やはりいいです。遠慮します」
「なんでですか?」
「確か彼女は婚約者がいる身ですよね、そんな人が学園祭を僕みたいな男と回っていたなどと、悪い噂がたったら申し訳ないので」
彼女は前の人生で、この先大変な目にあうのだが、今ならあれも誤解だということがわかる。だからここでまた変な噂を立てて、トラブルを起こすのはユアンの求めるところではない。
「すみません、そうですね」
メアリーもはっとして目を伏せる。
「一応確認ですが、後夜祭……」
「…………」
その顔を見れば、もう聞かなくてもわかる。ローズマリーは婚約者と行く可能性が高い、そこまでの読みは合っていたようだが……。
「クラスメートと一緒に……」
どうやらメアリーも独りぼっちだった前の人生とは違って、クラスメートと親しく打ち解けているみたいだ。
「……そうなんですね」
それはとても喜ばしいことなのに。
ユアンは折れかけている心を、必死に立て直すと、最後の力で振り絞るように言葉を吐き出す。
「あの、その、良かったら。今度ケーキバイキングに一緒に行っていただけないですか?」
これを断られたら、きっとこの場で泣き崩れるかもしれない。
「ケーキバイキングですか?」
しかしキラリと彼女の目が光ったのをユアンは見逃さなかった。それは希望の光のようにユアンの心にも明かりを灯す。
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「──そう、なんですね」
メアリーが一瞬言葉に詰まりながらそれを誤魔化すように微笑む。
「でもキールはそんなものに付き合ってくれないし、男1人でケーキバイキングなんてちょっと恥ずかしくて、できたら一緒についてきてくれませんか?」
本当は恥ずかしくもなんともない、前の人生では1人で事あるごとにケーキバイキングに行っていたものだ。
そこで同じように1人で来ていたメアリーともよく鉢合わせもしていた。だからメアリーがどこのケーキバイキングが好きなのかもよく知っている。
「わかりました。ご一緒させていただきます」
キラキラと瞳を輝かせながら彼女が元気よくそう答えた。
「ありがとうございます」
思わすガッツポーズをとる。
学園祭を一緒にまわれないのは残念だが、デートの約束はもらえたので、よしとしよう。
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