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第一章 出会いからもう一度
この際新たな思い出に
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それからというもの、街でちょくちょく彼女を見かけるようになった。いままでのユアンだったらクラスメートとすれ違っても気がつかなかっただろうし、たとえ気がついてに気にも止めなかっただろう、しかしあの日から自然に視線が街に溶け込む彼女を見つけてその足を止めてしまうようになった。
初めはただの挨拶。
それから美味しいお店の情報交換。
そうやってだんだん親しくなっていった。
そこまで思い出してはっとする。
「今回カップケーキ半分こしてないじゃん!」
一気に血の気が引く。
「それどころか醜態を晒した挙句の独り占め。絶対引かれてる」
ヤバイヤバイと部屋の中をグルグル回りだす。
東の国から貿易船がやってくるのはあと一ヶ月ほど。
「こうなったら」鏡の前に立つ。
洗礼パーティーから約二ヶ月、成長期も手伝って、年相応には引き締まってきた自分を見ながら
「洗礼パーティーの時の僕はなかったことにしよう」
一人大きく頷く。
「自分でいうのはなんだが贅肉が落ち、平均並に背が高くなった今の僕なら、あの時の少年と同一人物だとは彼女も気づかないだろう」
プニプニだったほっぺたも、お腹周りも今はない。
「あんな一瞬目があっただけの男の子の事なんか、彼女も覚えてないに違いない」
自分で言いながら、彼女の思い出に残っていないだろうことにちょっと傷つく。
「そう、団子屋さんで僕たちははじめて出会うんだ!」
それから勇気を奮い起こすように鏡に向かって力説する。
「泣きながら、カップケーキを譲ってもらった無様なデブはもういない。キールには劣るが僕もそれなりに日々鍛えている。あと一ヵ月もあれば、今よりかもっと引き締まった体つきになるはずだ」
そうして頷く。
「前の僕より格好よくなるんだから、きっと彼女も僕を好きになってくれるに違いない」
そう思うとなんだか、自信が湧いてきた。
「よーしがんばるぞ」
そう叫ぶともうすぐ夕食の時間だということも忘れ、ランニングをするために部屋を飛び出したのだった。
初めはただの挨拶。
それから美味しいお店の情報交換。
そうやってだんだん親しくなっていった。
そこまで思い出してはっとする。
「今回カップケーキ半分こしてないじゃん!」
一気に血の気が引く。
「それどころか醜態を晒した挙句の独り占め。絶対引かれてる」
ヤバイヤバイと部屋の中をグルグル回りだす。
東の国から貿易船がやってくるのはあと一ヶ月ほど。
「こうなったら」鏡の前に立つ。
洗礼パーティーから約二ヶ月、成長期も手伝って、年相応には引き締まってきた自分を見ながら
「洗礼パーティーの時の僕はなかったことにしよう」
一人大きく頷く。
「自分でいうのはなんだが贅肉が落ち、平均並に背が高くなった今の僕なら、あの時の少年と同一人物だとは彼女も気づかないだろう」
プニプニだったほっぺたも、お腹周りも今はない。
「あんな一瞬目があっただけの男の子の事なんか、彼女も覚えてないに違いない」
自分で言いながら、彼女の思い出に残っていないだろうことにちょっと傷つく。
「そう、団子屋さんで僕たちははじめて出会うんだ!」
それから勇気を奮い起こすように鏡に向かって力説する。
「泣きながら、カップケーキを譲ってもらった無様なデブはもういない。キールには劣るが僕もそれなりに日々鍛えている。あと一ヵ月もあれば、今よりかもっと引き締まった体つきになるはずだ」
そうして頷く。
「前の僕より格好よくなるんだから、きっと彼女も僕を好きになってくれるに違いない」
そう思うとなんだか、自信が湧いてきた。
「よーしがんばるぞ」
そう叫ぶともうすぐ夕食の時間だということも忘れ、ランニングをするために部屋を飛び出したのだった。
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